パラベンと不妊 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

パラベンと不妊については、2014.4.18「☆パラベンの影響は?」の記事でご紹介いたしました。本論文は、パラベンと体外受精の成績には関連がないことを示しています。

Fertil Steril 2016; 105: 714(米国)
要約:2004~2006年に体外受精を実施した18~45歳の女性245名356周期の成績を前方視的に検討しました。尿中のメチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン濃度は、それぞれ133、24、1.5 μg/Lでした。年齢、BMI、人種、喫煙、不妊原因で補正したところ、パラベン濃度と体外受精の成績(成熟率、受精率、良好胚率、着床率、臨床妊娠率、生産率)との間に有意な関連を認めませんでした。

解説:「パラベン」とは、パラオキシ安息香酸エステル(para-hydroxybenzonate)類の総称であり、飲料、化粧品、食品、医薬品などに用いられ、皮膚、唇、眼、口腔内、爪、毛髪から吸収されます。現在使用されているパラベンは5種類あり、それぞれの静菌作用が異なることから、何種類かのパラベンが同時に使用されます。米国では92%の方の尿中にパラベンが検出されます。パラベンにはエストロゲン作用が存在するため、環境ホルモン(内分泌撹乱化学物質)と同様の懸念があります。2006年米国FDAはパラベン使用は問題ないとしましたが、2011年欧州ESCCSは根拠不十分としました。確かに、マウスやラットの実験ではパラベンの影響は否定されていますが、ヒトでのデータは不十分です。本論文の研究は、このような背景のもとに行われました。本論文は、パラベンと体外受精の成績には関連がないことを示しています。しかし、胎児への影響などについては更なる検討が必要と考えます。

なお、パラベンの抗菌活性の強い順に並べると下記のようになります。
ベンジルパラベン
ブチルパラベン
プロピルパラベン
エチルパラベン
メチルパラベン