町の人たちは決して メルの家には近づかない。

なぜならメルの住む家は 

『 北の果ての地 』 と呼ばれる場所にあり

近づく者には 呪いがふりかかるといわれているから。

町一番の長寿の長老が 子供だった頃のある日を境に

船に乗った異国の男達が 大海原を渡ってはるばる

この北の果ての地にやってくるようになった。

そして、男達はあらゆる方法を用いて断崖の頂に挑み

たくさんの者が命を落とした。

しかし未だもって、その断崖の頂上に辿り着いた者はいない

といわれている。

想いを果たせず亡くなった者の霊が

断崖の裏手の西の森に宿り 

近づくものを惑わしては、

森の奥深くへと引き寄せ 連れ去っていく

と言い伝えられている。

実際に今でも

草原で雉を狙っていた若者の一人が

森の奥から流れてくる 不思議な声を聞き

怖ろしくなって戻ってきた という。

他にも こんな話が残っている。

草原で野いちごを摘んでいた娘が

突然 姿を消した。

町の人は皆で 手分けして方々探したが、

結局娘を見つけることは出来なかった。

そして、西の森の入り口辺りで

野いちごでいっぱいになったカゴだけが見つかった。