紺野くんとの練習は、
それから数回続いた。

別に恋愛感情だとか、
変な感情は互いにない。
でもなんだろう、
何も話していないが、
互いに共感、共鳴し合う部分がある。
彼とピアノを弾いていると、
私一人だけじゃない、
そんな気持ちになる。
よくテレビドラマに出てくる、
互いに好きな人とは成就せずに
寂しさを埋めるために、
セフレになる...。
そういう体の関係に
なりたいというわけじゃなく、
互いにポッカリ空いた穴を
埋めるように、連弾をする。
ピアノを弾いている時は、
ポッカリと空いた穴がふさがり、
また普通の生活に戻れば、
何かが足りない気持ちになる。
虚しさ、悲しみ、苦しみが、
押し寄せてきたりする。

なんだろう..,。
この人、
もしかして過去に何かあった?

紺野くんは、
とても良い人。
仲良くなってからも、
知人のときと変わらずに、
優しく穏やかだ。
子ども達の面倒も、
よく見てくれる。

...あ、でもたしかに...、
紺野くんは私と同じ年齢で、
むしろ若干年上。
こんな言い方は失礼だけど、
結婚出来ない人じゃない。
性格も外見も悪くない。
収入だって、そんな悪くない。
出会いがないと言ってもなぁ。
結婚相手には、
超優良物件だ。(笑)

やっぱり、
私と同じ、傷を持った人かも。
でも聞けないや。
聞いたら、
私も話さなくちゃいけない。
話すのは、しんどい。
過去は消せないから、
たまに過去を振り返るけど、
引きずらないようには
気をつけているから。
また口に出してしまえば、
引きずり始めちゃうから。

私はヨーダの事より、
どうやら圭人の事のほうが、
未だ消化出来ていないようだ。