Q&A1137 癒着胎盤になりやすいのでしょうか? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 夫は閉塞性無精子症のため、精巣精子を使用して顕微にて子供2人を授かりました。
凍結胚もまだ残ってるので、この度3人目の移植を行いました。まだ判定前ですが、気になるのは2人目に癒着胎盤になったことです。1人目は胎盤もスムーズに出たのですが、2人目は用手剥離でその際に一部子宮内反になってしまいました。
もしうまく、妊娠したとして3人目の分娩ではやはり癒着胎盤になりやすいでしょうか。なるとしたらやはり体外受精が原因で、自然妊娠した人より高い確率なんでしょうか。私の方は1人目、2人目ともに移植1回で妊娠しており、以前より婦人科疾患の既往はなしで、今も何もありません。流産や中絶などの掻爬術もしたことはありません。

A 癒着胎盤のリスク因子は子宮内操作などですが、用手剥離で剥離可能な程度の場合は癒着胎盤とは言えず、付着胎盤ではないかと思います。ただし、その鑑別には顕微鏡による病理組織学的検査が必要で、胎盤と子宮の間に床脱落膜が形成されているものが付着胎盤(発生頻度0.3%)、形成されていないものが癒着胎盤(発生頻度0.01%)です。つまり、病理組織学的検査が行われていなければ確定診断ができません。また、初回の出産より、2回目以降の出産でなりやすいものです。なお、妊娠の方法は全く関係ありません。

癒着胎盤の定義(重症度は1<2<3)
1 楔入胎盤:胎盤が子宮筋層表面に癒着したもの
2 陥入胎盤:筋層深くに侵入したもの
3 穿通胎盤:筋層を貫通して漿膜層に到達したもの

癒着胎盤のリスク因子
1 経産婦
2 内膜損傷(子宮内膜掻爬術、胎盤用手剝離術の既往)
3 子宮手術(帝王切開術・子宮形成術の既往)
4 内膜の炎症(子宮内膜炎)
5 粘膜下筋腫
6 前置胎盤