紺ちゃんは、
「ごめんね!
僕の暗い話をしたら、
気分悪くなるね。」と言った。

私はまだ聞いた。
「ねぇ紺ちゃんは、
亡くなった彼女をどう思う?
まだ好きだったから、
その姉御肌さんとは
結婚しなかった?」

「んー、難しい質問だな。
先に居なくなるなんて、
ひどい話だよね。
残された方は、ずっと、
忘れられなくなっちゃうからね。
姉御肌さんとの結婚に、
彼女も関係無かったとは
言えないけれどね」

そう、忘れたくても忘れられない。

「そっか...」

「不思議だよね。
亡くなった人には、
魔法が使えるのかもしれない。
全て、楽しい思い出や、
励ましてくれる言葉ばかりしか
出てこないんだから。
ケンカもしたし、
傷ついたり傷つけたりしてたのに。
嫌いになる思い出は、
出てこないんだから。
嫌になっちゃうよなぁ。
まいっちゃうよ。」

そうなんだよ、
良い思い出しか見つからない。
私だって、
そんなはずないのに。
ケンカだってしたのに。

「紺ちゃん、
私も同じだ...。
でも私は紺ちゃんとは違う
選択をしてしまったけど」

紺ちゃんは、
びっくりした表情をし、
すぐにいつもの優しい笑顔に
戻っていた。
「そっか、だからか」
あ、やっぱり気がついていた。
何か共鳴する部分があると。

私は何かに取り憑かれたように、
過去を話し始めた。