壁|д')……どうも、猫木めにございます。
誰?お前?ってなってやしないかと少々の不安な感じにお久しぶりにございます。


はてさて、これでも胸キュン萌えでラブな少女漫画な虹世界の隅っこに生息しているつもりな我が家……どうしてこうなった?なタイトルにてすいませぬ。猫木の壁です、えぇ完璧に。
そんな無駄にくどくて長い萌えどころさえよくわからぬ代物にてございますが、お暇なお方はどうぞよしなに。
_(:3 」∠)_



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カツコツッと、リズミカルに軽い音を打ち鳴らしていたミュールは、とある扉の前でピタリっと止まる。
カードキーでの開錠の電子音の後、開かれたドアの先にいたのは……芸能界にさっぱりも興味のない人間であろうとその名と顔は知ってるだろうと言われる程な知名度と人気を誇る売れっ子俳優の敦賀蓮、そのひとだった。




「……電話してくれたら迎えに行くって、言っておいた筈だけど?」




玄関の上がり框すぐな廊下のど真ん中、なんてそんな目立つポジションで恋人の帰宅を待ち構えていたらしき蓮は、うらめしそうにぶつくさとそう不満を零す。
わかりやすくくっきりはっきりとなしかめっ面
でもって腕組みしているさまは、一歩間違えると門限を破った年頃の娘を叱る心配性の頑固オヤジみたいで。超高性能な対敦賀不機嫌センサー搭載なキョーコなど、普段ならば条件反射的にビクビクぶるぶるな怯えた小動物っぷりを披露しそうなものだけれど……
「最上キョーコ、ただいま帰宅致しましたっ!」
しゅたっと!それはもう力いっぱいな敬礼さえ伴い元気いっぱいにそう答えてみせるキョーコ。
その上、えへへーと実に愛らしく微笑むとぽふりと蓮の胸へと飛び込むと続けたのだった。
「ちゃーんとマンションのエントランスの真ん前すぐそこまでタクシーに乗って来ました!!敦賀さんがお迎えに来たりなんてしたら……大騒ぎになっちゃうじゃないですか。」
ご本人も車も、兎にも角にも無駄に目立つんですから。なんて楽しげに付け足しながら。
寧ろそれが狙いとばかりにがっちりしっかりと目撃してもらって、このかわいいかわいい娘は俺のなんです!!ってそう全力全開でもってアピールしたいところな蓮。それも今夜みたいな、夜の遅くな時間帯でアルコールも入ってな打ち上げともなれば、殊更ととくに。
お迎えすら許してくれないつれない恋人。けれども、珍しくわかりやすく甘えるようにうりうりぐりぐりと胸に頭を擦り付けるなんてかわいい事をされてしまえば膨れてばかり居られようものもない。
ギュッと腕の中に恋人の細い身体を抱き込んで。今現在撮影中なドラマの役作りで色を戻した黒髪へと顔を寄せると、いつもと違って香る煙草とアルコールの匂い。
「……ビールの匂いがする」
甘い恋人の髪の香りに混じる遺物感が嫉妬深い男にはどうにも不快で、思わずに小さく口から滑り落ちた不服。
「むぅ……お酒臭いって言いたいんですか?」
今夜の打ち上げのお店がクラフトビールの専門店のオススメのオリジナルおつまみが美味しかっただとか内装がおしゃれだったとかやらとご機嫌に蓮へと報告してくれていたキョーコ。蓮の呟きを耳にした途端にぷくっと頬を膨らませ唇を尖らせた。
やれ、仮にも乙女に、それも恋人に向かって酒臭いなんて酷いっ!傷付きました!!だとか、やれ、自分だけ敦賀セラピーないい香りだなんてズルい!だとか……ぶちぶちと拗ねてみせている。
いつもならばシャキッと姿勢の良いキョーコがくらりくらりと左右へ身体を揺らす幼いような仕草も、酔いの余韻に赤く染まった滑らかな頬に感じる無防備な色香も、どうにも蓮の中の男のツボを刺激するのだ。
これだから、自分の目の届かないとこでキョーコが酒を飲むのは嫌いなんだ。そう苦く胸の中で毒づいて顔を顰める蓮。
それでも、顔の売れた芸能人なのだから電車やバスや徒歩なんかで移動しないでマネージャーの車かタクシーを使ってくれと言う蓮の言い付けをちゃんと守って帰って来てくれた恋人の機嫌を、これ以上損ねることのないようにと
「はいはい。じゃぁ、キョーコちゃんを傷付けた責任を取って……きっちりといつものいい香りになるようにしますっと。」
そう一方的に告げるだけ告げ終わると同時にひょいっと恋人の身体を縦抱きに持ち上げ、きょとんとした大きな紅茶色の瞳を覗き込むとにっこりと笑ってみせたのだった。








さてはて。
自分の吐いた言葉の責任を取ると宣った男がどのような行動を取ったかと言えば、だ。
アルコールの匂いのする恋人を抱き上げたまんま風呂場へと移動もいうなんともわかりやすくお約束的なものであった。
まどろっこしいがまでのすれ違いな両片想い期間のあれそれな紆余曲折を乗り越えて、晴れて恋人同士となってから年単位が過ぎて、わがままなわんこに負けてな同棲にまで持ち込んだ関係。もちろん、恋人と甘く熱く肌を重ねる夜だってもう数えきれやしない。
余裕のある大人紳士どころかキョーコ限定で子供っぽいがまでの執着心を見せ、これまたキョーコ限定でもってなスキンシップ好きな、重たい男。恋人とのいちゃいちゃ目当ててお風呂へ連行されたりなんかの隠れ遊び人疑惑のある夜の帝王様の暴走のせいで純情乙女だった筈なキョーコなのに、悲しいかな(?)一緒にお風呂ももはや慣れたもの。
なのではあれど……
百歩譲ってもだ。脱衣所まで運搬された挙句にあれよあれよと手慣れた蓮の手で服を剥がれたりまでは、まぁ、良しとしよう。
今宵、どうやらこの男は、とことんなまでにキョーコのお世話をするのだ!と決めてしまっていたらしい。
なんと、いつの間にやら歯ブラシまで持ち込んで、自分で磨けると訴えるキョーコに向かって「いい子だからおくち開けてごらん?」などと例のあの胡散臭い紳士スマイルでもって半ば脅すみたいに嬉々としてシャコシャコとキョーコの歯まで磨いてみせたのだ。
「ゔぅぅ…………この歳になって他人に歯ミガキされるなんてぇ……」
なんとも言えないような羞恥に両手に顔を埋めて悶絶しているキョーコなどなんのその。
「俺は楽しかったけどね。キョーコちゃんは口の中までかわいくって」
などとしれっと述べやがる蓮に向かって
「……へんたい」
と、小さな小さな声で詰るキョーコ。もちろん、地獄耳な恋人の耳に届くと知っていながら。
けれど、受け取るは、片想い期間に天上人やら神様扱いに凹みまくった過去を持つ男なのだ。男として見てもらえないと悩みに悩んだあの頃に比べれば、今さら変態扱いくらいどうってことなしな男。
キョーコの悪態などかわいいだけなのだ。
はいはいと軽く受け流しながら、キョーコの身体泡立てたボディソープでもって洗ってゆく。
生まれたまんまな姿の恋人の、そのすべすべした白く肌に男として良からぬ欲望がちらりと覗くが…………なにせ、相手は酔っ払い。飲酒後の入浴やらで血行が良くなりずきるのも心配だし明日に酔いを残さぬよう水分補給もさせておきたい。自称長所が我慢強いところな男、ちゃんと良い子に待てが出来るのだ。
それでいて、今夜の打ち上げの様子なんかをそれとなくキョーコから聞き出しつつも、男には気を付けなさい。なんたって、俺のキョーコちゃんはこんなにもかわいいのだ、狙ってる馬の骨のひとりやふたりやさんにんや……酒の席なら特にっ!!なお小言をこぼしてたりなんぞもする。
はい!と良いお返事を返しながらも、素うどんな私をそんな目で見るなんて貴方くらいのものですよ?なーんて感情がその顔にありありと浮かべ自分を見上げている迂闊なる愛しいひと。
はぁぁと、心配のため息を深くひとつ。普段ならば、そんな蓮のため息なんかにはダメ息吐かれたっ!っと肩をびくぅっ!!とさせそうなキョーコもアルコールに鈍っているのか楽しそうにくすくすと笑うだけで……。
仕方がなく、次は髪だと、あたたかなシャワー恋人の頭を濡らし、わしゃわしゃと髪を洗い立ててゆく。
頭皮を洗いながらマッサージするような男の大きな手と器用な指さき。そのぬくもりと優しさに、頭を撫でられた猫のように瞼を閉ざし
「至れに尽せりで…………ダメになっちゃいそうですね。」
と、ぽしょりとこぼした。
ごく一般のそれよりは格段に広いとは言え、浴室である。キョーコの落としたその声も湿ったあたたかな空気の中に響く。
「ダメになってくれるの?喜んで、責任は取るけど?」
楽しげに……いや、酷く嬉しそうな期待に満ちた甘く低い声。蓮は愛しいキョーコの頭を引き寄せると上向かせ、まろやかな額にチュッとくちづける。
天下の色男敦賀蓮からのくちづけを贈られた筈の乙女。……なのだが、キョーコはまるでダメになんてなってあげませんと体現するかのように、むぅっと子どもじみたように不満げに唇を尖らせる。
腐れ縁な幼なじみを王子様だと入れ込んで……尽くしに尽くした挙句に捨てられて、重度な恋愛拒絶者にまでなっていたキョーコにしてみればとてもじゃないが笑えないらしい。
蓮としても、同じ演技者としてその才能を生かし芸能界で『自分のかたち』を作り上げ、鮮やかに咲き誇るキョーコを見守り導きたいと思う。けれど、自分以外の誰の目にも触れないように閉じ込めてどろどろに甘やかしてしまいたい……なんてちょっぴりと危険な願望だって確かに有るのだ。
人生を搦めとる責任の取り方をわかりやすくも匂わせたのに、あっさりと無かったように流されてしまった蓮が苦笑を浮かべていると、トンっと軽くキョーコの頭が蓮の胸を叩く。
「私がほんとにダメになったら……困るくせに」
拗ねたような口振り。
アルコールが恋人の口を滑らかにしたのだろう。詰るようなそれは、普段のキョーコからはなかなかに出てや来ない甘えた本音を含んでいるかのようで。
キョーコは囁くように続ける。



「だって、久遠さん。別れるくらいなら貴方を殺して私も死ぬって言われるよりも、別れるくらいなら私を殺してくださいって言われる方が……困っちゃうひとですよね?」



酷く、物騒なそれに、男の心臓はどくりと大きく鼓動する。
だって、そうだろ?幼い頃からの恋を利用され裏切られ、復讐を誓っていたキョーコ。そんなキョーコが自分へと告げてくれたのが殺意を含んだまでの恋なのだ。
それは、強烈なまでの熱烈さで。
ギュッとキョーコを抱き締める腕に力が篭ったかと思えば、肩に頭が乗る。
「…………弱った。」
ぼそりと。低く低く浴室に響く声に、キョーコの細い肩がびくりと跳ねた。
蓮の胸へもたれさせていた身体を竦ませ、うろうろとまるで逃げ道を探すみたいにその視線を泳がせるキョーコ。
一気に酔いが冷めたかのようなその変化の要因は、低く呟かれた声だけで察知したからだろう。




「今夜は……もう死んじゃうって言われても、止めてあげられないと思うから…………覚悟してね?」




彼女が夜の帝王と名付けた獰猛なまでの色香を滲ませた男は、片手で濡れた自分の前髪をかき上げながら愛しい愛しい恋人へと告げたのだった。





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おかしいな?
酔っていちゃべたする蓮キョコが書きたかったはずなのに……
(°_°)?


自分へ向けるにしろ相手に向けるにしろ、どうにもついついと、愛情に殺意を絡めがち。
そんな性癖にてございましょう。←嫌な壁だな
誰が萌えるんだ、これ



殺意高めの告白とか……お好きな同士の方はいませぬか?



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。

 


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