キャリアの長いミュージシャンですと、昔の曲をライブで演る際、アレンジを大胆に変えたり、場合によっては歌詞やメロディまで変えて演奏したりすることがあります。
時代に伴って、歌詞の内容がもう古くてそぐわない、って場合とか。あとは単純に、あそこは本来はこう歌うべきだった!と発表後に気づいて(思い直して)、以後のステージではずっと直して歌っちゃうことも。
浜田省吾が「東京」を歌う時、歌詞の《ディスコ》を《クラブ》に変えて歌ってるのは、ディスコなんて今はもうないよ、という気持ちからでしょう。ただ、だからといってクラブって歌われちゃうと、僕はどうも違和感を感じます。あそこは絶対に《ディスコで恋して》ですよ。Perfumeの「チョコレート・ディスコ」なんて歌もあるんだし、変えなくてもいいと思うのですけどね。省吾はもうディスコには戻さないだろうな。
逆に、「家路」での歌詞で、《そして女たちは》を《そして孤独なエゴは》に変えたのは、わりとスンナリ受け入れられました。聴いてて違和感が少なかった、ってのもあるけど、「東京」のディスコように《古いから》って理由で言葉を差し替えたのとは違い、《孤独なエゴは》と歌ったことで内容がより深まったように思えたのです。
女たちが愛を理由にオレを引き裂いた、と歌うよりも、改変後の、オレ自身の内面のエゴによって上手く愛せなかった、と歌う方が、より《オレ》の痛みが伝わってくる。「家路」は上手く歌い直したと思います。こういう改変もあるのです。
最近WOWOWで観た角松敏生のライブでも、「Ì CAN GIVE MY LOVE」の二番の歌詞を変えて歌ってて、ヘェーと思いました。そういえばデビュー曲「YOKOHAMA TWILIGHT TIME」のサビのメロディ《ベィーーーベェッ》を最近は《ベィベッ》と短くしたり、「TOKYO TOWER」のテンポをグッと落としたり、角松も結構歌い方をマメに更新する人ですね。リアレンジのアルバムを出しちゃうくらいだから、変えるのが楽しいんでしょうね。
ライブでアレンジをガラッと変える常習者、と言えば、佐野元春です。キャリアのごくごく初期の頃から、ステージでアレンジをガラっと変えて演奏する奴、として定評(悪評?)があります。
「アンジェリーナ」のスローバージョン、「ガラスのジェネレーション」のバラードバージョンなどは2曲ともシングルになりましたね(アンジェリーナはB面でしたが)。
見事な歌いっぷり。「ガラスの〜」のバラードはピーシーズ・ツアーで実際に目の前で歌ってくれて、えらく感動した覚えがあります。
曲の可能性を探し続けるかのように、コレも良いなアレはどうだと衣替えをする。元春も近年に二枚、リアレンジ&リメイクのアルバムを出しました。ビルボードライブで好評だったアレンジものをまとめてくれてます。
歌詞の改変例ですと、「ポップチルドレン」で、《ビデオフィルムの〜》の部分を《Googleの検索ワードを〜》と今風にしてる。賛否はあるでしょうけど、僕はいいと思う。
感心したとこでは、「ヤア!ソウルボーイ」とか「月と専制君主」のリアレンジ。大好きです。オリジナルより転調部分がスムーズで、メロディがより良くなったと思います。
リアレンジもリメイクも、要は曲へのテコ入れですから、より良くしようとして変えたくなる気持ちは解ります。けど、ファンとしたら、大好きな曲をコンサートで演ってくれるのを楽しみにしてて、いざライブ観てみたら、エーーッ?てなる時もある。ファンはそういうのもクリエイティブな姿勢と(諦めて?)受け入れたり、やめてくれ普通に演奏してくれよーってガッカリしたりする。好きな歌を変えないで、って気持ちは当然ですよね。
ビッグネームの例を挙げた後で、大変僭越ですが、僕だって歌を作る時は毎回、すごーく迷って悩んで作ってます。毎回毎回、最良を目指して悩んで悩んで、歌詞もメロディも、よーし、もう一文字も動かせない、出来た!って思うまで詰めて作ります。
で、そうまでして練って練って作ったのに、後から変えたくなる時って、やはりあるのです。
作ってる最中って、軽く興奮状態なので、時間が経つと客観的に見れて、ああすれば良かった、が出て来る。僕はアマチュアですので、一度人前で発表した歌も結構手を加えます。どうせ変えたところで前のを覚えてる人はいないでしょう、と、ドンドンやっちゃう。
先日も、昔の曲の歌詞をいじってました。最近あまりライブで取り上げてない歌たちですが、取り上げてないということは、頻繁に取り上げる曲に比べてクオリティに満足してない、ということかと。
一度は完成して、もう一文字も動かせない、と思ってた歌ですが、久しぶりに部屋で練習してみると、ここはこうしたい、ああしたい、って箇所がいっぱい見えてきた。ぜんぜん変える余地があるじゃん。ちょっと変えるだけでもワクワクするほど面白い歌になったと思います。
直す箇所が見えるということは、昔より少しはスキルが上がったのかしら。そう信じたい。
で、最近THE SLICKSの淳吉郎より、すごーく長文のCDへの感想を頂いて、すごく嬉しかったのです。一曲一曲へ、まるでライナーノーツのように丁寧に綴ってくださって、こんなにもシッカリ聴いてくださったのか、とありがたかった。あまりに美しい感想文を読んで、脳がボーッとシビレたような気持ちでした。