本論文は、ビタミンDでTh1/Th2が改善される可能性を示唆しています。
Nutrients 2018; 10: 902(日本)doi: 10.3390/nu10070902
要約:2014〜2017年に不妊症女性276名を対象に、25OH-VitD濃度とTh1/Th2比を測定し、ビタミンD製剤投与による変化を検討しました。ビタミンD低下(25OH-VitD濃度<30 ng/mL)が87%(241/276)に認められました。ビタミンD低下の方23名にビタミンD製剤投与後のTh1/Th2を測定したところ、Th1/Th2は有意に低下しました(14.8→13.1、P=0.004)。ビタミンDが改善した方のみでTh1/Th2は有意に低下がみられ、ビタミンDが改善しなかった方ではTh1/Th2は変化しませんでした。また、子宮内膜をビタミンDとともに培養したところ、ビタミンD添加群でTh1サイトカインであるIFNγの低下を認めました。
解説:ビタミンDは核内のビタミンD受容体(VDR)に結合して働きますが、VDRにより調節されている遺伝子は200種類以上あり、骨とミネラル代謝のみならず、心血管疾患や免疫系や癌との関連が示唆されています。VDR遺伝子を持たないマウスは高ゴナドトロピン性低ゴナディズム(閉経状態と同じ)になることが知られていますので、ビタミンDは卵子に必須の物質です。また、ビタミンDは細胞性免疫に関与することが知られています。本論文はこのような背景の元に行われ、ビタミンD投与によりTh1/Th2が改善される可能性を示唆しています。改善の程度はわずか1.7と少ないですが、非常に興味深い報告です。
ビタミンDに関しては、下記の記事を参照してください。
2019.2.9「ビタミンD補充のガイドライン」
2019.2.7「☆ビタミンDと生殖」
2018.11.14「ビタミンDと不育症」
2018.10.12「ビタミンDは卵巣予備脳とは無関係」
2018.2.25「ビタミンDによる胎盤形成作用の基礎的検討」
2018.1.20「ビタミンD濃度と体外受精の成功率の関係:メタアナリシス」
2017.10.20「ビタミンD不足と不妊の関係」
2017.8.20「健康な女性におけるビタミンDと妊娠の関係」
2017.8.18「ビタミンDの効能:妊娠免疫の観点から」
2017.3.20「ビタミンD製剤は、不育症治療に有用?」
2016.12.8「☆ビタミンDの卵胞発育促進作用」
2016.12.5「☆不育症とビタミンDの関係」
2016.12.4「☆ビタミンD製剤はいつ服用すればよいか」
2016.3.31「妊娠中のビタミンD大量投与」
2014.10.26「☆ビタミンD不足だと妊娠率が低下する」
2014.4.7「☆ビタミンD不足で着床障害になる?」
2014.3.17「☆ビタミンD欠乏は不育症のリスク因子です」
2013.2.25「白人ではビタミンD濃度が高いと体外受精の妊娠率がよい」
2012.12.10「ビタミンDの効用 妊娠•授乳編」
2012.12.8「☆ビタミンDの効用 女性編 」
Th1/Th2に関しては、下記の記事を参照してください。
2019.2.23「☆Th1/Th2バランスについて」
2017.12.31「☆IVIG(免疫グロブリン)が有効な方は?」
2017.8.31「タクロリムスによる妊娠率改善の可能性 その2」
2016.3.24「抗TNFα製剤による妊娠率改善の可能性」
2016.2.12「免疫グロブリン(IVIG)の効果 その2」
2016.2.5「タクロリムスによる妊娠率改善の可能性」
2013.12.13「☆夫リンパ球免疫療法」