Q&A2452 第二子治療について考察中 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 過去に回答いただき、ありがとうございました。現在44歳、第二子妊娠治療中です。

①第1子の妊娠治療について考察しています。38歳当時の胚盤胞の染色体異常率が年齢相当だったと考えて良いのでしょうか。
38歳1度目採卵で胚盤胞4個凍結。単一胚盤胞移植(シート法ではない)3回不成功(初回のみhCG>10、1つは融解で戻らず)。
2度目採卵で初期胚2個、胚盤胞2個凍結。子宮鏡検査でポリープ1つ摘出した翌周期、初の二段階移植。2014年当時の不育症検査で特筆する点も無かったが、念のためにヘパリン、バイアスピリン継続使用し、出産に至る。
4年後、残り胚盤胞、妊娠した時に準じた方法(子宮鏡検査でポリープ摘出、二段階移植、オルガラン使用)を取るが着床せず。
38歳の胚盤胞染色体異常率は50%未満、染色体正常胚の出産率60%とすると、1子を得るのに3.3〜4個の胚盤胞があれば良いと思うのですが、胚盤胞6個のうち1つしか出産に至らなかった原因は、染色体異常率が高いのでしょうか。それとも、当時の着床環境のせいであって、1度目の採卵した胚盤胞4個の中にも正常胚があったと考えられますか。胚は全て、精索静脈瘤術後半年経って精液検査改善を見てからの顕微受精で得ています。


②エンブリオグルーが体に合わないことはあるのでしょうか。移植後子宮収縮の原因は何でしょうか。
第2子治療で転院、全ての不育症検査や慢性子宮内膜炎検査、子宮収縮検査なども対策。初めてシート法で単一胚盤胞移植を行うも着床後胎嚢確認できず。次はエンブリオグルーを使用した二段階移植を行うが、初期胚移植の帰りに駅構内を小走り〜早歩きしていた時に差し込むような下腹部痛あり、暫くして消失。元来性交等で子宮収縮しやすく、検査も引っかかっていたが、第1子治療時より移植後は必ずダクチル3mg使用で問題無く、第2子治療でもダクチル3mg服用していた。胚盤胞移植前に担当医に訴えたところ、腹痛の原因が子宮かどうかもわからないと言われただけでダクチル増量してもらえず、そのまま胚盤胞移植を行う。翌朝排尿時にかつて見たこともない透明な塊2つ排出。その次はシート法+胚盤胞2個移植でエンブリオグルーを使い、ダクチル6mgに増量、腹痛無し、着床に至らず。今まで、懐妊時もそうでない時も、移植後に腹痛を感じる事は一度も無かったので、エンブリオグルーを使うことに若干の不安を覚えています。次回エンブリオグルーを拒否するべきでしょうか。

③残った胚盤胞や今まで移植し着床しなかった胚の中に、染色体正常胚が存在する可能性は高いのでしょうか。
43〜44歳の7回の採卵で初期胚3個、胚盤胞8個得られましたが、不育症検査等やるべき母体検査を対策しながらも、3回の良好胚移植で結果を得られず。
3AB→子宮鏡検査問題なし、シート法→hCG>100、胎嚢見えず
3AB→二段階移植、エンブリオグルーあり→二回とも移植後腹痛、塊出てきた→hCG<0.5
3BB+G2→シート法、エンブリオグルーあり、ダクチル倍量→hCG<0.5
3CB(検査しておらず凍結中)
心機一転、染色体正常胚を得るまで貯卵予定。
3AA→15.19トリソミー、18.21モノソミー
3BB→11モノソミー、16トリソミー
3BC→14モノソミー
かつて出産に至った胚盤胞は当たり前のように4AAでしたが、検査を実施してみて形態学的評価と染色体検査結果の解離に驚いています。現在残っているのは初期胚2つ(2G3、9G3)と3CB。
44歳が出産に至るには胚盤胞9個に1個と言われる染色体正常胚が1〜2個必要だと思いますが、胚盤胞は既に8個取りました。次の胚盤胞こそ当たりかもという気持ちで粛々と臨んでおりますが、経済的にリミットを設けるべきか悩みどころでもあります。第1子治療に300万円弱でしたが、第2子治療に既に600万円以上費やしているからです。近々未検査3CBの更新期限が来ますが、正常胚の可能性は高いのでしょうか。それとも、腹痛後に塊が排出された二段階移植時の胚3ABが正常胚だった可能性の方が、高いでしょうか。


④勝利パターンを踏襲したいのですが、第1子から時間が経っているとの理由で、出産した二段階移植よりも、直近で唯一着床したシート法を勧められます(シート液も数本ある)。次回はどちらを行うべきでしょうか。また今までダメだった全ての移植が、秋〜冬、冬〜春の次期で、出産に至ったのは7月の移植でした。夏の移植は確率が低いと聞きますが、勝利パターンを考えて移植時期も踏襲するべきでしょうか。

 

A 文面からの情報だけで回答いたしますので、推測の部分が多々ありますことをご理解ください。

 

①38歳の胚盤胞染色体異常率は47.9%です。確かにPGT-A検査実施した正常胚の妊娠率は50〜65%、出産率は50%ですが、PGT-A検査未実施胚の出産率は「胚のダメージ」がない分、80%程度あるのではないかと推察します。従って、染色体異常率が高いことが予想されます。


②このような場合には、エンブリオグルーに対する拒絶(異物)反応である可能性が否定できません。従って、次回のエンブリオグルー使用はやめておいた方が良いでしょう。

③ご質問の全てに回答はありません。推測の域を出ませんが、38歳の時点ですでに染色体異常率が高率(最大5/6=83%)であると考えますので、43〜44歳の胚盤胞全てが異常だったとしても納得できます。形態学的評価では染色体異常を見極めることはできませんので、グレードが良くても異常胚ばかりの可能性は十分あります。


④出産した二段階移植、7月移植をお勧めします。

 

なお、このQ&Aは、約2ヶ月前の質問にお答えしております。