肥満マウスの食事療法で卵子の質が改善 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、肥満マウスの食事療法で卵子の質が改善することを示しています。

 

Hum Reprod 2022; 37: 2867(ベルギー)

要約:5週齢のSwissマウスに肥満食(高脂質+高糖質)を7週間与え、その後の4週間ダイエット食(通常食、カロリー制限食)の効果を2週と4週の採卵時に検討しました。以下のプロトコールで実施し、各群8匹としました。

  -7週    0週   2週   4週

A 通常食→→→通常食→→→→→→→→

B 肥満食→→→肥満食→→→→→→→→

C 肥満食→→→通常食→→→→→→→→

D 肥満食→→→カロリー制限食→→→→

             OPU  OPU

 

BCD群はA群と比べ、0週での体重が有意に増加しましたが、CD群は2週でA群のレベルにまで体重が有意に低下しました。CD群は2週でA群のレベルにまで糖質脂質代謝の一部が改善しましたが、全て改善したのはD群の4週のみでした。また、D群は2週C群は4週でA群のレベルにまで卵子の質が改善しましたが、両群ともミトコンドリアの機能は改善しませんでした。

 

解説:現在のところ、女性の肥満は、卵子への悪影響ではなく、着床への悪影響であることが明らかにされていますが、卵子への影響が全くない訳ではないとする報告が散見されます。肥満女性は、卵巣刺激への反応が低下、卵胞サイズが小さい、代謝に変化がある、炎症が増加するため、卵子への影響も懸念されます。本論文は、このような背景のもとに行われたマウスでの検討であり、肥満食(高脂質+高糖質)による体重増加で代謝機能と卵子の質が低下するが、ダイエット食(通常食、カロリー制限食)による体重減少で改善されることを示してます。しかし、ミトコンドリアの機能は改善していませんので、肥満食7週間の影響が残っているものと考えます。

 

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BMIについては、下記の記事を参照してください。

2022.12.13「肥満で子宮内膜のタンパク質の発現パターンが変化

2022.12.12「肥満で卵胞液中のタンパク質の発現パターンが変化

2022.10.14「☆ライフスタイルによる体重減少の効果:メタアナリシス

2022.4.25「☆女性のBMIは異常胚とは無関係

2021.12.5「BMI増加で胚盤胞発生動態は?

2021.11.21「☆BMI高値で不育症リスクが増加!?

2021.9.28「BMI高値は受精卵の染色体異常とは無関係

2021.7.21「☆女性の肥満で流産率が増加

2021.5.5「女性のBMIは卵子に影響?着床に影響?