連載小説 ブリュッセル | suzyのふしぎの国

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「あら?ジャポネ」の著者スージーが 短編小説を連載します。

ブリュッセルの泥棒市 No3


蚤の市の広場は 普段は駐車場になっていたり、まったくの空いたスペースの場合もある。

週末だけ 様々な屋台が所狭しと並ぶのだが 

ブリュッセルのそれは 広大で 路面電車2駅分はゆうにあり、迷子になりそうなほどである。


食器や家庭用品を売っている店に混じって アフリカ系の移民の屋台もある。



「あれ~? あそこに居る 小さい女 あれってスージーじゃないのか?」

コウスケが マサの皮ジャンをひっぱって 民芸品の屋台の方を見ていた。

「ほんとだ! スージーだ!」

マサは 嬉しそうに 眼をクルリと見開いて そちらの方にドンドン歩いた。

今さっき 買ったばかりの マイケル・ジャケットを 見せびらかすように さっそうと歩いて行く。

「おい、おい、 マサ 何処に行くんだよ!」

勇太郎が 後ろから吠えた。




「う~ん、もう少し 安くしてよ。 2つ買うから。。」

スージーは アフリカ製の 木彫りの動物を見ている。 

像とキリンを買うつもりらしい。

「じゃあ 像が120でキリンが150 合わせて270」

チリチリの髪を 縄のように幾本にも編んだ店員が スージーの相手をしている。

「ええ~? キリンも120にしてよー。 2つで240!」

スージーは ぜんぜん負けてない。

「ダメダメ このキリンの方が 彫が精密なんだ キリンは140」

アフリカ系の店員は 真っ黒で大きな身体を ゆすりながら 今にもレゲエでも歌いそうな雰囲気がある。

「でもお~ 私 あんまり お金もってないのお~」

スージーは 可愛くブリッコして ちょっとうつむいて 

真っすぐに店員を見つめ 悲しそうな表情を作った。

それを見た レゲエ兄ちゃんは スージーの可愛さに ちょっと参った と言う表情をした。

「わかった。わかったよ! もう しょうがないなあ! じゃあ 2つで250」

うふっふふ と勝ち誇ったように スージーは笑みを浮かべて 財布から金を出す。




「あの女 おまえらの 知り合いか? なかなか やるじゃない。。」

マサの後ろからついて来た勇太郎は その様子を見て感心して言った。

「ただ者じゃないなあ。。」

「ええ こないだ ディスコで知り合ったんです」

すかさず コウスケが言った。




「やあ スージー! こんな所で 何してるの?」

木彫りの象とキリンを 大切そうに持ったスージーは マサを見るなり いきなり 笑った。

「キャー ハハハ マッサー なに そのジャケット。。。。マイケルじゃあるまいし。。」

ところが マサは スージーに けなされているとは 分からないらしい

「えへへ いいだろ この皮ジャン! マイケルみたいだろ。。。」

スージーは さっきより もっと お腹をかかえて 笑い続けている。

「ヒャアー ハハハ  いやだああ~ アハハハ」

マサも一緒に てれ笑い しながら 得意になって ムーンウォークをしてみせた。




「おい コウスケ。 あいつら どういう仲なんだ?」

勇太郎は 頭を傾げて わからん という顔をした。

「へえ マサさんは スージーが好きみたいですよ」

コウスケが答えた。

「でもよ~ あの女 完全に マサを 笑ってるよなあ」

勇太郎とコウスケは お互いの顔を見合わせて 

困ったヤツだねえ とヨーロッパ人の真似をして 首を横に振った。




つづく