「だからそれを掻き出してたのになんでまた中に出すのっ?!」
「えへっ」
「えへっじゃなぁーいっ!」
一応怒った振りをしたけど、なんだか楽しかった
懐かしい想いがあって、新たに構築されていく想いがある
以前は怖いと感じていた変化を、今は純粋に嬉しく思えていた
「恋だったのかぁ」
お互いの身体を拭きあって、部屋に戻った
「ずっと憧れてたんだけどね?憧れてたことも忘れてた、自分でもびっくりしちゃった」
「念願叶った今はどんなかんじ?」
「うーん…」
「実感ない?」
「それはある、全身で思い切り実感させられた直後だし」
「んふふっ」
「でも、こんなもんか、ってかんじかなぁ」
「…こんなもん?俺との恋は想像以下ってこと?!」
「違うよー、憧れてた恋は全体が曖昧でさ、それこそ桃源郷みたいに幻っぽい感じだったんだよね」
「幻…」
「でも今はこうしてベッドで裸で寝転がってさ、手なんか繋いじゃってるじゃん?」
「うん、繋いでる、俺は幻じゃない、もう離さない」
「ふふっ それだと思うよ、こんなもんな感じは」
「お前の言葉は時々意味が分からないんだよなぁ…」
「ふふふ~」
分からなくていいんだよ
だって、自分でもよく分かってないんだもん
でも一つだけ自信を持って言えることがあるよ
「あ~、恋っていいな~」
「よし、今度は何を言ってるのか分かった」
「幸せかも~」
「それも分かった」
「あなたは…幸せですか?」
「当たり前だろっ」
「ふふっ」
「んふふ」
これからも辛いことはあると思う
また地下に籠りたくなることもあると思う
でも、飛び方を忘れなければ、飛ぶ勇気を持っていれば、きっと大丈夫
「そーいえば、さっきこの部屋入る時に新しいイメージが見えたんだよね」
「イメージって?」
「こう…なんて言うかな、繊細なんだけどカラフルなお前がパーッと浮かんできた」
「もしかして、絵の?」
「うん、今後も続けて描いてみよっかな」
「いいじゃん!見たぁーい!」
「完成したら持ってくるよ」
「うんっ」
この人はいつでも自分の力で飛べてしまうから
俺も負けないように頑張ろう!
「少し寝るか?」
「いっぱい寝る、朝まで一緒に寝よ?」
「お前さ、かわいさが急激に増してんぞ?」
「そう?」
「だから寝る前にもう一発だけ…」
「はぁ?!バカなのっ?!」
「恋ってやつをもっと堪能しよう」
「もう充分堪能してるからっ」
「完成した絵を見たいんだろ?さっき見えたイメージをより明確に頭に刻んでおかないと」
「待って…ほんとにもう出ないからね?!」
「大丈夫、大丈夫~」
「だめぇー!むりーっ!」
「ここもここも俺と一緒に恋をいっぱい堪能しましょーねー」
「あっ…ばかっ…触るなって…ぁん…はぁん…んっ」
思っていた通り、憧れていた恋は幻だった
だって現実の恋は…
「ぁあっ」
「ぅうっ」
すっごく疲れるっ!
終わり