空腹感には本物とにせものがあって、本物の空腹感を見分けることができれば、にせものの空腹感もわかるようになってきます。
しかし、そのためには自分の感覚に頼らなければいけないのですが、その感覚というものが頼りにならないことも少なくないわけです。
感覚はけっこういい加減ということについて、きっとあなたも経験したことがある現象を紹介します。
休みの日にぐっすりと睡眠をとってから起きたところ、なんだか体がずっしりと重くて、普段よりもだるく感じるという経験はありませんか?
長く眠ると、かえって睡眠リズムが狂ってしんどく感じるのだと言われることも多いですが、これは、感覚が正常に戻って、隠されていた疲労の蓄積を感じることができるようになったということであるということが、最新の疲労研究からわかるようになってきました。
ここで大切なのは、「疲労」と「疲労感」は別であるということです。
実際の疲労は深刻な状況であっても、やりがいや達成感を強く感じていると、疲労感はあまり感じなくなるのです。
この現象を、「疲労感がマスクされる(覆い隠される)。」と言います。
疲れたという感覚と、実際の疲労度が大きく異なることも多いというわけです。
感覚って意外とあてにならないこともあるということは、わかってもらえたでしょうか?
そして、「なんとしてもやりとげるぞ」という気持ちが強いと、疲労感と実際の疲労度の差はどんどん大きくなっていってしまいます。
「ダイエットしたい」、「やせたい」という気持ちは、恐ろしいほど強いと思いませんか?
これだけ強い気持ちを持ち続けていると、本当の疲労は深刻なほど蓄積していても、疲労感なんて吹っ飛んでしまうかもしれません。
きっと、そうなっている人は多いと思います。
そして、いろいろな感覚がマスクされてしまっている可能性は高いと思われます。
だから、自分の体からの信号がよくわからなくなってしまっていると思うのです。
「おなかがすいたよー、しっかり食べてくれー」
「疲れて苦しいよー、睡眠をしっかり取って休んでくれー」
「体がガチガチにこっていて、苦しいよー」
「イライラ、イライライライラ」
「くやしいよー、くやしくてつらいよー」
「さびしいよー、さびしくてつらいよー」
「こわいよー、こわくてつらいよー」
「やたらとおいしいよー、おなかはすいてないけどもっと食べたいよー」
こういういろいろな不快感の信号が体や頭から発せられて、そして、わけがわからなくなって、得体の知れない巨大な不快感となってしまっているのです。
脳も完全に興奮状態になってしまっています。
そして、わけがわからないので、その得体の知れない強力な不快感を、猛烈な空腹感と感じてしまっているのです。
また、そのわけのわからない強力な不快感から逃れるためには、食べることくらいしか思いつかないのです。
不快な状態から逃れるために、最も簡単な快を得る手段は、食べるということだからです。
1年半ほど前に、NHKの「解体新ショー」という番組で、「ダイエットとストレスの関係」というテーマの回がありました。
そのときに紹介されていた京都大学の井上和生准教授の研究室で行われていた実験の映像は、悲しいものがありました。
マウスのしっぽをピンセットでつまんでストレスを与えると、突然、えさを猛烈な勢いで食べ始めるのです。
飢えで苦しみ続けてきた生物の歴史において、生き残るためにはエネルギーこそが最も重要な要素になるのです。
そのため、ストレスがかかった時には、すぐさま食べてエネルギーを補給しようとする反応が起きるのです。
「ストレスを感じる=何か食べなければいけない」という反射が起きてしまうというのは、生物の定めなのです。
ピンセットでしっぽをつままれているのが苦しいのですから、食べたところで、本当の意味で苦しさから逃れられるわけではありません。でも、本人(マウスですけど)は興奮状態で、必死になって、苦しさから逃れようとしているのです。
ここで、何よりも大切なのは、ストレスの原因を知ることですよね。
マウスのように悲しいことになってしまっていませんか?
まず、自分の体から発せられている信号(体の声とも言いますね。)をしっかりと感じて、何を訴えようとしているのかを理解するようにしてください。
ごっちゃごちゃになって、からまりまくった糸をほぐしてほしいわけです。
いろいろな不快感で一体になってしまっているのを、原因別にわけていけば、対応が可能になってきます。
そして、それぞれの原因別に対応していきましょうということです。
長くなったので、にせものの空腹感の簡単な弱め方の説明は、次に回しますね。