今日もかるく絶望しています。 落ち込みがちガールの日常コミックエッセイ (メディアファクトリー.../伊東素晴
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 短大に入学したばかりの佐藤ひなは人づきあいが苦手。新生活も彼女にとっては《人間関係 大シャッフル》という恐怖のイベントだ。美人の幼なじみはすぐ友だちができたのに、自分は一緒に教室を移動する人もおらず、ひとり学校内で迷子になる始末(今の学生は入学前にSNSで知り合っておくらしい)。

 ひなの思考パターンをひと言でいうと自家中毒型。たとえば、自分に話しかけてくれる人がいれば、

「私と話してもつまんないって思ってたらどうしよう…」

「面白いね」といわれれば、
「単にあんたズレてますよって意味ならまだしも もしかして何か私に対する怒りを遠回しにぶつけてらっしゃる…?」

ネガティブ思考は加速する。
「どうしよう怒らせたのか」「あああわからない」「!?!?」

「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げ」「くうきがよめない!」

「?」「ていうかそもそもそんな大した話題だった」「ここ流すとこ笑うとこ?」
1人で大混乱におちいるのがデフォルトだ。

 恋愛もまわりの女の子たちのように楽しめない。
告白してくれたクラスメイトの山田くんを

「わざわざ私なんかに告白してくれるなんて 何か企んでるのでは」と疑ってしまう。

「どうしてそんなに自分に自信がないのか」と友人に問われ、ひなの脳裏には過去の失敗の数々が浮かぶ。走れば転び、歩けばドブにはまり、集会では緊張と貧血から倒れる。女子のグループに馴染めず、場をしんとさせてしまう空気のよめない自分。

「ネガティブで何をしても人並み以下」
どうしてネガティブなのか。
「人並み以下な自分に対して極端に自信がないから」
どうして自信がないのか… む、無限ループ…!!

 長年の劣等感から、人の厚意に見合うだけの価値が自分にはないと思っている。
後ろ向きな主人公は、自分のことがあまり好きではないという作者自身とオーバーラップする。

 この漫画自体、失恋をこじらせて別れた相手に何度も電話してしまった作者が友人に

「メンヘラすぎてうけるから漫画描けば!?」と言われたことから生まれたという(メンヘラとはメンタルヘルスの略で、もとは心の病と持った人をさす言葉だ。しかし今では落ち込みやすい人という意味まで広く使われている)。

それでも年中へこんでいるわけではない。


山田くんととりあえずつき合ってみることになり、悪いところを直そうと自己改革に乗り出す。
ケーキを食べて「おいしー!!」
動物を抱っこして「かわいー!!」
家に帰って「しにそう…!!」
あ、あれ…? 
がんばり過ぎてしまう恋の行方は本編をご覧いただきたい。

第1章《日常編》、第2章《恋愛編》に続く第3章は《就活編》だ。
明るい友人たちも「全然内定とれない もう消えたい」「私なんて社会に必要ないんだよ…」と “ひな化”していく。


 就活もうまくいかない中、ひなは姪が不登校気味だということを知る。

「皆と同じように学校に行けない自分が嫌だ」と涙を流す姿は、まるで自分を見ているようだった。

彼女に言った「大丈夫」という言葉がひな自身をゆるし、カウンセラーへの道を踏み出させる。
長年のネガティブ思考は、いきなり夢にときめいたり明日にきらめいたりはできない。“後ろ向き”が“後ろ向き、ところにより一時前向き”になったくらいだ。でも、やまない雨ってのもないらしい。(Excite松澤夏織)