和歌山県の新宮市に 明治から大正昭和の文壇に影響を与えた文人


佐藤春夫の記念館があります。没後50年ということで訪ねてみました。






佐藤は新宮の生まれ。

中学時代から 末は文学者と言っていた彼は中学卒業後上京して慶応大学へ。

その後大学は中退するも 堀口大学や高村光太郎、谷崎潤一郎など

名だたる作家達と交流します。


記念館は彼の昭和2年に建てた東京の住まいを 平成の故郷創生基金で移築したモノ。

白い漆喰壁にアーチ型の窓 サロンには暖炉を模して 吹き抜けのサンルームや

8角形の書斎がとてもおしゃれです。







で、彼を知らない人でも案外知っているのが「秋刀魚の歌」


さんま さんま さんま苦いかしょっぱいか・・・。

あはれ秋風よ こころあらば伝えてよ・・・で始まるこの歌。


実は凄いドラマがあるんですよね。



佐藤春夫は谷崎潤一郎と友人で というか弟分、彼のおかげで文壇デビューしているので逆らえない。

谷崎って人は 春琴抄とか細雪を書いた人で とにかいう過剰なくらい女性を描く。

耽美派なんていわれるけど 要はちょっとぶっ飛んでいた人だったみたい。


で、この人の奥さんが千代さん。

それはもう良妻賢母。会ったことないけど。


谷崎はこんな完璧な奥さんなのに、物足りなくて なんと千代さんの妹と結婚しようとする。

千代さんは凄く悩んで 友人の佐藤春夫に相談し・・・。


まあ良くある話で佐藤は千代さんに恋し 千代さんも佐藤を憎からず・・・。


それに気づいた谷崎が「いいよ、譲ってあげる」 って、妻はモノじゃないっての。

明治ってしょうがないのかなぁ。時代かなぁ。


佐藤春夫は嬉しくて舞い上がるんだけど・・・。


ところが・・・谷崎は千代さんの妹とうまく行かなくなったので、約束を反故にするんですよ。

「やっぱ、やーめた」って。


佐藤はそりゃ怒ります。で谷崎と絶交しおまけに心まで病んでしまう。


その時に詠んだ歌がこれ。

まあ簡単にいうと、「あーせつない。秋の風よ。もし心があれば伝えて欲しい。

オトコが秋刀魚を食べながら思いにふけっているんだ。

故郷のならいで秋刀魚に青いミカンを搾ったなぁ。彼女もそうしたっけ。

夫に捨てられようとしている妻と 妻に欺かれたオトコ(佐藤は妻に裏切られる)が

食卓をともにしたよな。

あー切ない、俺って情けない・・・なんて歌っているんですから。


おいおい、凹んでいる場合かよ、奪っちゃえよ、と言いたいところだけど


でも凄いのは これを文壇に発表しちゃうんだから 明治の人っていうか

その時代の文学者達って 今の芸能人並・・・。