生まれた時は 黄色いカナリアだった。

生きる喜びに 胸を奮わせ

そよ風の走り抜ける木立を

スウィングしながら飛びまわり

澄んだうた声で 囀っていた。


人は悲しみで 心がいっぱいになると 

涙で外に 押し流すけど

涙をもたない カナリアの私は 

羽が青く 変わっていった。


悲しみが心に刻まれるたび

黄色い羽毛に 青い羽が混ざり出し

悲しみが心に拡がっていくほどに

黄色い羽は 青い羽へと変わってしまった。  

気がつくと私は 青いカナリアになっていた。

 

羽の色が 変わっていくのといっしょに

うたい方も 忘れてしまった。

幸せのうた声は

くちばしの先から 囀り出されるものではないから...

からだ全体に喜びがみなぎる時

圧し出されるように 漏れ出てくるものだから...


青い羽の私から漏れ出る鳴き声は

哀しみと慟哭の啜り泣き

私の声を聴くと

皆 悲しくなるから

だから私は 鳴かなくなった。


幸せを運べない青い鳥

喜びを歌えない カナリア

私は 鳥かごの中で時を過ごすだけの

鳴くこともできない 哀しい青い鳥...