一度だけで。
君に伝えて、訴えて、懇願して、揺すって、脅して、強請って、丸め込んで、誤魔化して、平伏して、全て捧げるから。
ほんの少しだけ、僅かな一欠片でいいよ。
そうしてくれたのなら、後はもう。
まずは優しく包み込んで、囲い込んで、絡めとって、とじこめて。
あたためて君を油断させよう。
目をふさいで、なにも見えなくしてしまって、口移しで甘い毒を注ぎ込んであげる。
なにも考えられなくしてしまおう。
だから、ねぇ？一度でいいよ？
裏切ったりしないよ。ひとりにしたりなんてしない。
君をはなさないし、はなせない。逃げ道なんてひとつとして作ってあげる気なんてないね。
それでも、逃げようものなら、追いかけて、先回りして、待ち伏せて、罠をしかけて、なにがなんでも捕まえる。
捕まえたなら、閉じ込めて、拘束して、消耗させて、身動きひとつまばたきさえ出来なくさせてやる。
全力で君を俺に縛り付けると思うよ。
だから、もう、諦めて？
囁いて、見つめて、くちづけて、触って、引っ掻いて、噛み付いて、舐めあげて、溶かして、とろとろのぐずぐずになるまで甘やかして、大事に大事にしてあげるから。
それから、攻め込んで、追い詰めて、いじめて、啼かせて、溺れさせて、君を許さずにイジワルもしてあげるよ。
ねぇ？
なんでもあげるよ。君が欲しいもの全部。俺が持ってるもの全部。
なんでもしてあげる。君が望むことなら。君から離れる以外なら。
俺を頼って。守らせて。
利用して、使用して、所有して、誇示して、占拠して、独占して、支配して、君臨してほしいんだ。
だから、ねぇ？
曖昧でもいい、漠然としててもいい、なんとなくでいい、有耶無耶にでも流されて。
肯定して、承諾して、許可して、受け入れてほしい。
一度きりでいいよ。言葉でなくてもいい。
君の頭からつまさきまですべて。外側から内側から、髪の一筋から、爪の先、皮膚の一欠片、柔らかいとこから硬いとこまで、骨まですべて。
それこそ、食べてしまいたいくらいに。取り込んで、吸収して、ひとつになってしまいたい。
すべて。全部。
君を構成するすべてを愛してるから。
「最上さん、君が好きだよ。
俺のものになって？」
ねぇ？もう、俺に堕ちて。
うなずいて。
