メルの家には、四方に

3つの窓とドアがある。

南側の窓には、見渡す限りの草原が広がり、

西側の窓からは、うっそうと茂った森が見える。

北側の窓は、聳え立つ断崖の岩肌で囲まれ、

そして 東側のドアを開けると、

光や風で 刻々と表情を変える海と空から

部屋の中に爽やかな潮風が届けられる。


それぞれの窓とドアの横には、

大小さまざまな望遠鏡が吊り下げられており、

メルは動物達の世話が一息つくと、

必ず順番に南、西、北の窓に近づき、

望遠鏡を覗いてまわる。

そして1番最後に ドアの横の双眼鏡を手にすると 

砂浜から水平線の彼方まで 上下左右に大きく動かし

隅から隅まで じっくり覗き込む。

そして 微笑を浮かべた口元から、

小さなため息を一つこぼす。


それで、

「メルは何かを 探しているのだろうか?

 それとも誰かを 待っているのだろうか?」

などと、みんなで話し合ったりするのだけれど、

実際のところは 誰にもわからない。

メルの気持ちは メルにしかわからない。

メルが話してくれない限り、

誰も知りうることは出来ない。


メルは一体、どんな気持ちで

望遠鏡を覗いているのだろう?

メルの気持ちを 私は知りたい。

こぼれ落ちたため息に どんな意味があるのかを...