有香ちゃんは、
麗子さんの家にすぐ慣れた。

家事をしっかり手伝い、
夕ご飯も一緒に食べるそう。
麗子さんのご主人が、
宿題を見てくれたり、
とても楽しそうだった。

麗子さんも
「女の子可愛いな。
有香ちゃんよくやってくれる。
無理しなくていい、と
こっちが言ってしまうくらい、
本当に良い子だよ。」と
言っていた。

「迎えは誰が来てる?」

「いろいろかなぁ。
時間もマチマチって感じよ?
あの奥さん妊娠してる?」

「え?妊娠?はないんじゃない?
さすがにねー。」

「あ、そうだよねー。
それはさすがにヤバイよね。
そうヤバイで思い出したけど、
どっちかというと、
パパさんのほうが異常に感じた」

やっぱり麗子さんも、
同じことを感じていた。

愛する妻に裏切られ、
寝取られて、
精神的におかしくなるのは
わかる。つらいのも分かる。
苦しいのも分かる。
自分は悪くないと正当化したいのも
それだって気持ちは分かる。

だけど....その執着心と言ったら、
ちょっと怖さを感じるほどだ。
苦しめてやる、
思い知らせてやる、
ズタズタにしてやる、
全部失わせてみせる、、、

奥さんはそれだけの事を
したのだけれど、
それにしても怖さを感じる。
パパさんは、
友人たちが離れてしまったと
言っていた。
でも正直な話、
離れたくなるのも分かる。

もしかしたら、
私もヨーダのとき、
第三者が見たらこんなだった?
よく友人たちは、
私を見放さないでいてくれたな。
ふと思ってしまった。

そして杏ちゃんの事を
思い出した。
あのときも、杏ちゃんの母は、
不倫をしていて、
ある時、姿を消してしまった。
だけど父親の丸山さんは、
杏ちゃんに寂しい思いを
させないように、
杏ちゃん、杏ちゃん、杏ちゃんと
杏ちゃん第一に考えていた。
いつも走って息を切らして、
迎えに来てくれる。
土日は二人で遊びに行く。
苦手な家事も必死にやっていた。
丸山さんだって内心は、
奥さんに対して色々な思いを
抱えていたと思う。
追いかけたい、取り戻したい、
制裁を相手に加えたい、
あったと思うけれど、
少なくとも私たちの前、
杏ちゃんの前では見せなかった。

だから、杏ちゃんは、
そこまで不安定にはならなかった。
お父さんだけは、
絶対に自分を捨てないと
分かっていたから。

今回の有香ちゃんは、
両親がそれぞれ違うことに
気がむいている。
それに本人も気がついているから、
麗子さんにも捨てられないよう、
良い子を頑張っている。

とても切なく感じる。