Q&A1059 海外から、成長ホルモンの使用について | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 海外在住、第2子希望、閉塞性無精子症のためICSI実施

第1子は幸いにも初回のロング法で授かることができました。37歳の時で、FSHは11前後、AMHは1.3ng/mlでした。卵胞抑制が効きすぎて結局5個しか採卵できず、その内MII卵子は1つしかなく2日目4分割の新鮮胚を移植して授かりました。38歳と7ヶ月で産みました。断乳後の40歳の時から第2子の治療を再開しましたが、3回の刺激周期を経て3回着床しましたが3回とも初期流産に終わりました。3回のうち1回はトリソミー13で流産でした。残りの2回に付いては検査する事が出来なかったのでわかりません。

第1子妊娠の時は(37歳)刺激に入る前の卵胞抑制にLupronを毎日適量打っていました。多分5mlか10mlだったと思います。刺激はFollistimを150単位/dayとLupron5mlでスタートし、途中から225単位/dayに増やしました。しかしLupronの効き目が強かったようで5個しか採卵できず、その内MII卵子は一つでした。このたった一つのMII卵子が受精し妊娠出産に至りました。
*新鮮胚2日目4分割、グレードは一番良い。フラグメントなし、左右対称・均等、分球割の張り、サイズ・ボリューム均等(教科書に掲載してあるようなとても綺麗な受精卵)

第2子の治療の一番最初は前回と同じ方法をリピートしたのですが加齢したこともあって(40歳)、2つしか採卵できずそれもMIで結局受精しませんでした。この結果を見てEstrogen Priming-Antagonist法に変わりました。

①高刺激+アンタゴニスト法、ゴナールF 450単位/day、アンタゴニスト開始と同時にOvidrelを薄めたもの(LHをsupplementするため)を注射。8個採卵できるもその内2個しかMII卵子が無く、両方ともICSIで正常受精。3日目新鮮胚まで育てる。新鮮胚移植:3日目新鮮胚を2個移植し、陽性判定後の6週目で流産。原因不明。
*新鮮胚3日目8分割、グレードは一番良いとは言われたが、第1子の時と比べて明らかに分球割に張りがない感じでした。フラグメントのようなものがほんの少しみられました。
②流産後のホルモン安定を待たずに、前回と同じ高刺激+アンタゴニスト法、ゴナールF 450単位/day。8個採卵、6個受精。6個の受精卵のうちMII卵子からのものは3個だけ。この3つのM2卵子受精卵のみが胚盤胞に。PGSへ送り結果は1つ正常、1つ遺伝子異常、1つ結果不明と出る。
 凍結胚移植1:正常胚盤胞を移植。着床せず。
*フラグメントらしきものは見当たらず、拡張途中の様でした。
 凍結胚移植2:結果不明胚を移植。陽性判定後の6週目で流産。原因不明。
*正常胚盤胞よりも拡張していました。見栄えもこちらの方が前回の胚盤胞より綺麗でした。
③中刺激+アンタゴニスト法。ゴナールF 225単位/day以外はほぼ前回と同じ内容。6個採卵でき、5個正常受精。5つのMII卵子が採卵できていました。3日目分割胚で凍結。PGSせず。
 凍結胚移植3:3日目分割胚を解凍し、4日目桑実胚で2つ移植。陽性判定ではあるが数値が低く(hCG 7.2)化学流産。
*中刺激で採卵し受精した中でこの2つがトップの見栄えの良い受精卵でした。フラグメントは無く、分割球は左右均等・対称、大きさも均等でした。5つ出来た受精卵の中で状態の良い2つを移植。
 凍結胚移植4:残りの分割胚3つを解凍し4日目桑実胚で移植(自然周期移植)。陽性判定でたが7週目で流産。トリソミー13と判明。
*前回移植した受精卵と比べてあきらかに2つは成長が遅い又は分割が止まりそうな様子で(16分割と32分割)、一つだけが桑実の形状から胚盤胞へ成長していく途中のものでした。フラグメントは成長遅い受精卵では見受けましたが、平均どおりに成長していた胚盤胞ではありませんでした。

現在は流産後の母体ホルモンが安定するまで治療休止中。休止中に1つ歳をとり現在42歳。

3回の刺激周期では採卵できたMII卵子は全てICSIで正常受精しています。分割胚の状態は中刺激のものは教科書どおりの見栄えが綺麗なものでした。同じ3日目の高刺激受精卵と比べると中刺激のほうが形状・フラグメントの有無を考えても見栄えが良い受精卵でした。

2016年1月:AMH 0.71 ng/mL、FSH 14.9 mIU/ml、E2 24.8 pg/ml
第1子を授かった病院でずっと治療しています。幸いな事に保険でほぼ全ての治療費、薬代をカバーできるため、刺激周期を何回もこなす事は数字上は可能です。ただ私の年齢上、今年が最後だと思っています。当地の医師とは過去のアンタゴニストの結果がそんなに悪くない(この年齢で、また体が刺激にどのように反応するか予測が立てやすい)のでアンタゴニストをリピートする事で合意しています。中刺激(225単位)と低刺激(150単位)の2回をこなして、より多くの受精卵を凍結しておいてから凍結胚移植へ進もうと話しています。この時に成長ホルモンを使用してみたく思っています。治療に成長ホルモンを使われていましたら経験談をお聞かせいただくことは出来ないでしょうか。又はアンタゴニストに手を加えるとすれば先生ならどの部分に手を加えられますか。LHの有無が卵胞成長には必要との事ですがFSH製剤と同時にLHを注射しつつアンタゴニストを利用する方が良さそうでしょうか。担当医はこれまでゴナールFを使ってきていた上での治療結果があるので、今からhMG製剤へ方向転換することはためらう可能性が高く、なのでゴナールFとあわせてLH剤(前回とは違うもの)を治療に使えないか聞いてみようと思っています。もちろん成長ホルモンも併用してと想定しています。そこでゴナールFを150-225連日注射すると仮定して、この量に適切なLH剤の量は75前後でしょうか。これまでの治療ではトリガーを打つまでに13日間卵巣刺激剤を注射をしています。LH剤はトリガーを打つまで毎日、それとも隔日ごとに注射するのでしょうか。どのようなスケジュールでLH剤を使用するのが適切だと思われますか。

A 担当医との良好な信頼関係が構築されているように思いますので、私が変に口を出さない方が良いような気もいたしますが、参考までに私の見解を述べさせていただきます。

まず、成長ホルモンが有効な方は実際にはそれほどおられないように思います。費用対効果の観点からは、あまりお勧めいたしませんが、成長ホルモンも保険でカバーできるのでしたら、やってみる価値はあるでしょう。本日の記事2016.4.13「成長ホルモン(GH)の効果は?」を参照してください。

また、私なら安価でかつ使用経験の豊富なHMG製剤を用いますが、現在の卵巣機能に最適なFSHとLHの配合比を考慮すると1:1でやってみたいところです(つまりFSHと同じ単位)。なお、LH製剤はFSH製剤と同時に使用します。したがって、毎日FSH製剤を使用されているのなら、毎日となります。