婚約破棄され令嬢キョコさんとブラックドラゴンな蓮くんなお話の続きだったりにございます。
VS松くんな感じ?
猫木のパラレルものにあらはがち絵に描いたような嫌なやつ役どころな松くんを含みまする。
 
 
 
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乙女を腕に抱く竜と対峙したまま黙り込むしかない王族。そして、それを囲むような貴族や官吏と護衛の為の魔導士や騎士たち。
美しく整えられた王城の庭園に落とされるは、酷く重たい沈黙。
輝く王冠を頭上に戴く国王は、ぎりっとさも苛立たしげに唇を噛んだ。
口惜しい。相手が……相手が、竜でさえなけれざっ!!
キョーコが婚約破棄され王城から逃亡を果たしてよりまだひと月も経ってやいない、そんな短な期間ではあれど。
この国は、程思い知るかのようにやっと気付いたのだ。
竜の腕に抱かれた乙女の、その稀有な価値に。
主に、王太子の名代にと誰に気付かれる事もないままに執務をこなしてみせたその政治力や国護りの護石や細々とした魔石に至るまでを満たす魔力。
そして、その労働に対して対価を求めないどころか…………
自分の過失での失態の積は押し付ける癖に成功の対価たる報酬や名声は自らのものだと、一方的に搾取し続けた。
この国の権力の頂点に近しい者ほど強く人の上に立つ王侯貴族という位に驕り高ぶり、いつしかキョーコの献身をただただ奪い取るだけの享楽な日々に浸り切っていた。
今までは王太子の婚約者で貴族令嬢。しかし、罪人となったキョーコを捕らえれば以前よりもずっと……それこそ、奴隷のようにキョーコを使役出来る腹づもりだった。その為の手段さえ危険を犯してまで手に入れたと言うのにっ!
この世界の絶対的超越種たる竜を相手に、ジリッと手をだしあぐねつついたフワの国。
そんな王族たちをしりめに、黒き竜は腕の中の乙女を引き寄せ、その額に鼻先をちょんっと優しく触れさせた。
まるで、くちづけでも贈るかのように。
途端、キョーコと竜を中心に眩いばかりの光が発され、庭園にいる面々はまぶしさに思わず目を閉ざす。
 
 
 
「見ての通り……彼女は、俺の逆鱗を持つ者。」
 
 
 
 
 
ほんの数秒の、閉ざした瞼の裏を焼くような眩い光がやっと治ったと同時に、獰猛なその見た目を裏切るかのような甘さを持つ竜の低音が告げた。
目を開いた者達が見たものは……渦巻くような、凄まじい魔力の渦。
驚くべき事に、その中心にいるはドラゴンではなく、キョーコ。
額に紫がかった黒色の石が埋まっているかのように見えた。ただ、光を浴びた時にだけ鮮やかにあ蒼く色を代えるそれを、竜は自分の逆鱗だと、そう言ったのだった。
竜の逆鱗。竜がその長き長き生涯でただ一枚だけ持つと言う唯一の特別な鱗。
寝物語な御伽噺にて竜の力の源としても語られるその逆鱗を得るとは……それ、すなわち、竜の力を得ると同意。
もとより国でも指折りの強い魔力を持っていたキョーコ。だが、現在の彼女を取り巻くその強さと密度は……もはや、人成らざる力。
後退を許されぬ王や騎士たちまでもが、ずさりと、無意識のうちに逃げを打つかのように後退り、魔力を感じ取るに敏感な魔導士どもに至っては許しを乞うかのように膝をついていた。
ただの小娘と侮り切っていた筈のフワの国の者たち。
しかし、なんの感情も乗らぬような冷たい紅茶彩瞳に見下げられ何ひとつ言葉も出ないまま。いつのまにか背中はぐしょりと嫌な冷たい汗に濡れていた。
さらなる追い討ちかのように……
「竜の逆鱗の持ち主のその意思を曲げて無理矢理に従わせようとするなんて、想像しただけでも腹が立つね。それこそ……国のひとつやふたつくらいはうっかり滅ぼしてしまいそうなくらいには。」
けろりと、まるで明日の天気の話でもするかのようにドラゴンが告げたそれは、この国へキョーコを捕らえ取り戻し服従させるどころか関わるなと、そう言わしめる恐ろしげな脅しを含む最後通告。
冠を頭上に戴く間は首を垂れることなかれ。そう教導された筈のフワの王の頭がじわりじわりと俯いてゆく。
竜を相手に打つ手などなし……諦めるより他なない。
と、この場にいるフワの国の者たちは思った。
ただひとりを除いて。
 
 
 
「キョーコっ、戻ってこい!!」
 
 
 
華々しい社交の場たる舞踏会で衆目の元に冤罪をきせ断罪し、婚約破棄と国外追放を言い渡そうが……
未だ、キョーコは自分の所有物だと疑わぬ男。
キョーコの元婚約者たるフワの国の若き王太子は堂々とキョーコへ命じてみせた。
「っ!ショー、お前なにをっ!?」
「王太子、おやめくださいませ!」
これに顔を青くさせたのは周りにいた王と家臣たち。
竜の意に逆らい対立するなど下手すればこの国ごと危うくなるのだから、それはもう必死に。
けれど……
「父上、あのドラゴンは言ったのは、無理矢理に従わせるな、なのですっ!」
父王へとそう返答を返す王太子の瞳にはありありと欲の色が滲んでいた。
伝説で語られた勇者や大賢者が手にしたとされる竜の逆鱗。竜の力の源であり弱点たるそれを得ると言う事は、竜を従えたと同じ。
竜の力を得たキョーコを取り戻す事が出来れば……それは、もはやこの国どころか、世界さえをも手に入れる事さえ可能となるのだろう。
フワの王とその妻達の間にはショー以外の子も多い。実直で優秀だと言われる異腹の弟もそれなりに。
政務のほぼ9割の地味なところをキョーコへ押し付け、賞賛の結果だけを奪い取っていた王太子。
キョーコが逃亡した事によって王宮内での王太子としての確固たる勢力だった筈のそれがぐらつき追い詰められていた。
そんな王太子は高らかに声を上げてみせる。
「キョーコ、婚約破棄はなしにしてやる!戻ってこい。」
傲慢に。キョーコが自分の命に従う事など当たり前なのだとでも言わんがばかりの尊大な素振りで。
それがはりぼての自信だとしても、自らをほんの少しも疑わぬそれはときとして奇妙なカリスマ性をも孕むのだろうか……
「そ、そうだ!婚約破棄を取り消し、王太子の側妃……いや、正妃として迎えよう!!」
「そうよ、帰って来なさい!そんなドラゴンなどよりも血の繋がった私たちのもとへっ!」
竜を前に萎縮していた王や家臣をかき分けるように前へ躍り出たキョーコの父や母たちが、竜の逆鱗という途方もない価値を得たキョーコへと欲にギラつかせた目と声で語り手を伸ばす。
それをかわきりに
「ま……前からキョーコ様は未来の国母に相応しいと思ってましたわ!」
「どうぞ、お戻りをっ!!」
手のひらを返したようにキョーコを持ち上げる褒めそやす面々。
喜んで頷き、唯々諾々とフワへの帰属を受け入れるに違いない。と、そう思っていたのだろう。
返答を返すどころか、ぴくりともその表情を変えもしないままでいるキョーコに声を上げた者たちは焦りを浮かべ出し、王太子に至っては苛立ちが隠せておらず今にも怒鳴り散らしそうだ。
そんなフワの面々などには気にも掛けず、ただ腕の中のキョーコへと視線を向けたままのドラゴンが再び口を開く。
 
 
 
「好きにするといいよ?何処から手に入れたのかは知らないけど、逆鱗で俺と繋がる君には禁呪も隷属の首輪も意味がないから。この国全てを焼き払い焦土にして滅ぼすなりなんなり、君の好きなように。」
 
 
 
キョーコを虐げていた者たちが裏で手を回し切り札として手にしたそれをあっさりと指摘したそんな暗さやらこの国の存亡までをも左右するようや恐ろしげな内容を、面白がるかなように酷くにんやりと悪辣なまでに楽しげに。
そんなドラゴンの言葉に王太子を含む王族の一部がぎくりと肩を揺らし顔を青ざめさせ、騎士や魔導士は恐怖に剣や杖を落とし、貴族たちは悲鳴をガクガクと身体を震わせる。
竜とキョーコを前に、王を護り対抗しようとする者などひとりとしていなくて。
 
 
 
 
 
 
 
恐慌状態でパニックに陥ったフワの王侯貴族たちへ、ちらりと一瞥をくれてやった竜の乙女。
やがて、張り付けていたかのような柔らかな淑女の微笑を歪ませた。
 
 
 
 
 
にこりとさも楽しげに。地味だなんて言われた令嬢だったとは思えぬ程に人の目を惹きつけるような美しさで。
けれど背中の薄ら寒くなるような……
虫の羽や足をもぎる子どものような無邪気な残酷さを孕んだ微笑みへと。
 
 
 
 
 
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元婚約者との対決!!な感じですけど、ずっーと蓮さんはドラゴン姿でキョコさんをちょこんと抱っこしたまんまでっす!
ァ,、'`( ꒪Д꒪),、'`'`,、
 
 
逆鱗にてチート持ちキャラとなったキョコさん。因みに、お持ち帰りでのちゅーにて渡された設定ですが、別にキスの必要性はありません☆
ただただドラゴン蓮さんの暴走だったりですのよ?
 
 
 
次回→ざまぁ?ってやつになるのかしら?
予定は未定なのーぷらんな上に遅々とした進みでごめんなさい!!
_:(´ཀ`」 ∠):
 
 
 
↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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