メルには不思議な力がある。

それは、見つめただけで

相手の痛みをわかってしまうという力。

誰かが痛みを発すると 

その痛みが自分の中に入ってきて

「ここが痛いよ。」 って語りかけてくるんだって...

だからここに来た動物達の治療も

怪我がどこなのか一瞬で察してしまう。

メルは週に何度か、町へも出かけていく。

町の人たちの家で 簡単な治療をして帰ってくる。

草原を南へ海岸沿いに ずっとずっと歩き続けた先に

小さな港町がある。

そこでメルは、病人や怪我人のいる家をぴたりと見つけ

そして治療を申し出る。

帰りに町の人たちからお土産をもらって

それでメルは暮らしている。


町の人からも不思議がられている。

どうしてメルには、分かるのか?って

ホントはメルが災いを運んできてるんじゃないか?って

そんな風に言う人もいるらしい。

だからメルには誰も何も尋ねない。

どこから来たのか?

どこへ帰っていくのか? って。

メルは、もと来た道を帰っていく。

時々、持ちきれないほどのお土産を抱えて

そして、歌いながら帰っていく。

草原を吹く風に 自分の祈りを届けてもらいたくて。