男性のパピローマウイルスの居所は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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パピローマウイルスは子宮頸癌の原因のひとつであり、「男性⇄女性」とピンポン感染することから性感染症でもあります。本論文は、男性のパピローマウイルスの居所を調べたものです。

Fertil Steril 2015; 104: 838(英国)
要約:2011~2012年213名の健常男性(ボランティア)を対象に、精液検査3回とペニス擦過サンプル1回の中のパピローマウイルスをPCRで検査し、ペニス表面を拡大鏡で観察(3%酢酸使用)しました。パピローマウイルスが、少なくとも1回の精液検査で検出された方は27%、ペニス擦過サンプルで34%でした。また、ペニス擦過サンプルにパピローマウイルスが検出された方の85%で精液中にパピローマウイルスが検出され、ペニス擦過サンプルにパピローマウイルスが検出されなかった方の3%で精液中にパピローマウイルスが検出されました。ペニス擦過サンプルと精液中のパピローマウイルスの型はほぼ一致していました。ペニス表面を拡大鏡で観察した時に認められる平坦な部分の存在が精液中のパピローマウイルス検出と相関していました。

解説:精液はパピローマウイルスの運び屋と考えられており、最近の研究では精子頭部および剥離した上皮細胞にパピローマウイルスが結合していることが報告されています。これまで、男性のパピローマウイルスの居所として、精巣、精嚢、精管が考えられていましたが、確かな根拠がありませんでした。本論文は、男性のパピローマウイルスはペニス表面に存在し、拡大鏡で平坦にみえる部分にいる可能性が高いことを示しています。

本論文は、一般の健常男性の1/3にパピローマウイルスが検出されることを示しています。男性のパピローマウイルスが消失するまで7ヶ月との報告もありますので、ドナー精子を用いた治療のスクリーニング検査にパピローマウイルスを加えるべきだと、本論文の著者は述べています。なお、女性では、50%以上が生涯で一度はパピローマウイルスに感染するとされています。パピローマウイルスは、子宮頸癌の他、肛門癌、膣癌や尖圭コンジローマの発生に関わっています。