開けてはいけない
パンドラの箱。

それは突然訪れた。

相変わらず、
薬局にも行くし、
ピアノサークルも参加。
他のみんなとも、友達。
もちろん、
紺野くんだって友達。

さやかさんの家は、
防音をしてあって、
ピアノの部屋は自宅と離れにある。
プレハブ小屋を使用している。
時間はいつでも使って良いと
言われていて、
鍵をまた指定の場所に返す。
私も夜、たまに行っていた。
みんなも練習時間は、
夜しかないから借りていた。

その日は、たまたま私だけで、
さやかさんが遊びに来た。
彼女とは妙に気が合っていた。
だけど、私の過去を話したり、
生い立ちなどは話していない。
パパさんの時は、必死で、
引きずられないように、
過去を話してしまった。
でも口に出した後の、
私の落ち込みようは尋常じゃなく、
二度と口にしてはいけないと、
そう思っていた。
過去なんて話すもんじゃない。
楽しかった事も、
何だか口にすると
安っぽくなってしまうし、
思い出に浸るには、まだ若い。

さやかさんは、
何にも知らなかった。
「紺ちゃんに良い人いないかな?」
と聞いてきた。

「探してるって?」

「ううん、探してないから問題。
彼、本当に良い人じゃない?
だから結婚したらいいのになって」
さやかさんは、
何か知っているのだろうが、
当たり障りない返事をした。

「良い人だよね。
優しいしね。でも色々ありそうね」
聞くつもりなんて無かった。

「あ、りん!とうとう、
紺ちゃんの過去聞いたね?
ドラマじゃないんだからさ、
最初聞いたとき、
びっくりしなかった?」
あ....共鳴する何か。
やっぱり、それは、
同じような過去の持ち主。

「ああ、、、、」
否定すれば良かったのに。
聞いたような言い方を
してしまった私。

とうとう開いてしまう、
パンドラの箱。
それは開けてはいけない箱。
私はそんなに強くない。