安部公房原作・勅使河原宏監督の「おとし穴」を観ました。

井川比佐志さんが主演のATG(にほんアート・シアター・ギルド)上映作品です。

安部公房らしく、シュールさいっぱい不条理だらけの物語に、武満徹の音楽はより一層不気味な世界を創っていました。


炭鉱が衰退していく中、主人公の炭鉱夫A(井川さん)は突然謎の男X(田中邦衛さん)に殺されます。

この田中邦衛さんが黒板五郎とは懸け離れた底知れぬ気色悪い雰囲気・・・。

井川さんは❝自分は何故殺されたのか?❞と理由が知りたくて、幽霊になってさまよいます。

炭鉱住宅からも次々と炭鉱夫たちは移住や夜逃げなどして、集落はゴーストタウンとなっていたはずなのに、井川さんが幽霊になってみると集落には崩落事故で死んだ幽霊などもいて賑わっています。

生と死で世界が反転しているのは安部公房らしいですねー。

そうこうするうちにもうひとつ手掛かりになるようなエピソードが出てきました。

それは企業と組合&組合同士のいざこざでした。

もう少しで謎が解けそうなのに結局最後まで真相はまったく明らかになりません。

予想するとしても❝何か大きなチカラ❞を持つ組織に雇われた殺し屋なのでしょうが、それが企業なのか地元の反社会的勢力なのか・・・。


この作品は実際に福岡県の三菱鯰田鉱業所で撮影されたのだそうで、本物の炭住やボタ山や炭鉱専用線路が映されており、鉱山施設や専用線萌えの私にとっては、その映像だけでもキュン死モノでした。

この頃は鉱山保安法がまだ厳しくなかったんでしょうね。羨ましすぎる・・・!

井川さんの息子役は、本物の炭鉱夫さんのお子さんだそうで、エキストラも炭鉱夫さんらが大勢出演してくれたようです。

原作者の阿部公房も死体収容人役、音楽担当の武満徹もバスの運転手役でカメオ出演しています。(武満徹は見つけられませんでした)

 

 

 

 

 

 

 

 


昔の写真ですが、坑道前にて流れ星

撮影:H.Fujihara氏