「精子と卵子の値段」のジョーク | 裸のニューヨーク

裸のニューヨーク

ユー・ドント・ノウ・ニューヨーク・ザ・ウェイ・アイ・ドゥ...これは私のアンビバレントでパーソナルなニューヨーク・ストーリー。

セシール
お笑い関係者などが言う「客いじり」とは観客をダシにして即興で行なう話芸の事らしい。その昔、新宿の末広亭に林家三平さんを見に母と行った時には私のかぶっていた帽子がよほど目立ったらしく、三平さんはチラチラ眺めていて、何かからかわれたのだが残念ながらもう覚えていない。

ニューヨークのコメディクラブに行っても「客いじり」はある。いじられると大変困る。受け答えが難しいからだ。アメリカ人の客なら予定調和的な答えを知っているのだろうが、外国人の私にはわからない。以前ユダヤ人のコメディアンにどこから来たのかと聞かれ、日本だと答えると「I Hate Japanese(日本人は嫌いだ)」ときたのでぎくっとした。が、落ちは「第二次大戦でボクの父親を殺してくれなかったから」。ユダヤ人の父と息子の間にはどうも確執があるらしいのだが、これも私にはわからない。なんともどぎついジョークで、曖昧に笑ってごまかした。

昨年も、タイムズスクエアのコメディクラブのステージの真横の席に通され、(これではいじられる、困ったな)と思ったがままよ、と座ったら、やっぱり来た。

「どこの出身?」

日本と答えるのは芸がない。

「Take a guess.(当ててみて)」

コメディアン氏、うーん、悩むね、というので日本人よ、と助け舟を出した。すると今度は「何してるの?」と食いついて来た。「ライターよ」と言うと、「どんなトピックを書いているのか」と追求の手を緩めてくれない。仕方がないから数年前に卵子提供者を取材したと答えた。すると、ワーオ、と大仰に驚くので調子に乗って、「卵子1個が5000ドルなのよ」と言うとまたしてもワーオ。いいネタを振られた彼は、「女はいいよな、卵子1個が5000ドル、俺ら男は精子を売ったっていいとこ20ドル」と言うと場内がドッと湧いた。

精子は1回の射精で数億個が放出されるが、卵子は1回に1個しか作れない。また、卵子は精子と違って気軽には買えない。5000ドルと高いし、買ったとしても受精卵を女性の体内で育てない事には子供は生まれない。その時に代理母が必要になると謝礼は数百万単位である。「男性がいなきゃ子供は産めない」とムキになる男性が多いが、そうこうしているうちに、2004年には東京農業大の河野授らが精子を使わず卵子だけで世界初となるマウスを誕生させたというニュースが報道された。ただちに人間に応用できる訳ではないが、男性なし、精子なしで子供が産めるという時代が到来しないとも限らない。

少子化が叫ばれて久しいが、子供が増えるには、女性1人と男性10人の場合と女性10人と男性1人の場合では単純に考えてどちらが子供が増えるかは明らか。生殖に関しては女性優位という考え方もできる訳で、だから女性を大事にしない国は繁栄しないと私は常々思っている。