室生犀星の最晩年の作品である「蜜のあわれ」の映画化を知った時はとても驚きました。

擬人化されているとはいえヒロインは❝金魚❞ですし、一体どんな世界に!?とドキドキしながら映画「蜜のあわれ」を鑑賞しました。

主演の金魚(赤井赤子)は実力派女優の二階堂ふみさん、老作家の役は大杉連さんです。

時系列は時々前後するのですが、ほぼ原作通りで素晴らしい世界が出来上がっていました。

二階堂ふみさんが本当に人間ではない者のような、金魚の化身に見えてくるから不思議です。

金魚の衣装も秀逸でしたし、二階堂さんの立ち居振る舞いや表情が無邪気な少女っぽさ溢れているのにコケティッシュ、原作の金魚以上に魅力的でした。

大杉さん演じる❝おじさま❞の情けなさや哀れさも可愛らしく感じました。

原作にはありませんが、室生犀星の大親友だった芥川龍之介役を高良健吾さんが演じていて、これはもう心を射抜かれるほどハマリ役で驚きました。

芥川のお孫さんも大絶賛されたそうです。

映像化は難しいのでは?と思ったものの、室生犀星は既に文学と映画の親和性を感じており、「蜜のあわれ」は映画「赤い風船」のような美しく印象的な映画を創る気持ちで執筆されたようで、書き終えたあとの気持ちとしても、

 

私は愛すべき映画「蜜のあわれ」の監督をいま終えたばかりなのである。

 

と述べていますので、このような妖美な世界が映画作品となって、室生犀星が観たら❝我が意を得たり!❞と大喜びな気がします。