最近注目のこの話題。


不動産業界に身を置くものであるならば、関心をよせずにはいられない問題。


不動産保証協会での法定研修会での内容を簡単にまとめた物が社内に交付されたので、忘れないようメモします。


興味ない人は申し訳ないのですが、読み飛ばしてください。



1、今回の構造計算書偽装の背景

設計はよりいい物(経費大)を作り、施工は利益追求(経済設計)を目指す。よって両者は利益相反であり、設計と施工を一緒にしてはならない。今回の件では建築会社が設計会社を持ってる事自体が問題。



・この点、うちの社長に関しては、経済設計を単純に悪とするのではなく、経済設計はむしろあるべき姿なので、チェック機関がきちんと働いていれば問題はないとの認識っぽい。私も「安くていい建物」を作るのは、欧米に比べて異様に建築コストが高い日本では、必要とされる事だと思う。実際タマホームズも売れてますしね。



2、構造チェックの問題点

確認申請(意匠や設備の実施設計図と構造設計図・構造計算書)の膨大な量の手数料が、マンションの場合2000㎡(建設費4億程度)で8万6400円、5000㎡(建設費9億円程度)で21万5千円(イーホームズ)では費用対効果の点で細かい審査は不可能。



・私は違法建築なのか、そうでないのかはまだ判断できるレベルではないので、建物自体の安全性を保障するという、大事な業務が実際機能できていない今の日本の制度は怖いと思いました。



3、アメリカの検査体制

第三者機関による「インスペクター制度」が採用されている。検査費用は工事費用の1%程度(日本の場合は完成検査までいれて0,1%程度)かかり、工事中に6~8回程度抜き打ち検査が入る。さらには検査が終了しないと「使用できず・融資下りず、保険付かず」という厳しい制約がある。



・これくらいの厳しい検査機関を日本にも作って欲しい。債権に格付けがされるように、建物にも格付け機関があったら面白いと思う。もうけはとるには高い信用度と認知度が必要だけど。



4、地震に強い建物とは

昭和46年(十勝沖地震)→昭和56年(宮城沖地震)→平成7年(阪神大震災)と建築基準法が改正され基準強化が図られたが、平成10年の改正で民間検査機関に確認業務が開放された。基本的に震度6~7がきても倒されないとされている。基本的な見分け方として①壁の多い建物は強い②建物のバランスの良いものも強い。



・民間検査機関に確認業務なんて大事なものを、権限委譲したのなら、前述の費用対効果の面で不備がでそうなのは分かったのではないだろうか。もうけにならない手続きで面倒くさいから委譲したのだろうか。

イーホームズも悪いのは間違いないけど、検査機関の正しい収益構造もきちんと作らないと。



5、欧米の常識は日本の非常識

欧米では「作った物は壊さない」「個人所有の物件も社会資本」「設計と設備は分離が基本」が常識だけど、日本では住宅も商品の一つ(建設で儲ける)という考え方が一般的。



・金余りの今日においてマンションデベロッパーは業績好調だけど、マネーゲームになっていそうな一部のファンド系デベロッパーは危険がありそーだなと思いました。まともな業者が多いといいんですが、福岡?でも第二の姉歯が出たなんていってましたし・・・。日本の住宅事情も問題山積みですよね。

今回の事件でもっと議論して、しっかりした体制作りが出来て欲しいところです。



6、今後の方向性

重要事項説明時に「耐震診断の有無表示」が義務化される方向。また、大手金融機関では検査済み証・耐震診断書が融資条件の必要書類という動きがある。



・この耐震性チェックの機能は今のデューデリジェンスにも一応組み込まれていますけど、デューデリってそもそも法的に責任づけられているわけではないので、長く物件を持つつもりのない業者ではあまりきにしないんだろうなーとか思いました。



7、地震で倒れない建物にするために

設計と施工を分離するとともに、設計で強化した耐震力を施工段階で担保するため「設計管理料」として3~5千円/㎡を払う事。最終的には「設計賠償保険制度」「住宅性能保証制度」の強制加入が必要。



・これ「設計管理料」を誰に支払うかの肝心な部分のメモが抜けてる・・・。今度質問してつけたします。

でももし、施工業者がとるのではなく、施工業者を手配した会社、もしくは検査機関が責任をもって現場を監督する事で将来のその資産のオーナーからいただけるフィーとなり得るのならば、さきほどの検査機関の費用対効果の点でも改善できるし、アセットマネジメントしてる人ならば設計の専門家を持つ事で、儲けの一部に加えられるのかなーとか思いました。



さてだらだら書きましたが、日本の違法建築物って、多いんだなぁと改めて思いました。本来不動産業界の社会的役割って「安心して生活できる快適な空間(住居、事務所、商業施設等)の提供」のはずです。これが基本なんだっていう事が根っこにあって、あとは、経済的制約があるなかで、どう付加価値を提供していくのかが大事なんだなぁと改めて思いました。