(本編再開)

パパさんに、
自分の過去を話して、
私は疲れてしまった。
楽しい過去の話なら、
いくらでも話せるけれど、
ツライ話をするのは、
体力も消耗する....。
そして何よりも圭人のことを
久しぶりに口に出して、
懐かしさだったり、
寂しさだったりが、
突然襲ってきていた。

絶対違うのだが、
次男は何だか圭人に似ている。
もちろん、茂さんの子どもだし、
次男が生まれる前後には、
圭人はこの世にはいない。
だから絶対に違う。
長男はクセも性格も、
本当によく茂さんに似ている。
次男はどちらにも似てない。
まぁ、まだ小さいから
分からないのだけれど。

そんなこともあったりで、
圭人を思い出してしまった。

こんな気持ちを
まだ持っているのか。
何ともない、という気持ちには
まだまだ、なれていなかった。

家に帰ると、
茂さんが待っていた。
子ども達は義父のお店へ、
遊びに行っていた。

「おかえりなさい。
大丈夫?ひどく疲れてるよ。
少しでも寝てきたら?」

優しく茂さんは、
私に言ってくれた。

「あ、うん。
パパさんに圭人のことを話したら、
なんか辛くなっちゃった。
思い出しちゃった。
ごめんね、なんかごめん」

「いいよ、泣け泣け。
思いっきり泣いたら、
また笑って」
茂さんは抱きしめてくれた。
でも彼は、
そんな言い方をしないから、
つい見上げてしまった。

「圭人なら、
こう言ってたかな?
僕はまだまだだねー。
忘れられなくて良いことだよ」

何だろう。
広い海のような心は。
全ての過去も受け止めて、
それでも一緒に歩いて行こうと
してくれる。
私は本物の愛を感じた。

やっぱり、
茂さんは凄いな。