前回は、飢餓スイッチとダイエットの関係でした。
http://ameblo.jp/pink-diet/entry-10587565598.html


生き物の体はとても賢くできているので、体に飢餓感を感じさせるような苦しいダイエットをしてしまうと、飢餓スイッチが入ってしまい、やせにくく太りやすい状態になってしまいます。
栄養が足りているかどうかを体は常にチェックしているので、しっかりと栄養をとってくださいねという話でした。



今回は、その続きなのですが、かなり怖い話です。
「栄養不足だと飢餓スイッチが入ってしまってやせにくくなってしまう」というようなレベルの話ではありません。


ダイエットって本当はとっても怖いのだということを知っておいてもらいたいと思っています。



やせてきれいになりたいなあという軽い気持ちでダイエットを始める人が多いと思います。


しかし、ダイエットというものが、実は取り返しがつかないかもしれないくらいに恐ろしいものであるということが、最先端の医学、生物学によって明らかになってきているのです。



今からおよそ20年ほど前に、イギリスのサウサンプトン大学のデイビッド・バーカー教授は、イギリスやフィンランドにおける出生時体重の記録などを元に、成人病(生活習慣病)の原因は胎児期に作られるという「成人病胎児期発症説」というものを発表しました。


当初、この説はあまりにも突飛すぎるため、それほど真剣には受け取られませんでした。


遺伝的な変異や進化は、偶然的な要素が強いというのが一般的な考えだったからです。


遺伝的な変異や進化は、偶然的に突然変異が生じて、その変異が生存にとって適していれば広がっていって進化となって残って、適していなければ淘汰されていくというように考えられていました。



環境がちょっと変わったからといって、いきなり遺伝子レベルでそんな劇的な変化が生じるなど、信じがたいことだったのです。



しかし、病気のデータや動物実験など、その説を裏付けるものが次々にあらわれ、現在では21世紀最大の医学学説と言われるほどの説となりました。



具体的に「成人病胎児期発症説」とは、どういうものかというと、出生時の体重が軽いと、成人になってから心臓病・糖尿病・高血圧などの成人病(生活習慣病)にかかる割合が劇的に高くなるというものです。


妊娠中(特に妊娠初期)に母親の栄養摂取量が少なければ、その飢餓状態に耐えられるように体内に脂肪を蓄積しやすい体質がプログラムされてしまいます。そして、飽食の世界の環境において、飢餓に備えて作られた体質が、肥満や成人病を生み出す原因となってしまうのです。


もっと簡単に言うと、「成人病の原因は、母親の子宮内ですでに作られてしまっているのだ。」というものです叫び




第二次世界大戦中の1944年のオランダにおいて、「飢餓の冬」とよばれるほどの食糧不足の時代を胎児期ですごした人たちは、極端に高い割合で、成人病を発症しています。



かつての栄養環境が悪かった発展途上国でもそういう例がたくさん見られます。インドでは、糖尿病患者の数が激増していて、すでに2000万人を超え、2035年には6000万人を超えるだろうと予測されています。



栄養状態が悪い中で胎児期をすごして生まれて来た子供は、飢餓の環境に適応した状態で生まれてきたにもかかわらず、突然、栄養過多の環境にさらされて、その環境に適応できずに、成人病を発症してしまうことになるのです。




なぜ、このようなことが生じるのかについてですが、ミツバチの例で考えるとわかりやすいと思いますコスモスハチ


女王蜂とメスの働き蜂はDNAの遺伝情報には差がないにもかかわらず、体型をはじめとしてまったく異なる生き物となります。


女王蜂は1日に1,000個以上も卵を産み、寿命は3~4年、一方働き蜂の寿命は1ヶ月しかありません。

両者がまったく異なるようになる理由は、働き蜂になる幼虫たちには、はちみつなどが与えられるのに対して、女王蜂になる幼虫にだけは、ローヤルゼリーが与えられるからです。


ローヤルゼリーが与えられないと、ある遺伝子のメチル化(抑制をもたらす改変)が生じて、働き蜂となってしまいます。
ローヤルゼリーが与えられると、その遺伝子のメチル化が生じないため、女王蜂として生まれてくることになるのです。



このように、発生の初期の段階でどのような栄養環境で育つかなどのわずかな条件の違いによって、同じDNAの遺伝情報であっても、特定の遺伝子がオンになったり、オフになったりして、致命的なほどの違いをもった状態に変わりうるということがわかってきたわけです。


遺伝的な性質は絶対的なものとされていたのですが、実際は、驚くほど可変的な性質を持っていることがわかってきて、エピジェネティクス(後成遺伝学)という研究分野が21世紀に入ってから急速に注目されるようになってきています。


以前、環境ホルモンというものが注目されたのち、関心が低くなっていきましたが、またあらためて注目されるかもしれないと感じています。



というわけで、妊娠中に栄養をしっかりと摂取しなければ、胎児の体に対して、外の世界は飢餓環境であるという情報を与えてしまい、飢餓環境に適しているけれど、飽食環境には適していないという体が作られることになってしまうのです。



日本においては、女性の「やせ願望」や妊娠時の徹底した食事指導などが原因で、低体重で生まれてくる子供が増え続けていて、出生時の平均体重が3000グラムを割るところまで減ってきています。
2500グラム未満の低体重で生まれる子供の割合が10%近くにまで増えてきています。


そのため、将来的に、成人病の発症率がかなり高くなることが警戒されていて、海外の研究者たちは特に日本の現状を強く危惧しています。


これまで産婦人科において、妊娠中毒症などを極端なまでに恐れ、体重があまり増えないようにと体重管理が徹底されていて、妊婦にダイエットをさせるというケースもごく当たり前のことでした。


一昔前の先進的な医学情報であった「小さく産んで、大きく育てる」という指導を徹底する産婦人科医や助産婦がまだかなり多いというのが現状です。間違っていたということが判明した情報は、できるだけ早く訂正されるべきだと思いますが、残念ながらまだまだ時間が掛かりそうです。



この低栄養状態にさらされる胎児という話は、明らかにカロリー過多な食事を続けているアメリカなどでは、あまり関係のない話なのではないかと思っていました。


しかし、実際はというと、ジャンクフードなどは高カロリーではあるものの、必要な栄養分は足りていないので、体は飢餓環境と判断して、胎児は飢餓環境に適応した状態で生まれてくることになり、高カロリーの生活のもとで急速に肥満が進んでしまうのです。


まさに肥満遺伝子をもって生まれてきたということになってしまうわけです。



必要な栄養分をしっかりと届けてあげるということが、想像以上に重要なことであったのです。



ダイエットをしてちょっとやせたいというような軽い気持ちであったとしても、何の責任もないはずの子供たちが成人病の大きなリスクを背負わされてしまうことになるので、気をつけなければなりません。



そして、さらに深く考えてみてください。


女性は、すべての卵子のもと(約200万個)をすでに卵巣に備えた状態で生まれてきます。


ということは、孫の世代の性質までが、妊娠初期の段階で、すでにかなりの割合で決定してしまっているということになるのです。


恐ろしいことに、子供の世代までの話では済まないのです。

たかが食事制限ダイエットが、少なくとも孫世代までは、遺伝子レベルでかなり大きな影響を与えてしまうということになるのです注意


このように、ごく当たり前のように行われている食事制限ダイエットというものは、実は非常に恐ろしいものであったというわけです。



だから、ダイエットというものは、本当によく考えて行って欲しいと思っています。
苦しくてつらいと感じるようなダイエットは、それは大問題だということなのです。


本当におなかがすいたらしっかりと食べて、おなかがいっぱいになったと感じたら食べ終わる、そういう、苦しさを感じないようなダイエットを選択して欲しいと思っています。




今回のテーマにさらに関心のある方は、「成人病胎児期発症説」や「成人病胎児起源説」などのキーワードで検索されると、興味深い、けれどもかなり恐ろしいというような話がいくつも見つかると思います。


以下に参考になりそうなものをいくつか紹介します。
携帯からでは読めない可能性が高いです。


胎内で成人病は始まっている―母親の正しい食生活が子どもを未来の病気から守る
http://www.amazon.co.jp/dp/478972543X/
すでに絶版になってしまっています。


妊娠中の体重管理について
http://homepage3.nifty.com/~sanin/sun/bn/0612_list.html


妊婦の過剰なダイエットで子どもが肥満に! それだけじゃない影響が。
http://sasapanda.net/archives/1571


エピジェネティクスについては、こちらのサイトがわかりやすいです。
http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/stfc/stt099j/0906_03_featurearticles/0906fa01/200906_fa01.html




P.S.

低体重で生まれてくる子供は成人病のリスクが高くなるという話ですが、早産で生まれて体重が少ないというような場合などは、当然ながら話がまったく異なります。


出生時の体重と成人病リスクの関係が非常に深いということがわかったなんて、いまさらそんなことを言われても困るという人も多いと思います。

実際、これは仕方がないと思います。「小さく産んで、大きく育てる」というのがよいことだ、とみんなが信じていたのですからね。


与えられた状態にうまく対応できるように頑張ってもらうしかないと思います。


医学常識・健康常識というのは、時代とともに激変することも多く、言っていたことが180度変わってしまうということも珍しくありません。
やはり、本能的な感覚というものを大切にしなければいけないのだなということをあらためて感じさせられます。



それから、女だけが重い責任を負って不公平だと思う人も多いと思います。
現実は意外と公平なようで、男も精子の遺伝子情報が生活環境や様々な体験などによって、かなり影響を受けるようであるということがわかってきています。
まだまだ研究が始まったばかりの分野なので、これから興味深いことがどんどんわかってくるでしょう。



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