僕は 重い身体を起こしながらつぶやいた。
気は進まないが 今日は父さんのお店の手伝いに行く約束をしていた。
写真だけでは生活ができないので助かっているけれど 大ちゃんがいなくなってからは「いつでも実家に帰ってこい」と言ってくる。
ふたりで生活していたこの賃貸マンションの家賃さえも 僕ひとりでは負担が大きい。
親切心の親の言葉に甘えようとは思うのだが 僕がここを引き払ったら 大ちゃんとの思い出も消えそうで いまはやんわりと断っていた。
床に足先を伸ばしたとき ガチャ、玄関先で音がしたような気配がした。
そして
「ただいまー。夕飯は俺が作るから材料買ってきたぞ、マオ」
と 狂おしいほど懐かしい声が聞こえたのだった。