観た映画 2021年7月 | BTJJ

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リハビリの為のタイピングブログ

■2021年7月に観た映画

24本(劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)

 

・ブロンソン (原題:BRONSON) - 3.6/5.0 (U-NEXT/2021.7.27)

監督 脚本:ニコラス・ウィンディング・レフン。脚本:ブロック・ノーマン・ブロック。2008年。「Drive」評を聴いていた時にニコラス・ウィンディング・レフンの前作として紹介されており興味が沸き鑑賞。"イギリスで最も有名な犯罪者を描くバイオレンスアクション"という事で、実話(ベース?)で構成され、それがそうさせたのかは分からないが何だかものすごく淡々と独白が続く映画だなという感想を持った。もっと所謂"ワルモノ"的なバイオレンスシーンや、こちらの倫理観を完全無視する凶悪さを見られるのかなと思ったのですが、何だか可愛らしい暴れっぷりで拍子抜け。これはアクションシーンがどうも下手クソなんじゃないかなという事を思わずにはいられなかった。テムポ自体もわりとゆっくりめに進んでいくので(冒頭のスロー再生のアクションシーン+クラシック音楽というのもそれを予感させるような演出だったのかもしれませんが)、何だか"優雅な暴力シーン"という様に映った。それが狂気だと言われればそうかも知れないし、ある意味この作品におけるアートバランスなのかも知れない。終盤にかけて虚実がない交ぜになったかの様な印象を受ける。ちょっと最後の方適当に観てしまったので何とも言えないのですが...()。全体的に画はばっちり決まった画面が多くて良かった。

 

・竜とそばかすの姫 - 3.2/5.0 (イオンシネマワンダー/2021.7.26)

監督 脚本 原作:細田守。2021年。観る予定ではなかったのですがアトロク課題作品になり鑑賞。IMAXに行く気にはなれなかったので、時間を選びつつせめてと思いイオンシネマワンダーの1番大きなスクリーンを選択。仮想世界(オンライン)と現実世界との棲み分けだったり、実はそれは地続きなんだけどそれ故の良さや怖さがあるという様々なポイントを掻い摘んで並べてどんどん全体的にテーマがうす~く引き伸ばされた結果"何味のものを食べたんだっけ?"となる様な微妙な後味の作品だった。掬い上げている各キーワード自体は、今の現実世界を生きる、そしてこれからの時代を生きていく子供たちへ向けたメッセージとして非常に良いものではある(やっぱり子供向けだなと)のですが、どうしても脚本なのか何なのかテーマ自体が散漫になってしまいあまり効果的に機能したとは思えなかった。画面に関しては、現実世界の画はいつもの絵柄でなんとなく見れたのですが、仮想世界のデザインが何とも苦手な感じでつらかった。そして、極めつけは今回の作劇の肝となる"音楽で魅せていく"という内容。King Gnu常田大希率いるmillennium parade(結構映画音楽やってますよね、良い悪いは別として)と中村佳穂のタッグという2021年の日本の音楽シーンとしては限りなく攻めている布陣で、劇中の非常に大切な部分で彼らの音楽がほぼむき出しの状態で大音量で鳴り響く。好みは置いておいて、良かったのではないでしょうか。なんならグダグダの作劇を音楽で救っているなと思う。しかしこれだけは言いたいのは、映画として大きな部分を音楽に頼らざるを得ないのは本当にどうかと思う。勿論、映画音楽の重要性や一緒になって発揮される景色もありますが、今作に関してはそこまでの機能を(目指したのだろうけれど)果たしていないと思う。画面的にもクライマックスとかかなり頑張っていたとは思うけれど、それは時すでに遅しというものではないのか。終盤の倫理観や終始ツッコミどころの多い内容で途中でどうでも良くなってしまったのも事実。中村佳穂の声優は結構良かったと思う。

 

・まともじゃないのは君も一緒 - 3.6/5.0 (wowow録画/2021.7.25)

監督:前田弘二。脚本:高田亮。2021年。評判は良かったもののタイミング逃し劇場鑑賞できなかったこちらの一作。WOWOW放送にて。今売り出し中の清原果耶と、もはや安定の"変なヤツ役"役者・成田凌の主に二人の会話劇小作品。テーマ的にはタイトルそのまま"普通とは?""誰にとっても普通は普通ではない"という様な内容で、お話自体も正にそのままという感じでしょうか。女子高生と塾の先生の関係性に思えなかったり、いくらなんでも成田凌が変な(浮世離れし過ぎな)奴過ぎるだろうとか、小泉孝太郎の演技とか、なかなかばっちり沢山のツッコミどころに溢れていて、観る前までのイメージとは結構違ったなという感じ。印象的なセリフが多くみられ、特に以前に観た朝ドラではイマイチだった清原果耶ちゃんの演技っぷりがなかなか良いものがあった。98分という時間もそうですが、内容的にも演出的にもバジェット的にも非常に小粒なでも良質な、安心して観られる様な作品だった。わりと心地よかった。

 

・ウォーリー (原題:WALL・E) - 3.7/5.0 (Blu-ray/2021.7.25)

監督 脚本:アンドリュー・スタントン。脚本:ジム・リアドン。2008年。良いらしいので鑑賞。まず自宅のテレビで見てしまったのが大間違いでした。せっかくホームシアターがあるのに一体何を...という反省はありますが、なかなかもう一度見る気にはなれない。全体を通してセリフはほぼ排除されて、ウォーリーとイヴの無言のコミュニケートを見つめるのがメインの作品。髄所にあからさまな「2001年宇宙の旅」オマージュが散りばめられていて、しかもそのオマージュの仕方が露骨で"オマージュしている"という事をこんなにも描写内にというか表現の中に盛り込んでいいんだと思う程の踏み込み方でこれはこれで面白かったし、良かったと思う。お話的にはツッコミどころはありますが、まあこういうものなのでしょう。同時上映されたという「バーニー」「マジシャン・プレスト」の2本の短編もBlu-ray収録されており観ましたが、特に「バーニー」の方は"この時実はこんなことしてました"系作品で面白かった。し、可愛かった。

 

・ガンズ アキンボ (原題:Guns Akimbo) - 3.2/5.0 (DVD/2021.7.25)

監督 脚本:ジェイソン・レイ・ホーデン。2019年。日本公開2021年。評判もまあまあで、上映期間に行きたかったのですがタイミング合わずで見逃していた今作を新作レンタルで鑑賞。結論から言えば、見逃して良かったし、なんなら見なくても良かったな!!という。言いたい事は山ほどありますが、まずは画作りからしてひどい!と声を大にして言いたい。この作品が"スキズム"という一般参加型の殺しのネット配信ライブをメインテーマとして置いているのであれば肝であるはずのアクション・ゴアシーンが重要なのは誰でも分かるはずなのですが、何を思ったのかそれとも全くもって技術もアイデアも無いのか、取って付けた様な中途半端さ(何を魅せたいのか分からない)。とりあえずやってみました感がすごい。この映画のメインのビジュアルのはずのその部分がこれでは作品が全く走り出さないのは言うまでもないかと思います。また、ゲーム的な演出というかSNSとか動画サイトのコメントとかそういう演出もいいのですが、入ってくるタイミングもいちいち間が悪く、アクションを妨げているという風にしか思えなかった。そして大事な所では謎にスローモーションになったり、"え、こんなショボいCGで終わらせちゃうんだ"とがっかりする場面の連続で、上映時間が進むにつれて徐々に眠たくもなってくるし、興味も失われていった。個人的には結構アクションシーンで眠くなる事は多いのですが、飽和した画面と音量が続くとどうしてもそうなってしまうのは否めないかなと思う。タルいアクションシーンほど眠気を誘うものはない。ダニエル・ラドクリフは選べるほど仕事が無いのかこんな映画の仕事は受けなきゃいいのにと心底思った。金玉スプラッター。

 

・未知との遭遇 (原題:Close Encounters of the Third Kind) - 3.8/5.0 (Blu-ray/2021.7.24)

監督 脚本:スティーヴン・スピルバーグ。1977年。まだ見ていなかったので鑑賞。昔の作品を見ると"とても○年前とは思えない"とかそういう事を言いたくなりますが、そうなりました。まずは、全体を通してダレる事なくグイグイと観客の集中を引っ張っていくストーリーテリングは素晴らしかったし、特に序盤の最初にUFOを見るシーンや中盤のロイが狂ったように山に取り憑かれていく様は全く持って未知のものが人間自体を乗ってってしまう様な恐怖を実に見事に描写していた。話だけではなく、光の演出や後ろのトラックが空へと連れ去られてしまうシーンなど、画的な刺激も満載。終盤の展開は、(後発ですが)まさにドゥニ・ヴィルヌーヴ「メッセージ」を思わせる様な"宇宙人との交信"で、読んでそのまま、"未知"と遭遇する壮大な結末が素晴らしいなと感じた。主人公のロイも最終的には一人だけUFOに連れていかれてしまう点も怖い。ロイとジリアンとウディアレンみたいなおじさんの山登りシーン。

 

・トラスト ミー (原題:TRUST) - 3.5/5.0 (U-NEXT/2021.7.22)

監督 脚本:ハル・ハートリー。1990年。アトロクの特集を聴き鑑賞。なんとも地味で不思議なプロットのラブストーリー。主人公の女の子の自立を描いている、とは思う。嫌なワケではなく最後までしっかりと見られたのですが特段これと言った感動もなく見終わってしまったというのが正直なところ。良かったは良かったんだけども。チープさというか、インディ作品なので別にこういうものなんだろうけどラストの爆発のしょぼさから最後の展開までがなんだか気になってしまった。観た環境が良くなかったかも。

 

・ベルヴィル ランデブー (原題:LES TRIPLETTES DE BELLEVILLE) - 4.2/5.0 (DVD/2021.7.21)

監督 脚本:シルヴァン・ショメ。2002年。劇場で予告編を見てコレは楽しみだと思っていたが調べてみると旧作だという事に気付く。今月の映画に使っている金額を考えてもここはレンタルで我慢か...と思いながら自宅にて鑑賞。したのですが、これはしっかりとスクリーンで見るべきだった!ほぼセリフの無いアニメーションなので画面から伝わってくる情報量、チャームさ、どこを取ってもそれらが溢れんばかりに出ていて、時折混じるCG背景の画面も非常に面白く、大画面高画質で見るべきだったと後悔。まだやっているので見にいこうかなあ...。とにかく画面に現れる登場キャラクターたちの"なんかヘンさ"。「フリークス」とかタイトル出すのはアレかも知れないですが、そんなノリ。基本的にどこか異形のキャラ達が自信たっぷりに暴れまわる様はかなりクセになり、まさに映画的でもあった。デヴィッド・リンチとかそういうものを感じた。お話も一直線で分かり易くてgood。

 

・プロミシング ヤング ウーマン (原題:Promising Young Woman) - 3.8/5.0 (伏見ミリオン座/2021.7.20)

監督 脚本:エメラルド・フェンネル。2021年。予告を見た時点では微妙な感じだったんですが、SNSでの高評価を目にして鑑賞。"昔の親友をレイプによって殺された女の復讐譚"というのが一言で出来る説明か。ミリオン座の一番シアターでしたが平日昼にも関わらずかなり入っていた様に感じた。60人くらいはいたのでは。「ブラックウィドウ」ばりに普段相容れない客層の中観たのも新鮮だった。エンタメ作品としてかなりしっかりとしていたので、非常に簡単に楽しむ事が出来た。が、わりと構えて観ていたので終盤くらいまではノリ切れない部分も無くはなかったのですが、最後にしっかりと主人公が殺されビターなバランスを取っていたので良かった(ラストの時差復讐の件は、まあこういうお話なんだからいいんじゃない?程度の感想です)。しかしながらキャリー・マリガンが30歳の役って無理が無いか?この人50代くらいでしょ...?と思い唸りながら観ていたが鑑賞後に調べたら36才で絶句。

 

・ライトハウス (原題:The Lighthouse) - 3.7/5.0 (伏見ミリオン座/2021.7.20)

監督 脚本:ロバート・エガース。脚本:マックス・エガース。2019年。日本公開2021年。A24製作。客入りは20人ほど。全編モノクロ且つスクエアに区切られた画面が劇中の閉鎖感と共鳴し、より閉所の強度を強める役割を果たしている。灯台守の仕事をするために男二人が嵐の灯台で過ごすうちに...という内容なのですがお話的なカタルシスは特に無く、これもどちらかというと映像や表現、ギョッとする様な仕掛けの連発で"逃げ場のない恐怖"の様なものと対峙しなければならない不安さを描いている。上記した画面効果はもちろん、要所で絶望的な不安が襲う様な描写が散りばめられていて、何も考えずに見ているだけでもまあそれなりに楽しめるとは思う。"灯台"を舞台に限られた中で様々な構図や表現にチャレンジしている姿はかなり好感が持てるし実際面白かった。クライマックスのモノクロ画面を生かした(暗闇の黒と光の白)灯台の光演出は狂った音とも相まってなかなかに良かった。結構楽しめたけども正直、中盤は眠気も襲ったし、ダレた感は否めなかった。もっとめちゃくちゃグチャグチャに恐ろしい展開(や画面)が待っていても良かったのでは。

 

・アレックス (原題:IRREVERSIBLE) - 3.8/5.0 (DVD/2021.7.19)

監督 脚本:ギャスパー・ノエ。2003年。久しぶりのギャスパー・ノエ作品鑑賞。彼の出世作らしい。時系列が逆向きに進んでいくところからレビューなどでは「メメント」と並べられていますが全く持って違うなと。というかノーランはラストの展開まで含めてきちんとお話として成立させようとていますが(当然だろ!)、ギャスパー・ノエはそんなの関係なしお構いなし!ノエ印のグワングワンと揺すりまくるカメラワークと激しく点滅する画面はこの時点から健在で一貫した姿勢を感じて良かった。お話自体は、もう結末が分かっているので当然"どうしてそうなった?"という部分にワクワクさせる部分があるハズなのですがそういった部分は特に無く、ただ時間を遡って並べただけというのは否めないかなとは思う。でも別にそれはそれ!アレックスの恋人の男が必死に犯人を捜すのですがしっかりと惨殺されるのが面白かった。鈍器、消火器。めちゃくちゃなゴア描写に戦慄。

 

・search/サーチ (原題:Searching) - 3.4/5.0 (DVD/2021.7.18)

監督 脚本:アニーシュ・チャガンティ。脚本:セブ・オハニアン。2018年。「RUN」アニーシュ・チャガンティのデビュー作。PCの画面のみで構成されるSNSを舞台としたサスペンス、ミステリー映画。最後まで観て思うのは、もうすごいアイデア一発勝負だったなという。最初こそは"これは面白い!"と思いながら観ましたが最後の方は結構飽きたのが事実。このプロットを最優先させるが故にどうしてもご都合主義的な展開や脚本にならざるを得ないのが現実。何だかどの展開も"あくまで最後の着地をするための仕掛け"に全てが見えてきてしまい、予想も出来る範囲の話で、あまり優れているとは思えなかった。しかもコレ2018年の作品なので、3年後の2021年の今は観るのがギリかなあという印象。もっと後で見ると結構残念な感じになるんじゃないかなあとも思います。「RUN」も巷の評判ほどは...という感じだったので今の所あまりハマってない感はある。次作も観ますけどね!

 

・2001年宇宙の旅 新世紀特別版 - 4.3/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ/2021.7.18)

監督 脚本:スタンリー・キューブリック。脚本:アーサー・C・クラーク。1968年。[午前十時の映画祭11]にて新世紀特別版が上映されており鑑賞。オリジナル版に比べて10分長くなっている。オリジナル版をBlu-rayで鑑賞したのが1年前でしたのでそれぶり且つ初めてスクリーンでの鑑賞。1日1回上映、土日は最後という事もあり、かなり客は入っており、50人くらいはいたのでは。事前にネットでも書かれていた様に画面の上下左右が若干カットされて何とも残念な上映状態ではありましたが、音響などはしっかりと再生されていたのでこの作品特有の無音と音有の境目を十分に(他者と)体感する事が出来て良かった。インターミッションも実際にあり(5分くらい?)、その間も不穏な音の中トイレに立ち上がる人達を眺めるのも良い経験だった。インターミッション後の後半、上記した無音の宇宙空間のシーンが多くなるのですが、無音シーンの連発は否が応にも高まる緊張感を生み出し"宇宙の無音と音楽のブレイク(休符)は似ているな"とかそんな事を思いながら画面を眺めた。映画も音楽も共に時間芸術であり、本来ならば止める事が出ないものが止まる瞬間、そこには歪みが生じるし意志やリズムが生まれるのだと思う。緊張感も当然そこには生まれるし、明らかな意図を持ってそういう瞬間は作られるのだなと感じた。エンドロール後にはヨハン・シュトラウス2世『美しく青きドナウ』が流れるのですが、その時点で客電は点かず全てが終わってから明るくなり退場したので、本当ならばエンドロールは終わっているのだからこの『美しく青きドナウ』を聞きながら退場したかったなあと思った。ミッドランドスクエアシネマは名古屋空港に比べてこの本店はそういう部分がいかんよなあと。

 

・スーパー! (原題:SUPER) - 4.1/5.0 (DVD/2021.7.17)

監督 脚本:ジェームズ・ガン。2011年。「キックアス」とセットで語られる事が多い様な印象ですが、全く持って異なるものでした。というか、基本的にはそういったものに対するカウンターとしての位置に居て、もっと"映画とは一体どういうものなのか、ヒーローとはどういうものなのか"という問いを深く自問していく様な作品だった。前半は、ヒーローはあくまで題材にしてコメディタッチで冴えない主人公の奮起物語をインディな調子で描いていくのかなと思っていたのですが、徐々に"でもこれって本当にそうでいいのかな"と思える様な出来事が増え、この作品が大きな意味で"ヒーロー映画とは"、または"ヒーロー映画を作る事とは"というものを描いている様な感覚になっていきます。劇中に2度繰り返される(エリオットペイジにコミックを元に話す場面とラストシーン)"コマとコマの隙間で本当の事が起きている"というメッセージと"目(コマ)に見えるものだけが真実ではないし、見えないものが重要な事もある"(原文ママの引用ではない)というまさに"映画そのもの"を示す(1/24コマで映画は出来ている)サインになっており、それらのパーツがカチっとハマった瞬間の"これは映画だ!映画を見ているのだ!"という気付きにはハッさせられるものがあった。悪役として登場するケビンベーコンも殺されてしまう瞬間には、なんだか少し彼に同情させられる(同情という言葉があっているが微妙ですが)。劇中の"手作りヒーロー"を目指す主人公と、こうして自主映画の様な手触りでヒーロー映画を(なんなら映画自体を!)作ろうとするジェームズ・ガン監督がガチっとリンクしたこの作品に強いメッセージと作家性を感じずにはいられなかった。映画の本質を見たと思う。この後に「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」「スーサイドスクワット」と"ホンモノ"のヒーロー映画を作っていくストーリーまで含めてこんなにシビれる話は無いのではないでしょうか。

 

・ブラック ウィドウ (原題:Black Widow) - 3.8/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ/2021.7.16)

監督:ケイト・ショートランド。脚本ネッド・ベンソン。ジャック・スカエファー。2021年。完全にピューチャソ目当てで鑑賞。50人くらいはいたのでは。MCUとか正直興味ないし、以前に勧められた「アイアンマン」見てもマジで響かなかったし、でちゃんと見る事が出来るか心配だったのですが何とか完走(ウトウトはした)。所謂イメージしていたマーベルヒーローものよりはスパイアクションものにシフトしていたせいなのかかなり見やすく感じた。脚本も(当然ですが)かなりしっかりしていて、話も分かるしすごく丁寧だなあと思った。他のMCU作品もクオリティはこれが平均のはずなのできちんと意志を持ってみれば飽きずに観られるのかなと少しだけ苦手意識が薄くなった。中盤の家族再会シーンのフローレンスピューの演技が"実際にこうだろうなあ"と映画内リアリティがすごくて非常に関心したし、感動した。やっぱりすごい。終盤に行くにつれアクションもCGも派手に豪華になっていって荒唐無稽さというかむちゃくちゃさがグングンと上がっていくのですが、"こういうものなんだ"と割り切れば非常に楽しめた。まあ皆そうやって見てるのかも知れませんね(でもやっぱり子供向けというか、オトナでこの話を真剣に楽しんでる人ってどうなんだろう...とは思いましたが)。公開からは1週経ってるのかな?それでも平日朝の回で40人ほどは入っていました。今回客入りが...と言われているみたいなんですが普段のMCU作品の人気を知らないので何とも言えませんが見に行った日に限っては両隣に人もいるしなかなか好評だった様に感じました。

 

・オー!スジョン (原題:오!수정/Oh! Soo-jung/洋題:VIRGIN STRIPPED BARE BY HER BACHELORS) - 3.8/5.0 (今池シネマテーク/2021.7.15)

監督 脚本:ホン・サンス。2000年。日本公開2003年。先日鑑賞した「逃げた女」のホン・サンス監督作品が今池シネマテークにて特集上映されているという事で勇んで参上。今回は初期作品である「カンウォンドの恋」「オー!スジョン」の2作を上映していた。「逃げた女」が何だか癖になっていて、鑑賞後も色々とネットで調べたりなどもして興味があったので今回の特集上映はありがたかった。この作品は、とある不倫関係の男女とその間男のアレコレという感じのお話なのですが、12章に分かれて話が時制無視で並べられている。前半と後半で同じ場面が繰り返されるのだが、何故か微妙に内容が、違う。これ見ながら"え、どういうことなの?"と困惑した。終わってから<主人公の男と女のそれぞれの目線から語り直している>という事に気付き、自分の理解力の低さに悔しさが。。それ分かった上で観たらまた結構違うだろうなあとかなり思った。ただ、なぜかホン・サンスは見返すとなるとなかなか根気がいるよなあとも思う。非常にシュールなというか静か且つ特徴的な作品群になるので、こう、"好きです!"と声を大にして言えない様な(自身のリテラシー不足による)ところもあるので、この先も作品を見ながらいつかフェイバリットに感じられる日が来るといいなと思います。映画は奥が深い。深すぎる。パンフレット?として売っていた「作家主義サン・サンス」というムックも購入。

 

・ミザリー (原題:Misery) - 3.8/5.0 (U-NEXT/2021.7.14)

監督:ロブ・ライナー。脚本:ウィリアム・ゴールドマン。原作:スティーヴン・キング。1990年。「RUN」を観たからではないがようやく「ミザリー」を鑑賞。狂った女ヲタ役のキャシーベイツが超ハマり役でほぼキャシーベイツ映画だった。本作でアカデミー主演女優賞も受賞。こういったスリラー的な作品でもアカデミー受賞出来るんだと意外だった。でもそれくらいに怪演で納得。結局、飲ませている薬はなんだったのかとかわかんないし、嫌な感じでジワジワ攻めてくるというよりはもっと物理的に攻撃してくるのが面白かった。終盤のおばさんvsおじさんの流血肉弾戦は思わず声出して笑った。結構チャーミングな作品だなと感じた。映画としてどうかと言われると困りますが、画面の面白さや映画的な興奮は無かった様に感じる。ドラマ的というか。

 

・シャイニング 北米公開版(原題:The Shining) - 4.0/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ名古屋空港/2021.7.14)

監督:スタンリー・キューブリック。脚本:スタンリー・キューブリック。ダイアン・ジョンソン。1980年。[午前十時の映画祭11]にて北米公開版が上映されており鑑賞。オリジナル版に比べていくつかのシーンが追加されており24分長くなっている。そのせいか(そのせいだろ)全体的にもっさりとしたテンポになっていて正直中だるみしたのは否めない。ただ、スクリーンで観るのは初めてで、冒頭の空撮ショットの雄大さや、オーバールックホテル内の廊下などの奥行きの立体感はさすがの劇場上映という感じだった。劇中の美術なども大きなスクリーンでしっかりと見る事が出来て良かった。ダニー乗る三輪車がカーペットとフローリングで音が変わっていくのが非常に心地よかった。増えたシーンも結局はクールで素晴らしいシーンばかりなのでとても体感143分では無いのはさすが過ぎた。オリジナル版の方が好み。

 

・パディントン (原題:Paddington) - 3.5/5.0 (U-NEXT/2021.7.12)

監督 脚本:ポール・キング。2014年。日本公開2016年。何かでお勧めされておりU-NEXTの配信期限が迫っている事もあり鑑賞。実写の中にCGのクマのパディントンが共存する。お話的には非常に子供向けの、クマと人間の種族を越えた友情・家族愛のようなものを描いたオーソドックスな作品。悪役もしっかりと悪役らしくいるしきちんと最後は負かされて反省させられている。家の中をめちゃくちゃにしても何故か許されてしまうパディントンの存在が謎。
 

・生きちゃった (洋題:All the Things We Never Said) - 3.7/5.0 (DVD/2021.7.11)

監督 脚本:石井裕也。2020年。「茜色に焼かれる」「アジアの天使」に続いて石井監督のこちらの作品を。評判が良かったので楽しみにしていましたが、観終わった感想は想像以上にチャレンジングで変な映画だったし、なかなかいろいろと理解が難しい作品だった。好きでしたけどね。何となく大林宣彦映画にも通じる様なめちゃくちゃさで驚いた。濃い口演技の中野太賀までもがあっさりとした無機質演技になるくらい、作為的に大げさな演技は排除されており、一体これが現実なのかどう受け止めていいのかを迷わせる味わいになっていた。石井監督の今まで観てきた作品にも通じるシングルマザーのセックスワーカー問題や、外国人との理解不足なども描かれており、少し散らかった印象があるのが残念だったけれど(いつもそうなのか?)、編集テンポやカット割りの不思議さがこの作品の一筋縄ではいかないチャームになっておりとても面白かった。中盤、主人公の両親が兄貴に発する"大麻やめろ~!大麻やめて仕事探せ~!"のセリフには思わず笑ってしまった。結果的には結構楽しんだと思う。「茜色~」のレビューで"大クセ映画監督の~"みたいなのを見てそうかなあと思っていましたが"これ(ら)の事かあ"と納得。俄然、他の作品にも興味が出てきたのでしっかりと遡って観ていこうと思う。

 

・プラットフォーム (原題:El Hoyo) - 3.3/5.0 (DVD/2021.7.10)

監督:ガルダー・ガステル=ウルティア。脚本:David Desola ペドロ・リベロ。2019年。日本公開2021年。公開時、映画館で観たいと思っていたが見逃していた為、新作レンタルでようやく鑑賞。縦型SFスリラーという謳い文句でしたがそのまま。予告を観る限りでは、その"穴"をもっと登ったり下りたりしてアクションしつつもハラハラする様なものが観られるのかなと思っていましたが、割としっかりと会話劇中心の心理スリラーだった。ジャンル映画としても非常に良く出来ていてクライマックスのゴア描写含めてバッチリじゃなかったんじゃないでしょうか。物語が訴えるものは100分の中に多くあり、色々な謎やいくつかのテーマが折り重なっており、ただのジャンル映画に収まらない重いメッセージ性を持たせてはありましたが、個人的にはそういうの要らないからもっとスカッと気楽に観たかったかなという感想で、この点数。赤を印象的に使っており、終盤最初の主人公の顔とキーパーソンのじいさんの顔が重なるシークエンスはゾクっとして良かった(その後すぐ全員が重なって浮かんできて漫画かよと冷めたけど)。ラスト階層に子供が居たのが謎だったし、理屈がいまいち分からないけれど、きっと主人公たちは250階で既に殴り殺されており、ラストのひとエピソードは死後の部分なんだろうなあと思う。

 

・仁義なき戦い - 3.8/5.0 (35mmフィルム上映/ミッドランドスクエアシネマ/2021.7.13)

監督:深作欣二。脚本:笠原和夫。1973年。35mmフィルム上映。平日昼20人くらいの客入り。劇場のHPを見ていたらフィルム上映のニュースが出ていて滑り込み鑑賞。以前に同じくミッドランドシネマ名古屋空港にて深作欣二「県警対組織暴力」を鑑賞したのだがあまり響かなかった身としてはどうかなという部分もありましたが前回鑑賞が1年前"漏れの映画リテラシーもさぞ上がったことだろう!"と意気込んで見に行ってきました。結論から言うと、あんま感想変わらないかなという感じ。中盤くらいまでは集中して観られましたが、あまりに一辺調子な画面と演出、音楽(さすがに人が死ぬシーンのあの例の音楽のリフレインは面白かったが)にヤラれてしまいやはり徐々に眠たくなってきて...という感じ。寝る事はなかったですが。終盤の誰かが死んで次の人が死ぬまでの間隔が段々と短くなっていき、演出も音楽もつんのめって行く感じはある意味、前衛芸術の様な攻め感を感じ良かった。フィルムのざらついた質感が劇中の雰囲気ともマッチしてより良かった。一番印象的だったのは、菅原文太演じる広能が一番最初に拳銃で人を撃ち殺し、あの音楽が流れるシーンの構図。広能、被害者、その他取り巻きを1つの画面に落とし込み、且つ極端に傾いた画面は事のショッキングさ、広能の感覚の変貌(人を殺したという事)をバキっと表しており、シビれる構図だった、素晴らしかった。客席は20人ほど。前回よりも年齢層は少しだけ低く、ジジイばかりではなくおじさんばかりでした。

 

・アジアの天使 - 3.4/5.0 (イオンシネマワンダー/2021.7.5)

監督 脚本:石井裕也。2012年。「茜色に焼かれる」の石井裕也監督早くも新作。製作自体は「茜色に~」よりも前に行っており公開を待っている状態だったよう。日韓合作なのかな?オール韓国ロケにて撮影。撮影も韓国のチームだそうです。一言で言えば"異文化ロードムービー"的な。日本人主演のオダギリジョーと池松壮亮の食い合わせは良かったのでしっかりと入り込んで観る事は出来たのですが、話自体がちょっと散らかっている印象を受けた。結局何が言いたかったんだろうという感想が残ってしまったのが残念だった。劇中のセリフとしても繰り返される(でも序盤だけ)"結局は相互理解だよ?"ってのが異国文化を理解していくコミュニケーションを取っていく事へのテーマなのかなとも思いましたが、途中で日韓の嫌国感情だったりの話が出てきたり、出てきた割にはそこに何もなかったり、わりと記号的にテーマ"っぽいもの"が並べられているだけで結局何?というふうに思ってしまった。場面やエピソードも無駄に多く、散らかったままクライマックスの"おもしろ天使()"ケレンシーンからの激近手振れエモエモカメラ()シーンに突入されても、置いてきぼりを食らったような気持ちでただスクリーンを眺めるしかなかった。冗長だし、上手じゃないなと感じた。オダギリジョーのオダギリジョー力(オダギリジョーリョク)は健在。

 

・ペトルーニャに祝福を (原題:Gospod postoi, imeto i' e Petrunija/God Exists, Her Name Is Petrunya) - 3.6/5.0 (名演小劇場/2021.7.1)

監督 脚本:テオナ・ストゥルガル・ミテフスカ。脚本:エルマ・タタラギッチ。2019年。日本公開2021年。先月にアトロクの課題作品になっていたが名古屋でなかなか上映されず、ようやく公開されたタイミングで鑑賞。いつも予告編とか見ずにポスタービジュアルだけで映画を観る事が多いので、この作品ももう少し厳かな且つ所謂多幸感!的な作品なのかなーとか思いつつ観ましたが全然違った。女性差別や信仰に関する事柄をクールかつ時にはチャーミングに描いた作品という印象を受けた。主人公家族が結構受け入れがたい造形で描かれたおり、なかなか感情移入(というかヤダミが勝ってしまって)できなかったのですが、この作品はとにかく細部まで練られた構図と、画から伝えようとする"映画的"な姿勢が素晴らしかった。それだけでも観る価値が十分にある作品だと思います。お話部分は割と想像の範囲内感がぬぐえなかったし、ラストの主人公が取る"十字架を返す"という決断も既視感があってそこまでノレなかった。ただ、原題や今回の作劇を踏まえて考えるとただの"女性の自立と解放"だけに留まっていないのは感じられるのでそういった部分はこの作品にしかない良い部分だよなと感じた。