去る2024年4月2日、フリーダムフォーク集会の前主催者、楽人さんこと戸倉近さんがお亡くなりになりました。昨夜4月4日、お通夜にお別れに行って来ました。葬儀場に着くと、知り合いのミュージシャンが沢山集まってくれていました。

棺の横には近さんの5弦ベース、トレードマークの帽子、それにビートルズ、クラプトン、ボウイ、ディラン、ポールといった好きなミュージシャンのLPがぐるっと飾られてあって、ああ、近さんらしいと思いました。

僕が焼香をした時にはちょうどビートルズの「I want you」が式場に流れていました。









《ねぇねぇ、〇〇の新譜、聴いた?》

《ビートルズの〇〇、買っちゃった。これが良いんだよー》

そんな近さんのボソボソ声が今も聴こえてくるようです。

近さんとは本っ当に音楽の話しかしなかった。音楽以外の世間話を近さんとした記憶がない。会ったばかり頃はほとんど話したことがなくて、なんて無愛想な人かという印象でしたが、音楽の話が通じるとわかった途端、滝のように喋ってきた。一旦ふところに入れてもらうと、饒舌で人懐っこくて、ずいぶん年下の僕にもぜんぜん偉ぶることのない優しい人でした。

そのくせ妙に頑固で、好き嫌いはハッキリしていて、やりたくないことはしたくない、自分のポリシーは決して曲げたくないって言っちゃうので、偏屈といえば偏屈。子供っぽいっていえば子供。でも優しいので、ブツブツ言いながらも頼まれ事を引き受けちゃう。マァ世渡りが不器用そうだなーって思ったものでした。

(世渡りが器用な人の作る音楽なんて面白みがなかろう、と思うのも僕の偏見)

近さんは楽人の名前でギターの弾き語りをして、オリジナル曲も作ったりしてたけれど、本当はバンドでベースを思いっきり弾きたかったと思う。誰かの後ろでベースを弾く近さんはそれは楽しそうでした。バンドが動かない時の近さんはやはり元気がなく見えました。


一度僕に、(今度マシスのとなりで)ベース弾かせて、と言ってくれたことがあったけど、その時は断ってしまったのです。近さんに限らず、マシスが誰かと一緒にグループをやるイメージがその時は湧かなかったので、ごめんなさいしたけど(僕も偏屈でした)、そんなの関係なく、遊びでやってみればよかった。よしやすさんも加えて、スリーピースバンドなんて、きっと楽しかったろうに。


シャイな近さんは人の先頭に立ってグイグイ周囲を引っ張っていくタイプではなかったけど、2017年まで訥々とフリーダムフォーク集会の主催者をずっとやってきてくれて、それは自分のイベント《フリーダムフォーク集会》への愛情ゆえだと思う。

まぁ、当日の本場直前まで出演者が確定してない!なんてこともよくあったけど、そんな近さんの緩ぅい段取りこそがフリーダムで、みんな楽しく長年参加させてもらって来たのです。近さんですらやってくれてたんだから、僕だって少ない社交性を駆使してやらなきゃって思う。

2017年に僕がフリーダムの段取りを引き継いで、近さんにはさあこれから、と、もっともっとフリーダムで遊んでいってもらいたかった。予告なしにフラッと来て、《あー!近さんじゃん何してたよ久しぶり!》と驚かせて欲しかった。マシスがちゃんとフリーダムやってるか見ててもらいたかった。本当に、ずっと見ててもらわなきゃ困るのに、フリーダムをほっぽって置いてかれたような気分。

コロナになって、ぜんぜん会えてなくて、入院したと聞いてもお見舞いにも行けなかった。いや、病室で近さんに会いたくなかった、という気持ちも正直なところ。前の入院の時だって元気に帰って来たし、なんとなくまたフリーダムフォーク集会で会えると思ってた。

近さん、昨年のビートルズの新曲、聴けました?あれはアリですか?僕はあんまビートルズ聴いてる気がしなかったけど、近さんどう思った?

ストーンズの新譜、あれ最高じゃない?最高ですよ。人間いくつになってもロックンロールできるんですよ。


マムゼルで誰かがビートルズを歌いだせば、近さんは断りもなくまたベース掴んで飛び入りしてくれると思う。これからもそんな気がします。


フリーダムフォーク集会はメソメソせず、楽しくやるよ。


マシス