観た映画 2021年9月 | BTJJ

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リハビリの為のタイピングブログ

■2021年9月に観た映画

21本(劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)

短編 3本

 

・鼓動 - (U-NEXT/2021.9.30)

監督 脚本:品田誠。2019年。藤原季節が出ているので鑑賞。短編なのですが、これは一体どうしたかったのかというのが最後まで分からなかった。長い予告編?ただ物語の導入部分を観せられただけにしか感じなかった。短編ってこういう事じゃなくない?感がすごい。点数もつけられなかった。

 

・死霊館 (原題:The Conjuring) - 2.2/5.0 (U-NEXT/2021.9.30)

監督:ジェームズ・ワン。脚本:チャド・ヘイズ。キャリー・ヘイズ。2013年。敬愛する三宅隆太監督のPodcast(スクリプトドクターのサクゲキRADIO)でこの「死霊館」シリーズの最新作のパンフレットに寄稿することになり、本シリーズを全くの未観だったので慌てて観たら作劇的に非常に面白いシリーズだった!という熱弁を聴き、一応観て観るかと思い鑑賞。う~ん、三宅監督の仰っていることはよく分かりますが、個人的な好き嫌いでいうとどうしても乗れないというかあまり好みではない部類の作品だったので、"ふ~ん、たしかにねえ"と思いながら観たがそれ以上の感想は持てなかった。そして、どう頑張っても画面が暗すぎる。タブレットの画面で観たのが悪いのですが、これはしっかりと暗い環境で観ないとだめだなとよく分かりました。

 

・バッド エデュケーション (原題:LA MALA EDUCACION) - 3.7/5.0 (WOWOW/2021.9.28)

監督 脚本:ペドロ・アルモドバル。2004年。9月のWOWOWはペドロ・アルモドバル特集という事で全作品もちろん録画で楽しみにしていました。観たものもいくつかありましたが未観のこちらを鑑賞。ゲイ、オカマ、ヤク中、映画監督、劇中映画、役者、嘘のキョウダイを名乗る人物、実はあの人はその人だったなど、いかにもアルモドバルです!という様なプロットが満載の大喜び作品だった。やはりこういうテーマの時のアルモドバルが一番輝いているよなあと心底思う。"なんだか「ペインアンドグローリー」みたいな話だな"と思いながら観終わりネットでいろいろと情報を調べていると、"監督の半自伝的な作品"とあり、"「ペインアンドグローリー」じゃん"となった。向こうを先に観てしまっていたので、どうしてもちょっと落ちる感は否めないですがそれでもしっかり面白く、とても切ない話だった。やっぱり変な映画(本人にとっては変ではないと思いますが)を真面目に作っている人間の作品は面白い。録画したWOWOWがクライマックスで15分ほどブロックノイズ出まくりで観れたもんじゃなかったので翌日レンタルDVDにて補完して鑑賞した事を記録しておく。

 

・ディアスキン 鹿革の殺人鬼 (原題:Le daim) - 1.5/5.0 (WOWOW/2021.9.27)

監督 脚本:カンタン・デュピュー。2019年。番組表の紹介を読んで何となく録画したものを何となく鑑賞。最初こそ意外と画面のテイストがジャンルもの(そりゃタイトルに殺人鬼って入ってるくらいだからね)の感じとは違うフワッとした()雰囲気だなと思って意外に面白いかもと思いましたが、約77分ほぼ意味の無いというかつまらない画面とお話が展開されるだけで"何もない"とはまさにこのことかと思う様なちょっと分からない作品でした。もちろんお話の内容は分かるのですが、観終わっても"だから何だったんだろう"としか思えず、世界中のジャケットを奪い取り、自分だけがジャケットを着たい狂人が狂った果てに殺人を繰り返すというのは悲しい呪いの様なお話でしたが、だから何だろう。。。結局何も感じ取る事が出来ず、ただただ無意味な77分を人生の中から失った様だった。"燃ゆる女の~"のエロイーズが出てた。

 

・明日の食卓 - 2.7/5.0 (WOWOW/2021.9.25)

監督:瀬々敬久。脚本:小川智子。原作:椰月美智子。2021年。予告を観る限り面白そうで、サスペンス?だったりミステリー?だったりするのかなという感じでまあ観てみるかとWOWOWの録画鑑賞。菅野美穂、尾野真千子、高畑充希の3者がそれぞれ演じる母親とその子供"ユウ"。予告にある"誰が息子を殺したのか?"の展開が無かったことにまずは拍子抜け。これは予告詐欺というのではないでしょうか。百歩譲ってその部分が菅野美穂演じる親子のエピソードに集約されているとして、そこをこの作品の主題だと捉えるのであればはっきり言って他2組の家族のエピソードって必要ないですよねと。まず尾野家の子供にはリアリティが全くもって感じないし、そもそもあそこまでのレベル(庭に排泄する)の認知症のおばあさんってあんなまともに話せないと思うし、認知症に見えないし、父親のクソ親像や全てがステレオタイプで"ポーズ"にしか見えない。高畑家の親子のエピソードに関しては、本筋と関係がある様に思えない。こういうふざけた事をやっていると本当に舐めてんなとテンションが下がる。作品自体も137分と長尺でその2組のエピソードが無ければ100分くらいにまとまってたんじゃないの?と。何をもってこんなにも"ポーズ"だらけのシーンやプロットを盛り込み、無駄に作品を太らせて何がしたかったわけ?と結構ムカつきました。良かった事と言えば、終盤唐突に大島優子演じる"息子殺し"の親と菅野美穂が対面するシーンが出て来るのですが、その直前のシーンのミスリードは上手く(すぐ真相を観せるのも良かった)、面会の薄いアクリル板を隔てた紙一重感(息子を殺してしまう親と、そうでない親)や、半透明の菅野に重なる大島の顔の画面作りなどはやる気を感じられ良かった。故に"結局ここが撮りたかったんでしょ"感も強まってしまい、余計に他のシーンが超蛇足に感じた。結局この監督が何を言いたいのかよく分からないが、"問題提起げ"なポーズばかり並べる社会派風映画にとにかく腹が立った。

 

・先生、私の隣に座っていただけませんか? - 3.4/5.0 (MOVIX三好/2021.9.24)

監督 脚本:堀江貴大。2021年。アトロクのアレで超渋々鑑賞。うーん。。まあ、観ましたけど。。劇中の漫画はとにかく面白くなさそうでした。という事はこの話自体面白く無いよなとも思える。こういう話って、そういう部分がしっかりしてないと説得力にイマイチ欠けるのではないでしょうか。終盤、佐和子の書いたネームを観た編集者が"おもしろ~い!!"と言いますが、そこに全くノレず、何だか映画全体の説得力不足を露呈している様に感じてしまった。とは言え、プロット自体というかやろうとしていることは結構面白いと思うし、ラストの展開は三転四転して、一体どこからが漫画の中でどこまでが現実なのか観ている方でさえも混乱していく構造はクラクラする感覚を感じ、とても良かった。"漫画が現実を引っ張っていく"という様な構造を持っているので仕方ないのですが、やはり物語の転機だったり場面の流れがどうしても漫画を待たなくてはいけない作りに感じて全体的にもっさりした印象を受けた。120分の尺も正直長いよなと感じる。この程度のオチ(ここがぶっちゃけ詰まんなかったのも大きい)の話を魅せられるのであれば長くても100分ほどでゴールしてほしいのが本音。黒木華も柄本佑もあまり好きではない役者なのでより強くそう感じた。序盤は車の窓の外から車内の会話のカットバックを撮るシーンが多くどういう意図なんだろうと思っていたが最後までイマイチ分からなかった(のは自分のリテラシー不足か)。

 

・仁義なき戦い 代理戦争 - 3.7/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ/2021.9.23)

監督:深作欣二。脚本:笠原和夫。原作:飯干晃一。1973年。ミッドランドスクエアシネマが行っているフィルム上映企画で「仁義なき戦い」シリーズ完結まで全て上映が決まった様で、3作目を35mmフィルム鑑賞。フィルマークスの城定秀夫氏のコメントによれば日本映画もコンプライアンス的なものが影響しだした時代の作品らしく、そのせいなのかは分からないがこれまで2作とはっきりと色合いの違う作品でどことなくトゲが鋭くなくなったというか、今の言葉でいうなればエンタメ寄りになったというか(シリーズがヒットしたからでしょうけども)、沢山の人が見る事を前提にして作られている様な印象を受けた。この作品も次があるのが決まっている状態なのか、単品での決着を付ける気がない作品で、あくまで「代理戦争編」の様な体を保っていた。なのでかは分からないが少しドラマっぽくも感じた。映画として面白かったかと問われれば、はっきりと前2作の方が面白かったと言うだろう。(分かり易くなってて見易かったけどね)

 

・空白 - 4.1/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ2/2021.9.23)

監督 脚本:吉田恵輔。2021年。公開初日、初演。市松模様でしたがほぼフルハウスで65人ほどの観客が居たかと。「BLUE」に続き今年2本目の劇場公開作品で、吉田監督の乗りっぷりがよく分かる作品でした。冒頭からアバンまでの一連の流れが息を飲む緊張感とはこのことか、とにかく素晴らしかった。更に、開始から例の事故のシーンまでの間に各キャラクターの状況などをしっかりと観客に伝えるように画面を並べていく周到さと、事故のシーンに至るまでを"我々観客は一部始終全て(青柳が実際にバックヤードで何をしたかという事以外)を観ている"、そして"もう事故前には戻る事が出来ない"という当事者性、映画としての時間間隔をも持たせてから、さあ本題という映画的としかいう事が出来ない体験性も含めて、今年1アバンだったかも知れない。本編に入ってからも脚本も非常にスムーズで良く出来ており、全てのシーンに仕掛けが必ずあり、次のシーンに繋がっていくのも見事だった。タイトルにもなっている「空白」、これをどういう風に捉えるかでこの作品への感想は違ってくるかも知れませんが、"余白"だったり"隙間"だったり、そういった言葉でも代替えとまでは言わなくてもそういう捉え方も出来るのかなと思えた。皆それぞれに余白があり、隙間があり、そこを埋めるも埋めないも、塗るも塗らないも、関わるも関わらないもそれぞれだし、完全は無く、分かり合う事も出来ないんだなと改めて身につまされた。だからこそ、自分以外の人とコミュニケートする際にはそういった部分への想像力を互いに持たないといけないなと感じた。勿論ツッコミどころはありますが、作劇上納得の出来るものでしっかりと集中力をそがれる事なく観る事が出来た。急ぎ足で書いたのでまた加筆するかもですが、とても良かった。

 

・スロータージャップ - 2.7/5.0 (U-NEXT/2021.9.21)

監督 脚本:阪元裕吾。2017年。「ベイビーわるきゅーれ」に備えようキャンペーンという事で「ファミリー☆ウォーズ」「ぱん。」「べー。」「ハングマンズ・ノット」に続き鑑賞。冒頭の吉井健吾演じるアホ兄弟の障害者のシーンからかなり嫌悪感というかこれっていいのかな?感がすごいのですが、観進めていくとその描写は一体何だったんだというくらい全く脈略の無い話に転じていく(もちろん一応の繋がりはあるのですが...)。これは作劇とか考えてないよなと思わず苦笑い。ただただ撮りたいシーンを撮りまくるという感じでしょうか。で無理やりひっつけたというか。若い作家の自主映画はそれでいいし、むしろそれは年を重ねると作れなくなってしまうものでもあるのでこういうもの自体が遺せたことに意味はあると思いますが。後半は、まさかのお料理対決。食材もまさかの人肉。カニバリズム。狂いすぎでしょ。道行く母親を殺して赤ちゃんを盗み食うシーンとか、最初の障害者のシーンもそうですが、さすがに倫理観がついていかない。シーン自体は面白いんですが"でもこれ人肉なんだよなあ、オエ"みたいな。ちょっとさすがに胃もたれした。監督自身の精神状態が心配ですね。面白いけど、苦手。「人肉饅頭」と同じ感想か。


・浜の朝日の嘘つきどもと - 3.7/5.0 (伏見ミリオン座/2021.9.21)

監督 脚本:タナダユキ。2021年。予告編で観てどうかな~と思いながらも鑑賞。最近多い(様な気がする)メタ的な映画のお話。大体、映画を作るという部分にフォーカスを当てる事が多いと思うのですが、今作は"映画を観るという事(観る場所を守るという事)"に重点を置いて作劇されていく。福島放送の開局50周年記念製作。元々はテレビ版があったようでその劇場版と言った感じで新たに作られている。タナダユキ作品は初鑑賞。南相馬の創業100年の映画館"朝日座"の存続をかけ、高畑充希演じる主人公の浜野あさひが奮闘する。映画冒頭から、映画館を閉館する館長とのやり取りや、映画の仕組み、映画を支えに生きていく人たちがいるという事、そしてそういう人たちのとって映画館(または映画そのもの)の存在がどういう意義を持っているのかなどを描いていく一連のシーンで早くも落涙。のっけから"これはなかなかだぞ"と思いながらも鑑賞を始めましたが、時間の経過と共に少しずつ作劇上の矛盾点や、脚本の粗、(何よりもコレですが)編集テンポの悪さ、などが気になってきて少しずつ冷静になっていった。それでも終盤の大久保佳代子演じる恩師の死を挟み、映画館閉館を免れる流れはまたしても感動するのですが、うっすらとずーっと"でもこんな事ってさあ、無いよねえ"という想いがぬぐい切れず、この作品自体を好意的に捉え自らノッて行く姿勢があれば十分に楽しめる作品ではありましたが、わりと細かい所は気になった。全然嫌いじゃないし、むしろ好きなのですごーく何だか惜しいなあという様な感想を持った。大久保さんの演技ももしかしたら化けるのかなと思って観ていましたが、別にそこまで。そういう部分も惜しいなと。そして、何よりコロナ禍以降を描いているのにも関わらず街の人たちが誰一人マスクをしていないのはなぜ??という疑問も付きまとった。そういう部分に真摯に向き合った「茜色に焼かれて」などを観ているのでどうしてもね。と。(劇中で年号を出したりしていないので、コロナ終息後少し時間が経っていると言われればまあ納得も出来なくもないのですが。。それなら劇中で指定する必要がありますが)

 

・ラビッド ドッグス (原題:Cani arrabbiati) - 3.8/5.0 (U-NEXT/2021.9.20)

監督:マリオ・バーヴァ。脚本:アレッサンドロ・パレンゾ。1974年。"[ホラー秘宝まつり2021]にもラインナップされているこちら。本当は劇場で観たかったのですが、名古屋エリアの会場であるシネマスコーレは、おじさんしか来ない映画を就業時間中にやるという空気の読めない劇場なので(だから客が入らないんだよ!)(リーマンおじさんではなく無職おじいさんを狙っているのかも知れないけど())、どうしても見に行く事が出来ず、U-NEXT(神)で観た。"と、何度でも書きます。というわけで、ホラーじゃないマリオ・バーヴァ作品は初めて観たのですが、まさかの"密室会話劇クライムサスペンスロードムービー"というジャンルの闇鍋も良い所な作品でした。が、基本的には移動する車内での会話劇が映像の7.5割なので飽きてくるかなと思いきや、全くもってそんな事はなく、グイグイと引き込まれて観る事が出来た。ロードムービーの要素も大きく、逃げ出してみたり、給油をしてみたり、ブドウ泥棒をしてみたりと何だかんだ様々な事が起き、その中で強盗3人組の実は人間味のあるキャラクター造形を少しづつ作っていく(完全な悪役にしない。悪役の中にも人間性を宿す)作劇が巧みだった。時間の進行と共に、悪い奴らだとはわかってはいるんだけどと...いう感じがラストのどんでん返しに対してより驚きというか、色んな意味で"ショックさ"みたいなものを増していると思います。時折挟まれる広角レンズで下から撮ったアングルの画が印象的だった。

 

・ぐらんぶる - 1.8/5.0 (wowow/2021.9.18)

監督 脚本:英勉。2020年。何んとなーく裸の男たちの画が面白くて超軽い気持ちで観たかったのですがWOWOWで放送されていたので鑑賞。えーっと、どこから言っていいやら...。良い所を挙げるとすれば、冒頭のまさかのタイムリープものと分かった部分や、その付近の結構ストレートでくだらないギャグ描写などは面白かった。それ以降も度々挟まれるギャグがまあ面白かったと言えば面白かったが...。高嶋政宏の狂いっぷりと「MAD MAX怒りのデスロード」のあいつばりの乳首いじりが記憶に残った。それくらいですかね。悪かった所を挙げればキリが無いのですが、一番ずっといやだったのは画面の安さ、かな。DQNきもいとかいろいろまだまだありますが、画面がドラマにしか見えないのがマジで舐めてんだろと怒りを覚えた。本当にまだまだ列挙すれば無限に出てきそうですが時間がもったいないので止める。マジでひどい一作。エンドロールが横スクロールなのが初めて観るなあと面白かった。「小さいおうち」もそうだったかな?忘れた。

 

ハングマンズ ノット - 3.7/5.0 (U-NEXT/2021.9.16)

監督 脚本:阪元裕吾。2017年。「ベイビーわるきゅーれ」に備えようキャンペーンという事で「ファミリー☆ウォーズ」「ぱん。」「べー。」に続き鑑賞。これまで観た中だと一番長い時間の作品(87分)となる。一貫して強烈な、まさしく"容赦ない"暴力描写は坂元作品印か。これまでの3作品にはチャームの様な部分(というかコメディタッチ)がちょくちょく顔を出していたのですが、この作品に関しては極力そういった部分をそぎ落とし、よりシリアス且つ"怖い"ものへと昇華されていた。多くの部分を乾いたタッチで描き切るため、笑いの部分が真剣な画面の中にある滑稽さや面白さなので意図していない様にみせて実はより笑えてしまうという様な感触に繋がっているのも上手いなあと感じる。サイコパスVSヤンキーという構図や、基本的に"悪人s悪人"が多いなという印象。だからこそ救いの無い物語へと発展していってしまうなとも感じる。これまでで一番長い作品ということで、実際若干の中だるみ感はあるのですが、それでも光る才能には惹かれるものがある。この先どういった作家に化けていくかはかなり際どい所ですが、しっかりと成功をして欲しい期待の作家である事は間違いないなと思う。


・麻薬密売人 プッシャー (原題:PUSHER) - 3.6/5.0 (U-NEXT/2021.9.16)

監督 脚本:ニコラス・ウィンディング・レフン。脚本:イェンス・ダール。1997年。レフン監督作品を久しぶりに。デビュー作。この「プッシャー」シリーズは後に3まで続編を作られているようです。"月曜日"から始まり、主人公であるフランクが徐々に道を踏み外していき、最終的("日曜日")にはもう戻れない所まで来てしまうという地獄の一週間を105分で描いた。初作とは言え、コラス・ウィンディング・レフン丸出しの画面と脚本で最初っから狂っていたんだなあというのを実感させられる。ただ淡々と時間を描いていくのだが、何故だか引っかかる画面になっているのがレフン監督の魅力の一つであり、私が好きな理由だ。もちろんこの「プッシャー」もそうで、最初から最後までどこか観客と距離を置いた温度感が良いのかも知れない。突然起こるとてつもない暴力描写も怖さをより感じさせる様に機能している。

 

・べー。- 3.6/5.0 (U-NEXT/2021.9.16) 2016年

・ぱん。- 3.6/5.0(U-NEXT/2021.9.15) 2017年

監督 脚本:阪元裕吾。(「ぱん。」は辻凪子と共作)「ベイビーわるきゅーれ」に備えようキャンペーンという事で「ファミリー☆ウォーズ」に続き阪元裕吾監督の初期短編を2本鑑賞。「べー。」は2016年"学生残酷映画祭"のグランプリ作品(どんなグランプリだよ)。15分と35分の短編という事で、特に「ぱん。」の方は15分でこれ以上ないくらいのリズム感での作劇で短編はこうあるべきだろうという見本の様な見事な手腕を発揮。インディとは言えこれがデビュー作とは思えないほどのセンス。話自体はまあって感じですが、坂元監督"らしい"味のある作品になっていると感じます。「べー。」はタイトル通り、舌だしのオチがやりたかったんだろうなあというワンアイデア感はありますが、それでもバイオレンスを主軸にきちんとヒリヒリしたイヤな作品(褒めてます)をしっかり作れるそもそもの手際の良さというのは表れてるよなあと感じた。

 

・ファミリー☆ウォーズ - 3.2/5.0 (U-NEXT/2021.9.14)
監督 脚本:阪元裕吾。2018年。「ベイビーわるきゅーれ」が話題になっている阪元裕吾監督の過去作品。ホラー秘宝まつり2018出品。あまり監督の事は存じ上げないのですが「ベイビー~」鑑賞のため(U-NEXTの配信期限が迫っている事もあり)鑑賞。全編通してこれ以上ないまでのインディ臭さ。まあ自主映画なので当然なのですが。若干"イヤなインディ感"というか、こういう画質とかクオリティでこういう類の話をやられると、倫理観とか描写のイヤさとかもどんどん積み重なってちょっと受け付けない様な質感には(個人的な好き嫌いの話で)なりかねないのですが...なんとか完走。でも基本的にはずっとめちゃくちゃやり放題で面白いんですけど。とにかく終始エロとか嫌なエピソードばかりを綴っていくので胸焼け感は否めず、ずっとピークを突かれいるというか、ダイナミクスが無いというか、せっかくの描写もそれが"普通"になってしまうのは少し勿体ない様な気もします。ただ、しっかりとラストの大展開で更にめちゃくちゃなことになるのでまあ大丈夫といえば大丈夫なのですが。。他の作品も観てみよう。

 

・モンタナの目撃者 (原題:Those Who Wish Me Dead) - 3.1/5.0 (イオンシネマワンダー/2021.9.13)
監督 脚本:テイラー・シェリダン。脚本:マイクル・コリータ。チャールズ・リーヴィット。テイラー・シェリダン。2021年。アトロクのアレになり鑑賞。予告編の時点でこれは観なくていいやつ認定していたのでリスナー枠でガチャ引かれた時は思わずふざけんなよ!と言いたくなりました。本当に迷って、もうこれ別に企画に付き合う必要も無いよな~やめようかなとギリギリまで迷いましたが、宇多丸氏も"皆大好き、テイラー・シェリダン"とまで言っていたので渋々観る事にしましたが...という感じで。結果から言うと、寝た。ちょっとコンディション的にアレだったのもあるがやはり寝た。どうやら、"秘密をどうにかするために動いている殺し屋から逃げる主人公とこども、その親戚"という設定なのですが、主人公たちが追われている理由がはっきり分からないまま最後までいってしまってマジでノレないし、意味が分からなかった。ので、こちらとしてもどこに気持ちを持ったまま観ていいのかが最後までよく分からなかった。敵役2人もなんかしょぼいし、殺され方もタイミングも何から何まで全てが脚本のための動きでしかなく一切ハラハラすることも無く時間が過ぎていった。セリフや編集のテンポも悪い。眠くなるって。何でこれがこうなるんだろうとか、そんな事したらバレない?とか、山火事ってこんなスピードなの?とか、所々に挟まれるクソショボCG(こんなんならやらなきゃいいのに)とか、言いたいことが山ほどある感じでした。今年ワーストくらい来たかも。良かったところを挙げるとすれば、冒頭、家が大爆発するシーンは油断していたのでびっくりしたし、結構"これなら楽しみだ!"と最初はテンション上がりましたがそこがピークだった感(まあ爆発した直後にCGのしょぼさにがっくりしましたが)。

 

・浅田家! - 3.8/5.0 (wowow/2021.9.12)

監督 脚本:中野量太。脚本:菅野友恵。2020年。話題になっていたが見逃していたこちらをwowow録画にて鑑賞。めちゃくちゃストレートな作劇かつ脚本でウェルメイドと言えば聞こえはいいですが、なんだか道徳の教科書的な作品だった。個人的な趣味で言えば全然好きではないのですが、こういう作品があっても全然嫌じゃないくらいにはしっかりと丁寧に作られていてとても好感を持った。特に、ラストのお父さんの腕時計の件は、映像芸術でしか表せない表現になっていて、映画的でとても良かった。"写真"(と結びつく(死者との)思い出)がテーマになっている事自体が(もとは活動写真だった)映画と食い合わせが良く、というか映画そのものの様な仕組みになっていてその辺りも観ていて心地よかった。全体的に良く出来ているし、クライマックスでは少し泣いてしまい(これ映画館で見てたらめちゃくちゃ泣いていたと思う)、非常に良かったのですが、上記したストレート過ぎる脚本が若干やはり気になった。あまりにも真っすぐ進んでいく脚本は、村に入ってキャラクターに話しかけてヒントを教えてもらって次の場所へ行ったらまた次のキャラクターがヒントを教えてくれてというRPGゲームの様に思え、正直映画としてはどうかなという構成だったし、主人公と関わる登場人物が全員確実に善人なのがうすら寒いなという風にしか思えなかった。こういう骨組みの部分で根本的な欠陥があるとどうしても評価しにくく、もろ手を挙げて名作!と言えないなと思う。わりと良かっただけに少し残念だった。

 

・DAU. 退行 (原題:DAU. Degeneratsiya) - 3.9/5.0 (名演小劇場/2021.9.9)

監督 脚本:イリヤ・フルジャノフスキー。イリヤ・ペルミャコフ。2020年。日本公開2021年。369分。前作「DAU.ナターシャ」に続き2作目はなんと6時間9分の修行作品、という事で震えあがりながら、途中の寝落ちは覚悟しながらも体調万全でチャレンジ。結果から言うと、前作よりもはっきりと分かり易くはっきりと良くなっていて驚く。それは、単純に前作よりも"お話"があるからだとは思いますが、ずっと引き伸ばされる日常と共にある緊張感が続く6時間は一切集中力を切らす事なく進んでいく。前半は一瞬だけウトっとしましたが。。自体が悪化していく後半からは更にグイグイと引き込まれて行き、前半よりもあっという間の3時間に感じた。プログレとかと同じで、6時間引っ張ったからのカタルシスなのかラストの2-30分の畳みかけはとても良い映画体験になった様に思う。豚のシーンはどう見ても本物にしか観えずどうやって撮っているのだろうと不思議だった。豚の殺害シーンがあまりにもショッキングだったので、その後に登場人物を皆殺しにしろという展開が出てきた時に"これ一体今からどんな画を魅せられるんだろ..."と不安になりましたが、直接的な殺人シーンを描くのではなく、ラストの主題メッセージのナレーションと共にスパイたちが物を破壊する音が一種のトリップ的なノイズミュージックと一体となり繰り返されかなりこれも強烈なシーンとなっていてシビれた。特に、劇中印象的に使われていたグランドピアノを壊すときの"ガーーン!!!"という不協和音のリフレインをうまく使い、音像、音響効果としてもいかにも"残忍な事"が起こっている感じを作り上げていた。とても良かった。アジッポがケツで演奏するピアノとハープシコードの曲が名曲かつ印象に残った。と、どこから書いていいのか分からないのでかなりぼんやりした感想になりますが、思い返すと、印象的なシーンが多かったなあと思う。10年後くらいにまた観たい。

 

・アナザーラウンド (原題:DRUK) - 3.8/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ2/2021.9.7)

監督 脚本:トマス・ヴィンターベア。脚本:トビアス・リンホルム。2020年。日本公開2021年。予告を観た時点から気になっていましたが丁度アトロクの課題映画になったので意気揚々と鑑賞。予告編に漂うムードとは相反して、本編は終始シリアスな飲酒シーン(どんなシーンなんだ)が続く、かなりシュールな空気の作品でした。主演のマッツ・ミケルセンの力もありますが、整った画面と気を遣った被写界深度のメリハリで飽きる事なくグイグイと画面に引き込まれた。終始コメディタッチで描かれるし、自分自身が飲酒に思い出深いという事もあり、かなり楽しんで観られた。わかるわかる、と頷く場面ばかりではなかったですが、それでも人には人なりの酒との思い出があるし、そこにすがらないとやっていけない時もあるよなあ(自分は無いけど)ととてもクルものがあった。また、もちろんただそれだけの作品ではなく、終盤の展開であり本作の主題でもある"自分の人生の現在地や境遇は酒のせいではないし、何かのために飲酒するではなく祝杯をあげるために酒を飲もうよ"というメッセージにそれだけで信じられるなと感じた。まあ、少し幼稚な話の様な気もしますが(大人の観客がそれでノレないのは分かる気もする)...。デンマークでは飲酒に対するハードルがかなり低い様でティーンも飲酒出来るのでそういった境遇の子供が観るのにはとても教育的価値があるのではないのかなあと思う。それは子供大人な日本の成人観客にとっても丁度いいのでは。。宇多丸氏がラストシーンに対する評で、"飛び立つ様にも捉える事が出来るし、堕ちていく様にも捉える事が出来るラストカットが素晴らしかった"という様な内容の事を言っていたが非常に素敵な着眼点で良かった。

 

・シャン チー/テン リングスの伝説 (原題:Shang-Chi And the Legend of the 10 Rings) - 3.4/5.0 (イオンシネマワンダー/2021.9.6)

監督:デスティン・ダニエル・クレットン。脚本:デヴィッド・キャラハム。2021年。基本的にはアメコミものはかなり苦手意識を持っているのですが「スーサイドスクワッド」が楽しめたのでこれもいけるっしょ!アジアンヒーローだし!とか思いながらチャレンジ。何かで観たのですが色々時代は変わり"各人種にとってのヒーロー"というものをMCUやそういったエンタメが用意するのは必然なのでは無いかと言う様な話のもとこういう映画が登場したし、「フェアウェル」で大好きになったオークワフィナもまさかの出演という事で結構期待してました。序盤のバスでのアクションシーンはアクションの内容もさる事ながらスピード感や派手さで非常に感動した。闘うシム・リウとバスを運転するオークワフィナがスクリーンで奮闘する姿には先述した"俺たちのヒーローが居た!!!!"ととても高まり本当に感動したし、ちょっと泣きそうになりました。アジアンヒーローが日本人では無いのが残念ですが、カンフーアクションなどの映画の歴史ありきでたどり着いた事を考えると、まあ納得もします。ここまでは完璧で前のめりで観ていたのですが、時間と作劇、表現を重ねる毎にノレなくなっていき、終盤のファンタジーアクション+魔法?とかよく分かんない世界観になって完全に冷めてしまいました。まあそういうもんだよと言われればそうかも知れないし、"え?!MCUってこういう感じなの?!"とも思ったし、とにかく何だかなと感じた。実写版ドラゴンボールってこんな感じですか(知らんけど)?父親との確執の物語でもあり、明確な敵ボスが居ないのものめり込めなかった原因かも知らないですが、とにかくラストの決戦もカンフーアクションで魅せて欲しかったよなと心底思いました。とさ。

 

・ドロステのはてで僕ら - 3.9/5.0 (wowow/2021.9.5)

監督:山口淳太。脚本:上田誠。2020年。何かでオススメされて印象に残っていた一作、タイミング的に観られそうだったのでwowowの録画で鑑賞。70分の小作。"2分後の未来が観られるPC"と、"その2分前の今"とを合わせ鏡の様にしてまさに"ドロステ効果"で作られた作劇をワンカット風に綴っていく(なんて説明したらいいんだ!)。というワンアイデアで1作作ってしまおうという自主映画のフットワークとアイデアが詰め込まれた作品で、かなり面白しろかった。冒頭こそ、"2分後の未来"と"それに追いつく今"を合計2回ずつ見せられるのがダルいなと感じましたが、このプロットでこそ生まれる時制のウネリが面白く感じ気にならなくなっていった。この時点でアイデアとして勝ちだと思う。所々に"ヤクザ"や"怪しい二人組"など明らかに物語のフックになるであろう登場人物が出て来るのですが、まあその分かり易すぎさはご愛敬(コメディとしてのチャームもそこにあるのがすごいと思う)という感じで良いのではないでしょうか。観ながら、きっとホラー的になっていくか、もっとサスペンスフルになっていくかして盛り上げていくのだろうなあと思っていましたが、意外なホッコリ着地で何だか拍子抜けもしたけれどこれくらいのテンションで逆に良いのかもなあとも思った。なんとも素晴らしいアイデアとやる気で作られた作品だなあと気持ちが良かった。

 

・処刑男爵 (原題:BARON BLOOD) - 3.7/5.0 (U-NEXT/2021.9.3)

監督:マリオ・バーヴァ。脚本:ヴィンセント・フォートル。1972年。[ホラー秘宝まつり2021]にもラインナップされているこちら。本当は劇場で観たかったのですが、名古屋エリアの会場であるシネマスコーレは、おじさんしか来ない映画を就業時間中にやるという空気の読めない劇場なので(だから客が入らないんだよ!)(リーマンおじさんではなく無職おじいさんを狙っているのかも知れないけど())、どうしても見に行く事が出来ず、U-NEXT(神)で観た。序盤こそ結構ダルいなと思いながら観ていましたが、街中での追いかけっこをする中盤あたりからテンポがあがり最終的には結構楽しめた。ズームしたり戻したりを繰り返す手法も面白かったし、男爵の正体を探るミステリー的な展開をしていくのは意外で、晩年ならではの円熟味か非常に飽きさせない作劇や描写はさすがの出来栄えだった。ただのホラーB級作家ではない!(当たり前だろ!)という事を思う存分に感じる事が出来た。そして、最後はまさかのゾンビオチで大団円。面白かったです。