観た映画 2021年8月 | BTJJ

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リハビリの為のタイピングブログ

■2021年8月に観た映画

26本(劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)

短編:2本

 

・仁義なき戦い 広島死闘篇 - 3.7/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ/2021.8.30)

監督:深作欣二。脚本:笠原和夫。原作:飯干晃一。1973年。先月の「仁義なき戦い」に続いてミッドランドがやっている35mmフィルム上映企画の続編として「広島死闘編」。タイミング的に千葉真一の追悼上映のようなものになってしまった部分もありましたが、このタイミングで映画館で観られて良かった。個人的には千葉真一の大友より北大路欣也の山中の方が好きだった。今作は何だかメロドラマっぽい展開を主軸に置いているところもあるので前作の方が好きではあるのですが両作共に圧倒的な画面の熱量を感じさせられ、メロドラマ部分でさえも今これをこう描かなきゃならんのだという情念の様なものが画面から垂れ流れていた様にも感じた。改めて、初作のヤバさを感じる結果になったので上方修正したいなと思う。

 

・ヴィジット (原題:The Visit) - 4.1/5.0 (U-NEXT/2021.8.29)

監督 脚本:M・ナイト・シャマラン。2015年。シャマラン作品の観てないものも順々に観ていきたいなと思いまずはこちらを。が、これが面白かった!!所謂、POV映画の設定ではありますがそれ自体は実はどうでも良く、きちんと編集が効いていたりハッキリとドキュメンタリー作品風に仕上げされている部分に、主役の姉弟の今作における大切な矜持を感じます(エンディングにも繋がります)。謎の老人の家に訪問してしまった2人のお話なんですが、終盤(しかも結構長く引っ張ったので余計に怖かった)に種明かしされる展開にたどり着くまで、ゲロ吐き徘徊やオムツ溜め込み蔵、ドッキリカメラ、狂いインタビューなど、めちゃくちゃ面白いシーンの連発で否応なく不安な、嫌〜ぁな気持ちにさせられる。その上で遂に明かされる"祖父母だと思っていた老人が実は全くの他人だった"という最もシンプルな真実に辿り着いた瞬間の気味悪さ、怖さ、戸惑い、などなど一言では言い表せない"嫌さ"がもう満点。普通に1人で観てて声出た。子供2人で狂気の老人を殺す(?)のですが、あそこはもっとグチャグチャにしても良かったのではとも思いましたが(コメディとするならば)、全然無問題。最高に嫌な面白いホラーでした。
 

・ジョン ウィック (原題:John Wick) - 3.6/5.0 (AmazonPrimeVideo/2021.8.29)

監督:チャド・スタエルスキー。脚本:デレック・コルスタッド。2015年。「Mr.ノーバディ」に続き「ジョン・ウィック」シリーズの初作を鑑賞。「Mr.〜」もそうですが"無茶苦茶なバイオレンスアクション"と言うよりは、しっかりとお話に沿って観客に登場人物の気持ちをきちんと共有させながら展開していく作劇が得意なんだなという印象。もちろんアクションシーンはきちんとしているし、今作はとにかく銃撃戦の爽快さと、銃を持った格闘アクションの痛快さ、の2つが面白いポイントではないでしょうか。特に、地下室のプールのシーンでムキムキのマッチョを殴って殴って最後は脳天をワンショットのアクションシーンの痛快さと斬新さに爆笑。"猫ちゃんのペンダント紛失"だったり"飼い犬を殺されたので"とか非常に単純明快分かり易い動機で主人公の殺戮マシーンが大活躍するという設定はめちゃくちゃ何も考えずに見られて最高。シリーズものなので続きが早くも観たくなった。

 

・スタートアップ! (原題:시동) - 3.4/5.0 (wowow/2021.8.28)

監督:チェ・ジョンヨル。2019年。こちらも内容的にちょうどサクッと観たいタイミングだったので鑑賞。最初こそ"う〜んこれは..."と言う様な、如何にも商業映画然とした画面や展開が続いていたのですが(マドンソクの役もスベってる感が強かった)、終盤辺りから一気に自分の知っている韓国映画のテイスト、要は容赦無い展開が続き最後にはやはり少しビターに終わっていく締め方で、結構面白かったなぁという印象で見終えた。主役のパク・ジョンミンも良い役者さんだなと思いましたが意外にもあまり映画出ていなくてビックリ。まだ若いからか。TTするマブリーが見られる位しか見所という見所は無い。

 

・スパイキッズ (原題:Spy Kids) - 3.6/5.0 (wowow/2021.8.28)

監督 脚本:ロバート・ロドリゲス。2001年。WOWOWで録画したものを時間的にちょうど良かったので鑑賞。タイトルそのまま、所謂キッズムービーで、子供が活躍します。話の大筋が大切で細かいところは良いのさと思って見れば非常に楽しめた。ロバート・ロドリゲスが監督していますが、もっと悪趣味描写や人外表現を突き詰めても良かったのではないでしょうかとも思うが、それこそキッズムービーでは無くなってしまうのでこれくらいのバランスでいいのかも。オチの取ってつけた様な"ファミリー感"には若干の違和感が残りましたが。2もある様なのでそのまま普通に"今度は子供が主役なんだ!楽しみ!"と単純に思える終わりにして欲しくはあった。

・オールド (原題:Old) - 3.5/5.0 (イオンシネマ名古屋茶屋/2021.8.27)

監督 脚本:M・ナイト・シャマラン。2021年。シャマラン監督最新作ということで公開初日に鑑賞。平日昼間、客入りは20人ほど男女共に居るという感じでしょうか。"とある砂浜では1日で50年の時間が過ぎてしまう"というプロット1つで突き進んだ感がある108分のホラーテイスト映画。リゾートホテルに泊まっていた老若男女それぞれ入り混じる3つの家族とラッパーカップルが砂浜に集められ時間を共有する。人数分の老化のパターンや死んでいくパターンなど見せられ、単純にその部分は面白く観る事が出来た。が、プロットのツメの甘さのせいか余りにも一辺倒な流れや、少しの辻褄が合わない事が積み重なり最終的にはあまり響かない内容になってしまった気がする。段々と飽きてきてしまった。飽きるスピードの速さもビーチ譲りか。108分が長く感じた。オチも"お、おん。。。"としか言いようが無い出来で結構イマイチだったなぁという。

 

・シュシュシュの娘 - 2.9/5.0 (シネマスコーレ/2021.8.24)

監督 脚本:入江悠。2021年。アトロクの課題作品になったので鑑賞。久しぶりにスコーレに。お客さんは平日昼間で5人程。入江作品には、あまり興味を持って居なかったので初めての鑑賞となった。まず始まってすぐ思うのは、スタンダードサイズでの画面作り。最近で言えば「ライトハウス」などもそうで、物語の閉塞感と画面の狭さが非常にマッチしており良かったのですが、今作でのスタンダードサイズは正直、最後まで観てもあまり意味がわからなかった。そしてどうやら入江監督の作家性らしいのですが、長回しが多い。話自体が正直面白く無いので、画面でなんとかしようとしたのか、全編に渡りきちんと整頓されたスクエアサイズの画面が続き、長回しだったりそういった画面の部分でとても気を遣って作られているのが分かった。し、そこは良かった。今も書きましたがただひたすらに話が面白くなく、悪役や悪のテーマ自体も非常にステレオタイプに感じあまり没入する事が出来なかった。所謂"ツッコミどころ"みたいな部分はまあ別にそこまで気にならなかったのですが、ひたすらに何だか適当な話に感じてしまい、あまりノレなかった。

 

・トロメオ&ジュリエット (原題:TROMEO & JULIET) - 3.4/5.0 (U-NEXT/2021.8.23)

監督 脚本:ジェームズ・ガン。ロイド・カウフマン。1996年。「ザ・スーサイドスクワッド」鑑賞記念、U-NEXTで見られるのでトロマ時代のジェームズ・ガン作品も観てみよう鑑賞。元々の「ロミオ&ジュリエット」を未観なのでどこまで忠実でどこからがふざけているのか分からないのがちょっと残念(自分に)でしたが、全体に初期作にある初期衝動や荒さが逆に味になっているように微笑ましく観た(とはいえなかなかの完成度なのですが)。ストーリー的にはきちんと、ルッキズムや人と向き合うという所にピークを作っており「スーサイド〜」とかジェームズ・ガン作品全てに通ずるフラットな視野を感じる。本当に優しいよね、この人は。だからゴアや残酷描写がより活きるし、ウソ故の説得力があるのだろうと思う。

 

・ドント ブリーズ2 (原題:Don't Breathe 2) - 3.0/5.0 (イオンシネマワンダー/2021.8.23)

監督 脚本:ロド・サヤゲス。脚本:フェデ・アルバレス。2021年。初作が大好きでかなり楽しみにしていた。が、予告やちょっとした解禁されている内容から"これはもしかしたら..."と不安に思っていましたが悪い方向で的中。どこから言っていいやら、前作を全く無にするような駄作でちょっと如何なものかという感じでした。序盤こそ盲目老人の家の中(テリトリーの中)での格闘になりますので前作とあまり変わらずなのですが、家の中を飛び出し少女を救いに行く後半から、前作でそうだったように勝手知ったる家の中だからこそ面白く感じていた部分や納得がいっていた部分が一気に破綻し始め、ただのご都合主義な話にすごいスピードで転落していく様に途中から本当にどうでも良くなってしまった。改めて前作も非常にギリギリのバランスで面白さが保たれていてだからこそ最高に面白かったのだなと思った。監督が変わった事が影響しているのかどうなのかは分からないがとにかくガッカリした。イーライ・ロスは製作総指揮として名があるのですが何とも残念な出来だった。あと画面が暗すぎて判りにくい。

 

宇宙人ポール (原題:Paul) - 3.8/5.0 (Blu-ray/2021.8.22)

監督:グレッグ・モットーラ。脚本:サイモン・ペッグ。ニック・フロスト。2011年。宇多丸氏の過去の映画評を聴いてチェックした一作。サイモン・ペッグとニック・フロストが宇宙人コメディなんて絶対面白いでしょ!と思いながら鑑賞。エドガーライトじゃないのは意外だと思いましたが、全く問題なく面白かった(評によればグレッグ・モットーラ監督作でこのコンビで観られる方がやばいでしょとの事でしたが)。僕の様な映画リテラシー低めの観客でもしっかりと分かるスピルバーグやSF作品へのオマージュに満ち溢れており、隅々まで楽しめた。特に脚本が良く出来ており、非常にスムーズにストーリーの把握もさせつつ面白さの核の部分を提示してくれているように感じた。しょうもないギャグも笑えた。父親が死んだと思い駆け寄るものの辛うじて生きてると分かるや否や凄い速さでUターンするシーンには思わず声が出た。

 

Beau (原題/2013年)

Munchausen (原題/2011年)

監督 脚本:アリ・アスター。特段見るつもりというか見るタイミングを探ったわけでは無いのですが、SNS所でリンクが張られておりちょうど短くて見られそうなタイミングだったのでvimeoとYouTubeで視聴。共にとても短い短編で、台詞も少なく字幕無くともほぼ画面だけで理解していく事が出来た。「Munchausen」は観たことある様な気もしたが思い出せない。「Beau」の方が気持ち悪くて良かった。早くアリ・アスターの新作映画を観たい。

 

・その街のこども 劇場版 - 4.0/5.0 (DVD/2021.8.20)

監督:井上剛。脚本:渡辺あや。2010年。阪神淡路大震災の15年後の節目にNHKにて製作されたドラマの再編集劇場版。主人公である森山未來と佐藤江梨子が1月7日に行われている慰霊祭の会場へと夜通し歩くだけ、の作品。演じている二人が実際に少年少女時代に震災を経験したというリアルと劇映画のフィクション部分とが折り重なり混ざり合う不思議な座組。お話自体は"ノンフィクションに近い劇作品"という様な具合なのですが実際に震災を経験している立場の2人が演じる事でもちろん劇中は自分とは別の人間を演じているのですが、謎にリアルだったり実感が籠っている演技演出になっている。カメラがいかにもデジカメ然としているのはちょっと気になりますが画面のルックは丁寧で、構図や魅せ方で持っていこうとする姿勢が良かった。淡々と進んでいく会話の中で二人がしてきた会話が繋がる瞬間や、聞いた話がいざ目の前に現れる瞬間にこの作品のカタルシスがある。クライマックスに用意されている美夏の友人宅へと向かうシーンから戻ってくるシーンまでの一連の流れと結果はとてもドラマチックで、先述した虚実ない交ぜが産む面白さが見事に映像として画面に映された場面の様に思う。直後の長い直線道のシーンも印象的だった。ロードムービーと言えばそうなのかも知れませんが、とてもチャレンジングな姿勢で作られた映画的な一作だった。

 

・ザ スーサイド スクワッド "極"悪党、集結 (原題:The Suicide Squad) - 4.0/5.0 (109シネマズ名古屋/IMAX/2021.8.19)

監督 脚本:ジェームズ・ガン。2021年。「フリーガイ」に続き今週公開で非常に楽しみにしていた作品をIMAXにて鑑賞。平日昼間、客入りは20人ほどと言った感じか。どうしてもIMAXで観たかったのですが微妙な時間しか上映が無く来週になったらもっと大変な事になりそうだったので何とかIMAXシアターに滑り込み。「スーパー!」で大好きなジェームズ・ガンが復活の一作且つしかもDCオールスター、SNSでも高評価だったので期待値高く観た。中盤の塔に入ってすぐのテンポと求心力のゆるみが若干気になったけれど、全体的にはとても面白かった。全編ふざけていると言えばふざけているし、真面目だと言えば真面目なんですが、あくまでも"フィクションだからこそ出来る強度"の様なものを利用して監督は作劇していっているなあと感じた。もちろんトロマ印の悪趣味や残虐描写はフィクションなんだけれど。そういうものを積み重ねて、嘘を嘘だと分かって描き切るからこそ描きうる真理(やメッセージ)が浮かびあがる作品に自分は非常に弱い。ラストのネズミが怪獣を襲うシーンなんてめちゃくちゃ気持ち悪かったのに何故かちょっと泣けてきた。フィクションの力を信じる。と言えば聞こえがいいですが、とてもそういうものを強く感じる作品だった。そりゃ大人になってまで真剣に頭吹き飛ばしたり、四肢を引き裂いてる人がフィクションと真摯に向き合っていないはずがないので。(大人になっても"冗談"でそういう表現をしようとする・するバカはいるが)

 

 

・フリー ガイ (原題:Free Guy) - 3.6/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ/2021.8.17)

監督:ショーン・レヴィ。脚本:マット・リーバーマン。2021年。デッドプールのライアンレイノルズが主演を務める予告編から楽しみにしていたこちらをドルビーシネマにて鑑賞。客入りは平日昼間で40人程か。ゲーム内でのモブキャラである主人公・ガイが人格と知能を持ち合わせてしまい(人間的な)成長をすると共に"自分"を手に入れようともがく。もちろんツッコミどころは満載ですがそういうものなので別にそこはいいのだが、肝心のお話や画面に全く目新しいものがなく全て"どこかで見たような"ものの連発。これも、そういうものでしょと言われればそうなのかも知れないが20世紀フォックスとディズニーがそれなりにお金をかけてこの程度なのかよ...とは思う。中盤のメロドラマシーンの背景を嫌味なほどに玉ボケさせていたり、メタ的なギャグはまあそれなりに観られる部分もあったが、何だか全体的にテンションの上がらない出来だった。ドルビーシネマの音響はやっぱり良かった。こんだけ爆音で派手な映画だったのにすごい地味な印象なのは何だろうと思う。帰りのエレベーターで乗り合わせた陰キャ高校生2人組が"「フリーガイめちゃくちゃ面白かった」て○○に教えないと"などと話しているのを聴きながら微笑ましくなった。

 

・キック アス ジャスティス フォーエバー (原題:Kick-Ass 2) - 3.3/5.0 (Blu-ray/2021.8.16)

監督 脚本:ジェフ・ワドロウ。原作:マーク・ミラー。ジョン・ロミータ・Jr。2014年。「キック・アス」の続編。ですが、監督脚本共に交代しており全く違うものに仕上がっていた。元から不評でしたが改めてちゃんと見てもこれは...という様な内容。ハッキリ言って"ナメてるだろ?"と思うし、全く持って愛情を感じない出来上がりにファンでなくとも憤慨。別に1もそこまで盛り上がった様な良い観客では無いのですが、それでも今作は各キャラクターの行動すべてが"脚本の都合"でしか動いていない印象を受ける。特にクロエ・モレッツ演じるヒットガールの酷い扱いにはさすがに言葉が出ない。全編に渡って提示される悪趣味風()(センスが無いんだからこんな事やれるわけないだろ!!)の描写や、必要のない性的描写、それだけでも結構の不快感があったのですが、クロエの行動がキャラクターを道具としか思っていないんだろうなと思う程に根拠も信条も無くコマの様に動かされていて腹が立った。それなりに評価された作品のキャラクターをこういう風に文字通り"使う"のはいかがなものか。そりゃクロエももう次作は出ないと言うわなと。オープニングの"待望のあの続き!"感はワクワクしたし、もちろんそれなりに良い所(ゲロゲリ棒とか)はあるのですが製作再度の心根の様なものがマジで腐っていて、作品全体としても価値無し!と言いたくなるのは仕方ないのでは。

 

マイ ライフ ディレクテッド バイ ニコラス ウィンディング レフン (原題:My Life Directed by Nicolas Winding Refn) - 3.5/5.0 (2021.8.12)

監督:リヴ・コーフィックセン。2014年。日本公開2017年。「オンリーゴッド」の撮影前後、最中に密着したドキュメンタリー。監督撮影は、ニコラスウィンディングレフン監督の奥様でもあり元女優のリヴ・コーフィックセン。まあ作品を作ったというよりは撮れと言われて撮っているという様な感じでしょうか。「Drive」の成功後、観客の期待と評価を一身に背負い対峙する事にふさぎ込むレフン監督のリアルな表情やその夫婦のやり取りを記録した。基本的にはずっと"自信がない"、"良いものになるはずがない"、"(作り終わってから)全然ダメだ"と超マイナス発言を発しまくり。家族に対して日に日に気遣いの出来なくなっていく様が観られる。世界規模で活躍する芸術家の苦悩が分かり易くみられた。全く持ってダメ男として奥さんに当たるレフン監督を見て、""あ、意外とこういう人なんだ"とすごく普通な人でびっくりした。「drive」「オンリーゴッド」を観た身としてはもっと鋭くとがった人なのかなと勝手に思っていたので意外だった。そこが良いよね、とも言いにくい微妙な感じだった。

 

・アイネクライネナハトムジーク - 2.7/5.0 (U-NEXT/2021.8.12)

監督:今泉力哉。脚本:伊坂幸太郎。2019年。「街の上で」で信頼大回復の今泉力哉作品を他のものもと思い鑑賞。が、これは何と言っていいやら.....ひどかった。もしかして「あの頃。」もそうだったように所謂"お仕事映画"と自分の作品で圧倒的にテンションの差を付ける人なのかなと。正直と言えば正直なんだけどそういう仕事も楽しんで"自分のもの"にしていく監督の方が好みなのでやっぱり今泉力哉とは相いれないのかなと改めて思った。今作の何が酷いってどこから言っていいやらという感じですが、まずは監督本人のせいではない部分から言えば脚本、演技。なんだこの子供の絵本みたいなセリフと学芸会みたいな演技はと非常に怒りを覚えた。寒すぎる。無意識にため息が出た。そしてそこに輪をかけて酷い今泉演出。数日経って記憶に残っていないほど(怒りのあまり記憶から消した説)なので本当にしょうもなかったんだろうと思いますが、うすーい、さむーい演出で本当に「あの頃」を観ている時の様な気分になった。やる気ないなら撮らなけりゃいいのに。むかつく。

 

・サマーフィルムにのって - (伏見ミリオン座/2021.8.10)

監督 脚本:松本壮史。脚本:三浦直之。2021年。タイトルは知ってはいたものの演者や諸々の情報で劇場で観るまでも無いかなと思っていましたが、予告編を観て鑑賞を決めた。主演の伊藤万理華(元乃木坂らしい)のファンなのか若い観客の姿も見られた。客入りは結構入っており、50人ほどはいたのではないでしょうか。高校生、青春、映画作り、と聞くと「桐島、部活辞めるってよ」を連想させずにはいられないのですが「桐島~」とは全く異なる"映画作り映画"になっていた。特に女の子版ズッコケ三人組とも言わんばかりのハダシ、ビート板、ブルーハワイの3人のシスターフッドものともいえる全体像をメインに、様々な映画ジャンルを横断しながら(批判の対象としているキラキラ青春映画でさえ)、そのすべての要素とエピソードが絡まり合って進んでいく作劇に驚く。もちろんツッコミどころや、都合の良い場面は多々ありましたが、この作品が描きたいのはあくまでクライマックスにあるのです。作品自体がメタ的なのは言うまでもないのですが、メタにメタを重ねてミルフィーユの様な、はたまたロールキャベツの様な状態になったまま突入するクライマックスの超展開には脱帽&落涙。ハダシが描く登場人物たちはハダシ自身だし、そのハダシ自体が松本監督自身を描いているラストの展開には、映画作りとはなんだ、映画とはなんだ、という部分を真摯に考える姿勢があるからこそのチャレンジだと思い、非常に感動をした。殺陣からの壁ドンなんて超名シーンだろう。ただのキラキラ映画を批判するだけの物語にならずですごいなとも思った。クライマックスの展開に関しては、"映画を止めるなんて"という様な批判の声もある様ですが、それはあくまで作品を止めないために(何ならダメ押しの一歩のために)、ハダシと松本監督のラストシーンに向かうために必要だったと思うので、まあそういう批判があるのは分かりますが個人的には気にならなかった。ものを作る際に"本当にコレでいいのか?このラストでいいのか?"とか最後の最後まで悩むその姿の再現にもなっており、良かったと思う。

 

天才たちの頭の中~世界を面白くする107のヒント~ (原題:Why Are We Creative?) - 3.2/5.0 (U-NEXT/2021.8.9)

監督:ハーマン・ヴァスケ。2019年。デヴィッド・ボウイにタランティーノ、ジム・ジャームッシュ、ビョーク、ペドロ・アルモドバルなどなどなど...の有名芸術家に"Why Are We Creative?"と質問を投げかける"だけ"のドキュメンタリー。はっきり言って途中からどうでも良くなってしまった。偉人たちの言葉は興味があるがあまりにも工夫の無い構成がダラダラと続くために集中力を保つことが出来なかった。序盤こそは面白く観られたのですが、知っている人もいればもちろん知らない人もいて、そこがつまんないと言っている訳ではなく、観客はほぼ全ての人がそうであろうにその谷間というか波の部分へのどう魅せていくかの工夫が無い所がなんだかドキュメンタリーとして残念だったなと思った。序盤で誰かが言った"複数の価値観がある環境でのみ創造力は生まれる"と"子供はみんな創造力があるが、年を取るにつれてどんどんとそれを失っていく"いう様な内容の話がなるほどなと思った。
 

・ヒューゴの不思議な発明 (原題:Hugo) - 3.7/5.0 (Blu-ray/2021.8.8)

監督:マーティン・スコセッシ。脚本:ジョン・ローガン。原作:ブライアン・セルズニック。2012年。スコセッシ作品の中でも明らかに異質な一品を鑑賞。いかにもジュブナイル、キッズムービー的な画の佇まいとは裏腹に"映画史"の発端を明らかにし、それを登場人物のお話の中に入れ込むという構造(そういう原作らしいです)でした。スコセッシがこの作品の肝と見据えたのは、あくまでも"映画"というものにかつて燃やした情熱、対して少年が存在の意義を見出そうとする情熱とをうまく昇華させるという部分で、さすがの着地になっていた。クライマックスでヒューゴが公安官に懇願する"分からないんだ...!"という訴えは非常にクるものがあった。3D作品らしいので描写のいくつかが不自然なのは劇場で観たかったなあとは思う。全体的にまったりとした温度の作品ではありますが、名匠マーティンスコセッシ。さすがでした。意外に良かった。

 

・オンリー ゴッド (原題:Only God Forgives) - 3.8/5.0 (Blu-ray/2021.8.8)

監督 脚本:ニコラス・ウィンディング・レフン。2013年。「ブロンソン」「Drive」に続きニコラス・ウィンディング・レフン作品を鑑賞。一言で言えば相変わらずのクセっぷり。大クセにもほどがあるでしょう。終盤のグルグルと周りながら串刺しにしていくシーンが印象的すぎた。話全体としては非常に陰惨かつ地味な話で、台詞もあまりない、音もない、とかなりとっつきにくい表現になっている。また、鑑賞後にいろいろと調べると信仰の話だったりしたようなのでそのあたりは不勉強が出てまたしても旨味の理解不足があったよなと感じる。ただ、そういった部分は一旦忘れてもそれでも強烈に印象に残る作品だった事に間違いはないので成功なのだろうと思う。ギャグなのか大真面目なのか表裏一体、紙一重、そういうかなりキ○ガイじみた雰囲気も正直感じ取れた。

 

・すばらしき映画音楽たち - 3.4/5.0 (U-NEXT/2021.8.7)

監督 脚本:マット・シュレイダー。2017年。「ようこそ映画音響の世界へ」を観てとても楽しかったのでそれよりも前に作られていたこちらも楽しみにして鑑賞。全編、"映画音楽がどう普通の音楽と違うか、こういった作品でこういう音楽が使われています"という様な内容で、もちろんそれはそれで"へ~"と思いながら観たのですが、結構それだけという感じ。「ようこそ~」の時の様な発見や感動はあまりなかったかなというのが率直な感想。終盤眠たくなった。もっとこういう場面でこういう音楽が流れているのにはこういう理由や効果があって~とか、存在の理由や効果を知りたかった。

 

・映画 太陽の子 - 3.3/5.0 (MOVIX三好/2021.8.6)

監督 脚本:黒崎博。2021年。公開初日。20人ほどの客入り。年齢層は高め。有村架純主演という事とパッとみた感じのメインビジュアルが良かったので見る事は決めていた。そもそもが原子力爆弾をつくるための科学者が主人公のお話なので8月6日に公開されたのかもしれないが、まず先に書いておくと、この映画の良い部分はそこくらい。8月6日に見て改めて原子力爆弾や戦争について考える事に意味があるのだと思う。結論からいえば、映画はわりとつまらなかった。もしかしたら反戦や戦争の悲惨さを伝える事が主目的では無いのか?と思うくらいに、甘く、薄っぺらく、表層をなぞっただけの様な話を120分見せられただけだった。文句を言いだせばかなりたくさんあるのだが、3人の主要人物たちみんなに、ある。柳楽優弥演じる科学者は原子力爆弾をつくる事自体に葛藤をしているらしい(し実際に"これでいいのか?!"と喚く画面もある)が、そこに至るまでの気持ちの揺れ動きが圧倒的に描き足りないと思う。それがうまくいっていない事がこの作品の一番の失敗だろう。今から有村架純と三浦春馬のキャラクターにも文句を書くが、そうやって3人の心情を見せようと欲張った結果がこのザマなのではないかと思う。初めからこの人1人の葛藤を深く深く描けばもっと違った味わいになっていたのに。有村架純は居る意味があるんだかないんだかわからない非常に空気の様な人物になってしまっていて、どう見せたかったのかがマジでわからない。終盤で(予告でも使われていたが)"勝ち負けなんてどうでもいいから戦争が終わって欲しい"と叫ぶシーンがいかにも良いシーンげにくさ劇伴とともに配置されているが、たしかに言っている事は本当にそうなのだがどうしても綺麗ごとにしか聴こえないし、"うん、そうだね"くらいしか思う所が無い。これは大失敗ではないのだろうか。三浦春馬に関しても入水自殺するまでに追い詰められているようにも見えない。まず、主要人物の行動や描写に全くもって説得力がない。そして、まだまだあるが、一つだけ。食べ物だ。基本的にこの映画に出てくる食卓はとても敗戦直前の日本の食卓とは思えない内容が並ぶ。主人公が結構裕福なのかなと思ったが、終盤プルトニウムを取りに行くシーンでも仏前には盛りに盛られた米が輝いており、とても気になった(あとから食べるから良いのかもしれないが)。そして、極めつけはこの映画のクライマックス、一番泣かせたいのであろう、ラストのおにぎりもぐもぐロングショット。うん、でかすぎるよね。なけなしの米を全て握ってくれたのかもしれないけど、そんなのわかんないし。こういう事をされると作品自体が非常にどうでも良くなる。途中から結構どうでも良くなっていたが終わる頃にはあきれ返ってしまった。福山雅治の気色悪いファルセット歌唱の主題歌もはっきり言って気持ち悪い。いや、気色悪い。

 

・アフターショック (原題:Aftershock) - 3.1/5.0 (U-NEXT/2021.8.5)

監督:ニコラス・ロペス。脚本:イーライ・ロス。アンドレア・オズヴァルト。アリエル・レヴィ。製作:イーライ・ロス。2012年。昔のアトロク音源で絶賛されておりチェックしていたものを鑑賞。全体は90分の作品なのですが、まず最初のアイドリングが長い。40分はさすがにやりすぎだろう。せめて30分でなんとかして欲しい。地震をきっかけに惨事が起こり出した最初はテンションが上がったし、結構コメディ的な描写も多く意外なバランスだよなと思いながら興味深く見た。金持ちデブファザコンハゲのポヨというキャラクターが中盤の仲間のために涙を流して助けを請うシーンや、イーライロスが動けなくなる所から焼き殺されるまでの一連の流れなど、スプラッタ映画の中にも人間味やドラマ部分などがウェットなまでに表現されていてこの作品の特徴として光る。ただ、(夜中に見たのがいけないのだが)だんだんと興味の持続が難しくなってきて最後の方はかなり眠かった。クライマックスの地下道の伏線には、おー!となったがラストシーンの津波は、あ、そういえばそうだったね程度の感想になってしまった。またいつか見直してみたい。

・屋敷女 ノーカット 完全版 (原題:Á l'interiéur/Inside) - 3.8/5.0 (センチュリーシネマ/2021.8.5)

監督 脚本:ジュリアン・モーリー。アレクサンドル・バスティロ。脚本:アレクサンドル・バスティロ。オリジナル版2007年。「返校」を見るつもりでいたのに何故か「屋敷女」を見ていた。メインビジュアルからして韓国のホラーなのかなと勝手に思っていたがフランススプラッターだった。特にこれは"四天王"と呼ばれている作品の一つで、この度ノーカット版が公開されたという事らしい。上映スケジュールとにらめっこしながらもこちらのを観劇。平日昼間にして20人ほどは入っていたか。話はあって無いようなもので、ひたすら無音プラス突然の狂気的な効果音(これがすごい)、容赦無いゴア描写と結構きつめのシーンが続く。果たしてこれを良しとしていいのかという事すらわからなくなる様な壮絶な内容だ。作品としては、フランス映画だからか知らないがとにかくテンポが悪い。悪いというか、遅い。遅遅スプラッター。ある意味スローコアの様な破壊力で、遅いながらも一撃が激重。的な。そして、こちらもアイドリングが長く、最初の30分ほどは物語もいきなり動いてないし、かなり眠かった。中盤から最後まではすごすぎて集中して観ましたが。クライマックスで突然ゾンビ風になったり、いろいろと疑問が残る展開もありますが、話を力技で超強引に締めようとするのが逆にちょっと面白かった。中高生くらいの男女4人グループが開始直前にいそいそと入場していたが見終わったあとどんな話をしたんだろうか、そっちが気になって仕方ない。

 

 

・いとみち - 3.8/5.0 (センチュリーシネマ/2021.8.2)
監督 脚本:横浜聡子。原作:越谷オサム。2021年。全編青森にて撮影。横浜監督の生まれも青森だ。不勉強のため同氏監督作品は初鑑賞。SNSでの評判が高かったので楽しみにしていたがなかなかタイミングが合わずギリギリのタイミングでなんとか観る
事が出来た。月曜日昼間、観客は7人ほど。センチュリーシネマの2番スクリーンは数年ぶりに入ったが2列目でも圧迫感無く、こんなにだったかなと思う程こじんまりしていた。普段は大きな映画館、スクリーンが好きなのだがここの小さいスクリーンは何故だか嫌いじゃない。"三味線"と"方言"をキーワードに女子高生・いとの成長とシスターフッド的なメイド喫茶仲間たちとの繋がりを描いた。まず何がいいって、画が良い。これは間違いない。すごく綺麗にバシッと要所を抑えて青森の愛おしさの様なものを撮るなあと思っていたら横浜監督の地元だという事でなんとなく納得。一瞬、観光地の宣伝ムービーみたいなあざといカットも観られるが、美麗な画面で美しい自然の実景を見られるのはとても気分が良い。前半は地味というか、どちらかというと"漫画っぽい"演出や展開が気になってあと一歩ノレずにいたのが後半、いとが自ら"動くために"はとする行動と、仲間たちと潰れかけたメイド喫茶を"止めないために"はとする行動がリンクしていき、映画としてのスピード感やドラマティックさがグイグイと熱を帯びていく作劇がとても良かった。終盤は、それまでコツコツと積み上げてきた描写でいとの周りとの関係性や家族のドラマを魅せられ、特に何か起きるわけではないのだが涙が溢れた。ラストの三味線でのライブシーンが個人的にはかなり微妙、というかあそこだけ何だか非常に安っぽく、薄っぺらく見えてしまい、最後をどう見せたかったのかが分からず最終打に欠けるなという感想になってしまったのが残念だった。ラストで大泣きする準備は出来ていたのに。でも良い映画でした。他の作品も観てみようと思う。

 

・ドライヴ (原題:Drive) - 4.1/5.0 (DVD/2021.8.1)

監督:ニコラス・ウィンディング・レフン。脚本:ホセイン・アミニ。2011年。「ブロンソン」に続き同氏の作品を鑑賞。続きで言える事かもしれないがとにかく"この監督は変わっている"と小学生並みの感想だがこれは大きな声で言える。そして、圧倒的に他者視点というか、俯瞰しているかの様な冷たい表現、描写、画面、がかなりクールに綴られる。これも小学生的に一言でいえば、"かっけえええええ!!!"、に尽きるのではないでしょうか。今作も後半タガが外れた様に一気に悲惨な事態を迎える展開や容赦無い暴力描写に感動。編集テンポも独特で強烈な作家性を感じずにはいられない。が、自分の映画リテラシーでは語る事はまだまだ難しそうなので、これくらいしか書けませんがとにかく非常にクセがあって変わっていて硬派でクールでかっこいい!そして、面白い!見るしか無いでしょう。