紺野くんが練習に来る日。

子どもたちに、
ケーキと本を買ってきてくれた。
子ども達って不思議で、
優しくて構ってくれる人が
分かるらしい。笑。
すぐに懐いていた。

「紺野くん、ごめんね!
子守させちゃってるよね」

「いいえいいえ、
子ども大好きですから。
大丈夫ですよ!
こちらこそ、お休みの日に、
ごめんなさい。」

「いいのいいの!
気にしないでね」

まずは曲選び。
何にしようか。
レベルは同じくらいだね。

「そういえば、ピアノは?」

「あぁ、ちょっと入らないから、
洋室の広い部屋にあるよ」

リビングで打ち合わせをしていて、
ピアノが無いのを、
不思議に思っていたようだ。

「落ち着かないよね?
ピアノの部屋にいこうか」

ピアノの部屋を案内した。
私が使っているピアノは、
ベヒシュタインのグランドピアノ。
あまり日本には馴染みがないが、
私はこのピアノの音色が大好き。
両親もこのピアノが好きで、
買い替えてもこのメーカーを買う。

紺野くんは、
ピアノが大好きだから、
ベヒシュタインもよく知っていた。
「弾いていいですか?」
目を輝かせていた。
「もちろん、どうぞ」

あぁ、紺野くんが弾くピアノは、
本当に心地がいい。

「やっぱりいいですね!
ベヒシュタインは!」と、
大喜びしてくれた。

「でしょ?でしょ?
私もこのピアノが大好きなの。
何か簡単な曲、二人で弾いてみる?」

楽譜を探してみた。
簡単な連弾集があった。
子どもが弾くような楽譜。

なんて弾きやすいんだろう....
連弾は初めてじゃない。
学生時代も弾いてきたし、
仲の良い友人ともやってきたのに。
男女問わず。
紺野くんとは、
仲の良い友人でもないのに、
こんな弾きやすい人、初めて...。
紺野くんが上手なんだろうな。
合わせてくれてるんだ。

いくら二人で弾いていても
飽きない。
互いに変な気持ちなんてない。
ただただ、
一緒に弾くのが楽しい。

今日の練習は終わり。
不思議な気持ちに包まれた。
恋愛感情ではない、
何というのか同志みたいな。
それは後々わかる。