以前メルはこの小道の先の大切な場所へ

私を連れていってくれたことがある。


「 ピッピ、私と一緒に出かけましょう?

 もしも外へでかけるのが怖いようだったら

 ずっと目をつぶっていたらいいわ。

 部屋の中にばかり閉じこもっているのは、 

 よいことだとは思わないもの。

 たまには私と一緒に出かけましょうよ?

 私の大切な場所へ ピッピを連れていきたいの。」


そういって、薄暗い部屋の鳥カゴの中から

一向に出ようとする気配のない私を、

メルは連れ出したことがあった。

怯える私の気持ちなどお構いなしに

メルは鳥カゴごと私を抱きかかえ、

眩しい光の世界へと連れ出した。



メル、メル。 

私まだ、

もう少し ここでゆっくりしていたいのに...



久しぶりに浴びた陽の光に、私はぎゅっと目をつぶった。

神経は耳に集中する。

メルの口元からもれる微かな息遣いと、

木立を吹き抜ける風に くすぐったそうな声をあげる

木の葉たちの かさかさっ という音...


メルに抱かれて聴く風と木の葉の会話は、

とても心地よかった。

縮こまっていた体からは、するっするっと力が抜けていき

体を撫でるような風が吹くたび 

折りたたんだままだった翼を広げて 

羽1枚1枚の中に取り込んでいた。