NHKの良心 山﨑登 解説委員 | ふるさとを守りたい、子供達の未来を守りたい

ふるさとを守りたい、子供達の未来を守りたい

日々頭に浮かんだことを語りたいと思います。

東日本大震災で津波が堤防を越えて大きな被害が出たことなどから、最近、避難や訓練などのソフト面の防災に重きをおき、堤防整備などのハード面の防災を軽視する風潮があり、昨年放送されたNHKスペシャル「巨大災害 第2集「大避難~命をつなぐシナリオ」」、「巨大災害 MEGA DISASTER Ⅱ 日本に迫る脅威 第1集 極端化する気象 ~海と大気の大変動」や、今年の3月12日付愛媛新聞の大震災5年社説「南海トラフへの備え 記憶風化させず防災意識高めよ」など、防災関連のテレビ番組や新聞記事はハード対策の重要性に十分に触れられていないものが目立ちますが、ハード対策の軽視は災害に対する脆弱化につながるものであり、私はこのような現状に強い危機感を持っています。


「あの震災の教訓を無視し、国民を危険にさらす愛媛新聞」http://s.ameblo.jp/nyako-0924/entry-12138448684.html


「震災から5年 3.11の教訓」
http://s.ameblo.jp/nyako-0924/entry-12137367640.html


NHKスペシャル「巨大災害 第2集「大避難~命をつなぐシナリオ」」http://s.ameblo.jp/nyako-0924/entry-12070288186.html


NHKスペシャル巨大災害 MEGA DISASTER Ⅱhttp://s.ameblo.jp/nyako-0924/entry-12069893672.html


そもそも、東日本大震災でハード対策が一切役に立たなかったというのは正確ではありません。独立行政法人港湾空港技術研究所が釜石港に津波防波堤が無かった場合の想定と、東日本大震災の津波のデータを比較した結果、津波の到達を6分遅らせ、津波高を無かった場合の13.7mから8.0mに4割低くしたり、最大遡上高を無かった場合の20.2mから10.0mに5割下げるなどの効果があったことが判明しています。また、岩手県普代村では、防潮堤と水門のおかげで堤防の内側の津波による人的、物的被害がゼロになったという事実もあります。それから、岩手県の三陸縦貫自動車道 釜石山田道路の釜石両石インター、釜石北インター間は震災6日前の2011年3月5日に開通し、津波で寸断された国道45号線の代替路となり、鵜住居小学校や釜石東中学校の児童生徒がここを歩いて避難施設にたどり着けたほか、物資の輸送などの被災後の救援活動にも大きな役割を果たしました。また、仙台市沿岸部を南北に走る仙台東部道路は道路の盛土部分が住民の避難場所となり、200人を超える人々を救い、さらに、堤防の代わりとなり、道路より内陸側の浸水を食い止めました。東日本大震災の際、ハード対策によって多くの命が救われたのも事実なのです。


もちろん、避難や訓練などのソフト対策はとても大事だと思いますが、ハード対策を疎かにしては、災害から命を守ることはできません。例えば、津波から避難する際に道路が建物や電柱の倒壊、液状化などによって通行不能になった場合や、避難に適した高台や高層の建物が無く、逃げる時間をかせぐ防潮堤も十分に整備されてない場合、どんなにソフト対策に力を入れても避難は物理的に不可能です。避難計画の策定や訓練などのソフト対策と同時並行で、建築物の耐震化、電線地中化、液状化対策工事、避難ビル建設、防潮堤整備などのハード対策を進めるなど、災害から命を守るにはハードとソフトの防災対策を車の両輪のように同時に進める必要があるのです。


以上のような私の言いたかったことを、6月8日放送のNHKの「時論公論」で山﨑登解説委員が解説してくれていたので紹介しておきたいと思います。


「新型堤防が目指す津波防災」(時論公論)

http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/sp/100/246595.html

2016年06月08日 (水)  
山﨑 登  解説委員

東日本大震災の経験を踏まえて、今年の夏から静岡県の駿河海岸で、全国で初めて、今ある堤防を大津波がきても壊れにくい「粘り強い構造」に補強する工事が始まります。津波防災にとって最も重要なことは素早い避難ですが、粘り強い堤防は、東日本大震災で堤防が簡単に壊れたことから考え出された新型の堤防で、住民の避難を助ける堤防だといいます。今晩は新型堤防が目指す津波防災について考えます。
 

今日の話しのポイントです。1つは、東日本大震災で堤防はどのように壊れ、大津波でも壊れにくい「粘り強い堤防」とはどのようなものなのか、2つ目は、その堤防は津波を防ぐだけでなく住民の避難を助けることを目指します。そして3つ目は、堤防などの施設で守るハード対策には限界があることを住民に説明するとともに、避難を助ける新たなハード対策の提言をすることが、国土交通省や土木関係者の役割ではないかということです。

《ポイント① 粘り強い堤防とは》
 まず粘り強い構造の新型堤防とは、いったいどのような堤防なのでしょうか。
それを知るためには、東日本大震災で多くの堤防がどのように壊れたかを知ることが参考になります。当時、仙台平野に造られていた高さ6メートルの堤防には、堤防の高さの2倍以上の13メートルの津波が襲いかかりました。
 

国土技術政策総合研究所が25分の1の縮尺で模型を作って実験しました。すると堤防を乗り越えた津波が陸側の根元の土を掘ることで、陸側の壁やてっぺんを保護していたコンクリートが崩れたことがわかりました。わずか1分ほどのことでした。
 

堤防が簡単に壊れたのには理由があります。従来の堤防は明治三陸津波やチリ地震津波など、過去に襲ってきた津波を想定し、それを抑え込むことを目標としてきました。したがって波の一部が水しぶきのようになって堤防を越えることはあっても、大量の津波が陸側に流れ込んでくることを想定していませんでした。つまり堤防の補強は海側に重点が置かれ、陸側はほとんど考慮されていなかったのです。
しかし多くの住民は大津波が襲ってきても、堤防の高さを超える津波だけが襲ってきて、一定の時間は持ちこたえて守ってくれると感じていました。
そこで考え出されたのが粘り強い堤防です。補強は主に3ヶ所です。
 

1つは陸側の根元が掘られないようにするため、地盤を改良してコンクリートで覆います。
 

2つめは陸側の壁を厚くして崩れにくくします。


3つ目はてっぺんの部分を補強します。工事にかかる費用は従来よりも13%ほど高くなりますが、堤防が全壊する危険性を減らし、壊れるまでの時間を長くすることを目指します。

《ポイント② 粘り強い堤防に期待される効果》
2つめのポイントは、粘り強い堤防は住民の避難を助けることを目指すことです。(実験映像)先ほどの国土技術政策総合研究所が、新型堤防がどのくらい持ちこたえられるかを実験しました。津波の高さや継続時間などによってバラツキがありましたが、おおむね3分くらいは持ちこたえることができました。従来の堤防に比べると、2分長く持ちこたえました。
この2分には防災上大きな意味があります。ウェーザーニューズと東北大学、それに京都大学が、東日本大震災で津波の被害にあった5000人余りについて、地震発生から何分後に避難したかを分析しました。すると生存者は平均で19分で避難を始め、亡くなった人の平均は21分でした。
 

生と死がわずか2分の差で分かれたのです。したがって堤防が1分でも長く持ちこたえることができれば、その分だけ住民が避難する時間を稼ぎ、被害を減らすことにつながります。
しかも東日本大震災で襲ってきたのは1000年に1度といわれる巨大津波です。もっと低い津波であれば、堤防はもっと長く持ちこたえられる可能性があります。
さらに浸水の被害を減らす効果も期待できます。東日本大震災で仙台平野ではおよそ1万6000㌶が浸水し、水深は深いところで2メートル以上に達しました。しかし堤防の決壊が3分持ちこたえられれば、2メートル以上浸水する面積は9%減少し、5分ならば22%減らせるといいます。
 

こうした新型堤防は、今、東日本大震災の被災地で建設されていて、今年の3月には仙台平野のおよそ26キロが完成しました。しかし東日本大震災の被災地以外で、この考え方に基づいて、今ある堤防を補強するのは静岡県の駿河海岸が初めてです。
 

静岡県の焼津市、吉田町、牧之原市にまたがる長さおよそ12キロの堤防を補強します。この海岸には南海トラフの巨大地震で、地震発生からわずか数分で1メートルを超える津波が襲ってくる恐れがあるからです。工事はこの夏から始まる予定です。

《ポイント③ 国土交通省や土木関係者が果たすべき役割》
 3つめは国土交通省や土木関係者が津波防災に果たす役割についてです。東日本大震災の後、国は科学的に考えられる最大の津波を想定して防災対策を進めています。そのために津波の高さにレベルをつけました。
 

過去繰り返し襲ってきた津波の高さは「レベル1」で、堤防などハードの施設で防ぐことを目指します。しかし東日本大震災のような最大規模の津波は「レベル2」で、こちらは堤防の限界を超えるとして、避難を中心としたソフトの対策を進めていく方針です。
 東日本大震災が津波防災に教えた最大の教訓は、早めの避難が最も重要だということでした。従来の考え方では、堤防などの施設で津波を抑え込むハード対策が中心で、避難などソフトの対策は補完的な役割として位置づけられました。このため国土交通省や土木関係者は堤防を造る際に、それを超える津波が襲ってくる可能性があることを、住民にきちんと説明してこなかったきらいがあります。相手は自然ですから、いかに高い堤防が整備されても、それを超える津波が来る恐れがあって、避難が最も重要だということを自治体や地域の住民と確認し続ける必要があります。
それとともに避難を助けるハードの整備についても研究を進めて欲しいと思います。南海トラフの巨大地震の被害想定で、高さ30mもの津波が襲ってくる可能性があると想定された町で、これほど高い津波が来るのなら逃げても仕方がないと避難を諦める住民がでかねない状況を作りました。また高齢化や過疎化の進展で避難に時間がかかる地区は少なくありません。
ところが避難の時間を稼いだり、効率的な避難を進めるためのハードの整備方法についての提案は、これまであまりありませんでした。今回取り組みが始まった粘り強い堤防はその先駆けともいえるものです。費用をできるだけ抑える工事方法や今後は避難に役立つ道路や避難施設のあり方などについても研究や検討を進めて欲しいと思います。


《まとめ》
改めて言うまでもなく、津波の防災対策はハードとソフトの2つ対策を車の両輪のように進めることが重要です。東日本大震災では、ハード対策に頼りすぎた津波防災のもろさが明らかになりました。今後の津波のハード対策は住民にその役割がきちんと理解され、住民の避難を助けるという視点をもつ必要があります。
国土交通省と土木関係者は東日本大震災の被災地に新たに造る堤防だけでなく、南海トラフの巨大地震の被害が心配される東海から西日本の地域でも、堤防を粘り強い構造に補強するなどの対策を急ぎ、住民の避難を後押ししていく必要があると思います。

 引用終わり


この考えがNHKの今後の番組作りに十分にいかされるよう、何らかのかたちで山﨑登解説委員を応援したいと思いました。進撃・ブルーオーシャン界隈でも何かできないものでしょうか。



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