2件目の工房でも2時間ほど滞在し実のある話がたくさん聞けた。
「なんか。こんな素敵なグラスたちがテーブルに乗るって思うだけで情景が浮かびます。あー、楽しみ・・」
真緒は工房を出て思わずほうっと息をついた。
すると初音はコートのポケットから小さな袋を取り出し黙って真緒に差し出した。
「え?」
「さっき。売店の方に売ってたんで。」
少し照れたように笑った。
「?」
それを開けてみると。
かわいい星モチーフのガラスのピアスだった。
「え・・これを?あたしに?」
驚いて彼を見ると
「・・そんな高くないです。かわいかったので、」
そのまま少し早く歩き始めた。
真緒は驚きと嬉しさでそのまま固まってしまった。
彼女が後ろからついてこなかったので
「・・いつも天音がお世話になっているし、たいしたものじゃないですから。」
視線を外しながら少し大きな声でそう言った。
「あっ・・っと。 あの! ありがとうございました。 嬉しいです、」
真緒は慌てて彼に駆け寄った。
「いつも会うたびにピアスが違っていたので。お好きなのかなあと。いや、ダイヤやルビーの宝石ではないので。オモチャみたいなものですけど・・」
そんな風に言う彼に
「・・価値は。あたしが決めるので。」
真緒はふふっと笑った。
本当に本当に嬉しかった。
陽が沈みそうになって空が赤紫色に変わる。
「・・北極星、ですね。」
初音は遠くの空を指さした。
「え?」
高い建物がないので低い位置の星もよく見えた。
「あちらが北ってことになりますね。小樽はあっち方面なんですね、」
チラチラと瞬く星が
揺れるピアスの星みたいで。
「ちょっと先に資料を纏めたいので。もしお腹が空いていたら先にどうぞ、」
ホテルについて初音は荷物を転がしながら真緒に言った。
「あっ・・と。そんなにまだお腹空いてないです。あたしも撮った写真を整理しますから。先に高原さんに送らなくちゃいけないものもあるので・・」
ひとりで食事なんかしたくない。
彼と一緒に今日のことなんかを楽しく話したりしたい・・
とっさにそう思った。
「わかりました。そうですね・・1時間くらいで終われると思うので。また連絡をします。」
初音は時計を見た。
「え、1時間?」
「もうちょっと早く終われるかもしれませんけどー。」
「いや。仕事。早すぎません?て意味・・」
今日の工房2件分のやりとりはボイスメモしていたけれど1件2時間ほどあったので真緒は驚いた。
「食事をしてしまうとやる気が起きないので。先にやっておこうと思ってるだけです。」
いつものように何でもないように爽やかな笑顔の彼にまた胸がきゅんとなった・・
初音からの思わぬプレゼントに真緒はもう嬉しさを隠しきれず・・
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