壁|д')……えと、あれですよ?夜の帝王さまなびやーくぷれいなあのお話、その後編にてございますよ?
ただでさえ、三人称で無駄にねちっこ長いのに、隠した折りたたみ部分に気付いてしまって迷い込んでしまって合言葉をお持ちの方にとっては、どどんと2倍⭐︎なありさまのブツと成り果てております。
それでとよろしければどうぞよしなに。
 
 
 
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ごきゅりっ……と、生々しくも喉が息を飲む大きな音をさせつつ、微かに震える手でピルケースの蓋を開けたキョーコ。
にっこりと笑い無言のまま自分を見下ろし続けているだけな蓮の顔をチラッと見上げ、その麗しいがまでの似非紳士スマイルから即座に視線を逸らすと、ぎゅっと強く目を瞑ってピルケースの中のふた粒の薬をグラスの水と共に飲み干した。
まるで、毒でも飲むかのような覚悟な顔つきと悲壮な顔色で。
………………薬を飲み干してから暫し、そのままキュッと身を竦めていたキョーコだが、やがて恐る恐ると瞼を開くとぱちぱちと数度程その瞼を瞬かせた。それは、我が身になんの変化も感じ取れない事を心底不思議がる素振りで。
ぶふっと、そんなキョーコの一挙手一頭足を愛でるように観察していた蓮は思わず吹き出して笑ってしまっていた。
「そんなに飲んだ次の瞬間から効果があるような危ない薬、俺がキョーコに飲ませる訳ないでしょ?」
ジロリと恨めしげに笑う蓮を見上げるキョーコの頭をごめんごめんと手で撫で、くつくつと喉の奥で笑いを噛み殺しながら蓮はそう告げた。
「効果が出てくるのはもうちょっと後から。だから、その間に……お風呂、入っておいで?」
さらさらと指通りの良い栗色の髪を撫でていた手を、つぅとキョーコの顔へと滑り落とした指さきで思わせぶりに頬を指の腹でなぞらせながら、一緒にお風呂でも俺は大歓迎だけど?と揶揄うように誘って促せば
「ひ、ひとりで入って参りますっ!!」
弾かれたかのごとく即座に、しゅたっと敬礼付きで力いっぱいキョーコから即答が返された。
が、そんなキョーコのある意味少しの先送りのような悪あがきじみた逃げの返答にも、予想済みだったらしき男は滴るような夜の帝王が如き色香を滲ませて今宵の愛しい獲物へとぞくりとする低音でもって逃げ道などないと今更に宣告したのだった。
「そう。じゃぁ……寝室で、待ってるよ。」と。
 
 
 
 
 
 
肌触りの良いナイトドレスに湯上りのまだ少し湿り気を残した髪、赤く染まった頬。
そろぉ〜りと、ゆっくり細く開かれた寝室のドアから中を覗き込むキョーコの姿は天敵にあいまみえるのを恐れた小動物のようで。
初見時にあれだけキョーコを驚愕させた大きな大きな規格外的サイズのベッドも最早見慣れた物でなんとも思いもしない。それくらいの数は恋人としての夜を過ごしたって言うのに、未だに奥ゆかしい初々しさをたっぷりと残している。
そんな恋人の愛らしさにどこまでも優しくしてどろどろに甘やかしたい庇護欲、それと同じくらい強く追い詰めて更に怯えさせたいといった好きな子程構っていじめて泣かせたいな子供じみた嗜虐欲が蓮の中に欲望として篭る。間接照明に薄く浮かび上がる恋人な華奢なシルエットに喉を鳴らしてしまいそうなほど生々しく、強く。
けれど、ベッドの淵に優雅に腰掛けた男は、職業柄ひとよりも器用な表情筋でもってそれを綺麗に隠し込み、やわらかく微笑んで恋人へおいでとゆったりと腕をひらいてみせた。
おずおずと、それこそ蓮にしてみれば焦らされているみたいなスピードで、けれど彼の最愛にして至高の恋人は蓮の待つベッドへと歩み寄って来てくれる。
蓮の愛しい愛しい恋人。その身体を少しだけ強引にでも腕に捉え、組み伏してその肌を暴いてドロドロに溶かして快楽の淵に沈めきってやりたい。
そんな凶暴なまでの欲望。
けれど、今宵は…………
「気分が悪いとかは、ない?」
優しく。あくまでも優しく、恋人を抱き寄せながら薬が合わないなんて事はないかと、キョーコを心配してみせる男。
ふわりと膝の上へと抱き上げられたキョーコ。ぎゅうと囲い込む腕とセラピーな香りに、うっかりとふにゃっと柔らかく解けてゆくキョーコの緊張。
大丈夫。とキョーコが答えてみせると、ゆるゆると身体のラインを確かめるように這う大きな手。
「けど…………」
戸惑うように、そう声を切るキョーコ。
その言葉の先を求め促すように、蓮の顔がキョーコの髪へと埋められてゆく。
キョーコの背中を撫でる蓮の手のひらが感じ取る速い鼓動の数とあまやかに上がりつつある体温。
洗い立ての髪の甘い香りを味わうみたいに、キョーコの耳朶のすぐそばでスンッと鳴らされる鼻先が擽ったかったのか、細い肩がぴくりと跳ねる。
つぅと、背骨に沿うように指さきを細い腰へとなぞり落とせば
「っ……ぁんっ」
思わずに溢れた啼き声と膝の上で震える身体。
いつもの夜よりずっと、いっそわかりやすい程に敏感なキョーコの反応に、くすりと男の唇から笑みが落とされる。
途端、カァッと頬を赤く染めて、弾かれたみたいに蓮の膝の上から逃げ出そうとするキョーコ。
けれど、絡み付く腕は逃すつもりなんてないとその身体を絡めとったまま。
媚薬なんて妖しげなものを飲まされて……いつもと違う自分の身体を恥じらって、イヤイヤと幼子のように左右に振られる栗色の髪。自分の身体が変だと、そう震える声で訴えて。
紅茶色の大きな瞳からは涙が滲み落ちる寸前で。
そんなキョーコへ、安心させるようにゆったりと低いが告げる。
「大丈夫、変じゃないよ。薬と俺の所為だから。」
と、そう。救いを垂らすみたいにトロリと甘く、悪く誑かすように。
全部、蓮の所為にしてしまえと、そう唆す言葉を。
それでも、まだ戸惑うように揺れるキョーコの瞳を覗き込み見つめながら蓮は更にキョーコへと誘いをかける。
「どんなキョーコも愛してるよ。今夜は……どうされたい?どうしたい?キョーコのしたいこと、して欲しいこと……なんでも聞いてあげるよ?」
おずおずと、蓮を見上げるうっすらと涙に濡れたキョーコの瞳。そこに確かに宿る、期待の色。
しなやかに花開くみたいに艶やかな、蓮だけが知る女の顔。
いつものように自分を翻弄する恋人の手もなく、まだゆるゆると撫でられ続けてしまっているキョーコ。焦れたように、もじっと愛らしいその細い腰を震わせだす。
煽るような恋人の姿に、それでも滾る欲を奥歯で噛み殺し、夜を統べるかのような帝王の悪い笑みで、男はただ待ち受けた。
やがて、じらされたキョーコの唇が溢すだろう夜の願いを……その白い手が起こすだろう行動を。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
しんと、静まった寝室。
ほんの少し前までの熱く爛れた夜を未だに引き摺るみたいに、シーツから覗く剥き出しな肩に嫌って程の色気を滲ませている男。
その隣には、すぅすぅと可愛らしい寝息を立てているキョーコ。
窓から差し込む眠らない街のギラついた光に、うっすらと薄暗く照らされる恋人の寝顔を見つめる蓮の瞳。
やわやわと、栗色の髪に指を遊ばせて。
ほんとうに……かわいいよね。と、蓮はひとり思う。
にやりと、悪い笑みを唇に浮かべながら。
先ほど、キョーコが蓮へ施してくれたかわいい行いや零してくれた言葉。そんないつものキョーコからはなかなか想像出来ないみたいな、淫らで愛らしかった恋人を反芻するかのように。
 
 
 
 
本当に俺のキョーコはかわいくって堪らないね…………騙されやすくて、さ。
と、悪ぶくようにそう胸の中でひとりごつ。
 
 
 
 
 
 
媚薬だなんて言って飲ませた例のあのカプセル。
だだのビタミン剤なのにね?
なんて、夜の帝王な悪い顔でもって、蓮は隣で蓮の吐いた嘘など知らないままに眠る愛しい恋人の身体に腕を巻き付けたのだった。
 
 
 
 
 
 
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↓拍手ボタンの27555番目の拍手を叩いてくださったチーコさまよりなリクエスト
 
「蓮さんに媚薬を盛られたキョコさん」
 
な、ものをねじ曲げこじつけたつもりだったりしやす。
_:(´ཀ`」 ∠):
 
 
 
なにかしらかの馬の骨がらみな不祥事的事件でキョコちゃんが媚薬を飲まされてしまった……とかでなく、蓮さん自ら媚薬を……ってのがなかなか浮かびませんで。
壁|д')……いや、ほらだってあの経験値だけは積み上げやがった夜な帝王様ですもの。キョコさんを悦くするのはっ!自分のテクニックと身体でっ!!な感じじゃないかなぁと。
 
 

そんなこんなで、騙くらかしプラシーボ効果狙いな嘘吐き紳士なお話と成り果てましたとさ。
無駄に長くどくってごめんなせぃでした!
どっとはらい☆
 
 
 

↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。

 


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