■社内にはいない人材・・・具体的にどういう人を求めているのか。
人材サービス大手のインテリジェンスとリクルート
エグゼクティブエージェントに、転職市場の概況をうかがう。
「社内にいる人材の延長線ではない人。既存事業を拡大していくなら、
同じ業種・業界の経験者を採用すればいいが、それでは先入観や固定
概念に縛られて新しい発想が生まれにくい。
新規事業を立ち上げ、新しい市場を開拓し、新しいサービスを作る。
国内だけでなく、海外で事業展開していく。そのために、業種・業界を
超えて、イノベーティブな発想で新しい価値を生み出していける人を、
企業は採用したがっている」(森本さん)。
インテリジェンスの転職支援サービス『DODA』(デューダ)編集長の
木下学さんによると、
「新規事業の開発や市場の開拓に、若手の育成だけでは追いつ
かないので、専門スキルを持ったミドル層を求めている。
その専門性は、技術系や経理、人事、法務、マーケティングなど
がやはり大きなシェアを占めているものの、
最近はその専門性にも広がりが見えて、営業職にまで
拡大している」(木下さん)。
営業職への拡大は、2つのケースがあるという。
まず、年齢が高い人へのニーズの高まりだ。たとえば、不動産
の営業職はこれまで20代の若手が多かったが、住宅を購入する
年齢が上がっているため、顧客層の年齢に近い人を採用している。
それから、競争が激化する中で人材が足りない。戦力になることが
見込める人材なら、年齢を問わず採用しているケース。
■ 転職者を受け入れる企業の抵抗感が薄れてきた
転職者を受け入れる企業側も、柔軟に変わってきた。
一昔前までは、給与体系や人事制度の面から転職者を受け入れ
にくく、転職者の給与だけ高い、あるいは転職者に自社の年下の
上司がつくといったことに、企業側の抵抗感が強かった。また、
転職者側にも抵抗感があった。それがこの10年間で年功序列や
終身雇用が崩れていき、大企業も中途採用をするようになって
きたので、両者の抵抗感が薄れてきたのだ。
「一昔前に比べると、50代の方もいい転職を実現されているケース
が多いと実感する」と、森本さんは語る。
終身雇用が当たり前で、定年まで勤め上げるつもりだった50代は、
転職をポジティブにとらえていなかったが、ここ数年、大手家電
メーカーが大幅にリストラしているのを目の当たりにして、
そうなる前に、自分らしく働けるところに転職しておこうと
考えるようになった。
とはいえ、今の会社の規模より小さい規模の会社へ転職するケース
が大半だ。となると年収は下がる傾向がある。年収との折り合いの
つけ方は、年代によって変わってくるという。
「30代はまだ子どもが小さいので、教育費はそれほどかからないが、
40代は高校受験や大学受験があり、塾代もかかるので、年収に
対して妥協しにくい。これが50代になると、子どもの卒業や独立が
見込め、家のローンも完済のめどが立つので、多少、年収が下がって
も生活していける。だから年収との折り合いをつけやすい」 (森本さん)。
【東洋経済オンライン】