森へ行った日を境に、
私は閉じこもるのをやめた。
もちろん、まだまだ 空を飛ぶ気になんてならない。
だけどメルの行くところへ 一緒に行ってみたい気もする。
メルの見つめる景色を 一緒に見てみたい気もする。
そんな私の気持ちを察してか
メルは私を服の胸元に入れて
一緒に連れて出かけるようになった。
メルは砂浜の上を歩くのが好きだ。
家のドアを開け、まっすぐ数十メートルも進めば
野道は徐々に砂地に変わっていき
やがてえぐれたように陥没した砂浜につく。
靴を脱ぎ 波打ち際へと近寄っていくメル。
濡れた砂の上をあちこち
引っ掻いたり彫ったりして
それから少し後ろに下がって腰を下ろし
打ち寄せる波を見つめ始める。
波が、全てを消し去っていくのを見つめる。
波が、跡形もなく元通りにしていくのを静かに見つめる。