☆不育症とビタミンDの関係 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、不育症(習慣流産、反復流産)患者でのビタミンD低下と免疫異常の関連を示唆しています。

 

Am J Reprod Immunol 2016; 76: 432(中国)

要約:2014〜2016年に連続2回以上の流産を繰り返した方99名を対象に、25ヒドロキシビタミンD濃度とCD19+B細胞、NK活性、Th1サイトカイン(IFNγ、TNFα)との関連を検討しました。なお、25ヒドロキシビタミンD濃度により3群に分けました:正常群35名(>30 ng/mL)、不足群51名(20〜30 ng/mL)、欠乏群13名(<20 ng/mL)。3群間の年齢、BMI、既往流産回数に有意差を認めませんでした。ビタミンD濃度正常群と比べ、不足群と欠乏群のCD19+B細胞増加、NK活性増加、TNFα増加を認めましたが(ただし有意なものと有意でないものが混在)、不足群と欠乏群の間に有意差は認めませんでした。また、1,25(OH)2ビタミンDサプリメント(活性型ビタミンD3)により、これらのパラメータの改善が認められました。

 

解説:不育症(習慣流産、反復流産)では、CD19+B細胞増加、NK活性増加、IFNγ増加、TNFα増加などの免疫系の異常が生じると考えられています。一方で、ビタミンDは免疫系の調節役として重要であることが明らかとなってきました。すなわち、ビタミンDはT細胞の分化増殖を抑制、CD8T細胞の細胞傷害性を抑制、Th1からTh2へのサイトカインシフト促進、B細胞の増殖を抑制、IgG分泌抑制します。これらの変化は、不育症でみられる免疫異常を是正する方向に働きます。このような背景のもとに、本論文の研究が行われました。本論文は、ビタミンD濃度が減少すると、流産の方向に免疫の舵が切られ、ビタミンDサプリメントによりそれが改善することを示しています。症例数が少ないため断定的なことは言えませんが、不育症の検査に25ヒドロキシビタミンDを加えるべきではないかと考えます。