観た映画 2021年10月 | BTJJ

BTJJ

リハビリの為のタイピングブログ

■2021年10月に観た映画

21本(劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)

短編5本

 

 

・守護教師 (原題:동네사람들) - 3.4/5.0 (U-NEXT/2021.10.26)

監督 脚本:イム・ジンスン。2018年。マドンソクがガチで強そうに見える作品ランキング上位に入る作品だった。話はよくある感じで特に感想はない。

 

・かそけきサンカヨウ - 3.8/5.0 (伏見ミリオン座/2021.10.26)

監督 脚本:今泉力哉。脚本:澤井香織。2021年。今泉力哉新作という事で劇場鑑賞。予告編を一度観たかな?という程度でこれと言った情報もないままの鑑賞だったので、子供たちがメインの話で少し驚いた。「愛がなんだ」の澤井香織が共同脚本としてクレジットされていたので期待をしたのですが、セリフが浮いている様に聴こえる瞬間が無くもないかなという感じだった。子供が演技しているので仕方ないのかな(演技経験が浅いという意味で)とも思う。キーパーソンである陸を演じた鈴鹿央士の柔らかな存在感が終始してこの映画の"子供観"(所謂テーマ)を保持している役割なんじゃないかなと思う。良かった。成田凌の演技っぽいなとも思ったのですが影響を受けているのかは分からない。陸くんはフェリーニのTシャツを着ていた。構造上仕方ないのかも知れないが113分の作品のわりには尺以上に長く感じてしまった。今30代で(勿論それなりに色々あるが)普通の家庭環境にて育った自分から見て共感し得る部分だったりは少なかったと思うが、自分が今まで通って来た道や今の令和の世に青春を生きる子供たち(他者)の視線を観るという意味では豊かな映画体験だった。画面に映るものは説明がないにしてもちゃんと画で最終的には全て案内をしてくれる。この映画は下手したら平板だと感じる人もいるかも知れないが、結構難しい事をやっているのに簡単に見えているのは作劇が上手いからに他ならないだろうと思う。今泉監督は不思議な引力の映画を撮るなあと思う。バランスが独特。

 

・黄龍の村 - 3.8/5.0 (シネマスコーレ/2021.10.25)

監督 脚本 編集:阪元裕吾。2021年。「バイビーわるきゅーれ」に備えて阪元裕吾作品を観ようキャンペーン中(一体いつ観るんだ)という事でようやく阪元作品を劇場鑑賞。「ある用務員」からメジャー配給という事で今作は『東映』のロゴがデカデカと誇らしげに出て来るのが何だかすごい違和感あった。で本編始まると見事にいつもの阪元ワールド。陽キャ大学生軍団のスマホ録画の縦画面から始まり(まさかこのまま最後まで行くのか?と不安になったけど勿論そんなことはなかった)、舞台となる村に到着すると同時にアメリカンビスタへとサイズが広がっていく。序盤こそ自主制作時代の延長感が強く出ていましたが、後半になるにつれて(「すじぼり」などでも見られた)スピード感のあるアクションシーンが目立つ様に。というかほぼそればっかりに。このアクションは確かにすごかった。伊能昌幸のフィジカルでゴリ押し出来るのが相当に強み。ここが当然見せ場であるのですが(未観の「ベイビー~」や「最強殺し屋~」あたりもアクション推しっぽいのですが)、素人感の強く残るカメラアングルや編集テンポ、画の安さも相まってこのアクションシーンの連打は正直、飽きた。し、眠くなった。この山場を越えると急激な転調(まあこれもいつもの阪元印ですが)を迎え、クライマックスへとなだれ込む。ラストはジンガイと化した神(という名の捕虜)を「デス・プルーフ」ばりの高速タコ殴りで画面のテンションと共に上げていく。ゲーム<鉄拳>ばりのパンチの連打と噴き出す体液?には思わず笑ってしまった。"打ち上げっしょ~!!"からの"劇終"でスパッとラスト。面白かった。才気とチャームが同居する貴重な存在。カメラワークや、脚本、(編集もか)は相性の良い誰かが見つかるのを願っているという感じが正直なところですが。今後に期待は変わりません。良かった!

 

・CUBE 一度入ったら、最後 - 3.2/5.0 (イオンシネマワンダー/2021.10.25)

監督:清水康彦。脚本:徳尾浩司。2021年。オリジナル版があまりな自分には今回のリメイクがどう映るのかなという感じで楽しみにしていた一作。演者にはお金がある程度掛かっていますが、シチュエーションや実際の撮影自体にはお金がかからないので出来た座組であろうという感じ。内容の方は、オリジナルよりもかなりウエットな方向へと舵を切っており、設定こそCUBEではあるが最終的には"THEジャパニーズ商業映画リメイク"というのが丸出しな感じの着地。いちいち挟んでくる主人公の過去は、映像で見せられて"どう可哀想でしょ?"みたいなポーズを取られても知らんわとなってウザかったし、得意げなスローモーションや顔面どアップには辟易した。シャラメ以外耐えられない所業だろ。岡田将生の演技も正直どうかと思った。これ"まあまあ頑張った方かな"と観た後は思ったけど、なんかひでぇ映画見せられた様な気がしてきたな。Filmarksに溢れる"星野源の主題歌が合ってなかった"とドヤ顔で書いてる連中は的外れもいいとこだし、星野源なんて完全なサイコパスだろと思うし、曲も良かったし、バックトラックもCUBE感と合ってて相当に良かっただろと1人ずつ並べてケツを蹴り上げていきたい気持ちになった。

 

・ハーレイ クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY (原題:Birds of Prey: And the Fantabulous Emancipation of One Harley Quinn) - 3.5/5.0 (WOWOW/2021.10.23)

監督:キャシー・ヤン。脚本:クリスティーナ・ホドソン。2020年。12月あたりにレンタル解禁される「スーサイドスクワッド」の再観に備えてハーレイクインを観ておこうという事で鑑賞。思ったよりも軽いテンポとノリで進んでいくのが意外だった。序盤こそ、ほうほうと感心しながら観ていたが折り返して後半のお話をたたんでいこうとしていく過程から(それまでの無理がたたったのか)設定に都合よい部分が噴出する様になり、最後の方はかなり都合の良いお話になっており、"うーんこれは..."という感じだった。しかし何度見てもハーレイの顔が好みじゃないのであまりノレない。

 

・北北西に進路を取れ (原題:NORTH BY NORTHWEST) - 3.7/5.0 (BSNHK/2021.10.23)

監督:アルフレッド・ヒッチコック。脚本:アーネスト・レーマン。1959年。DR画質で録画しているヒッチコック作品が溜まってきていてようやく鑑賞。これまで観てきたものがサスペンスものだったので有名作であるこれももちろんそうなんだろうなと思って観ていたら意外にアクション大作という様な雰囲気の作品だった。場面場面はやっぱり面白いし、集中して観ることは出来たけれどどうしても長いなあというのは否めなかった。最初から最後までしっかりとした作劇で非常に良く出来た一作でした。

 

・呪怨 白い老女 - 3.3/5.0 (U-NEXT/2021.10.21)

監督 脚本:三宅隆太。2009年。呪怨10周年を記念し(記念するな)「呪怨 黒い少女」と同時公開だった作品。「スクリプトドクターの脚本教室・中級編」を読んでいたらこの作品に関するエピソードがあり、敬愛する三宅監督の作品だという事と、本に書かれた事を確かめたく鑑賞。ある家族が悲惨な結末に向かう話なのですが、一家それぞれの人間とその周りの人達との小エピソードといくつも並べ(所謂"群像劇"風)クライマックスに向かい作劇していくという作り。冒頭からの"今行きますから、少し待ってください"のリフレインも否応なく怖いし(しかもきちんと結末で回収されるのもうまかった)、謎が少しずつ明かされていく作りもお見事でした。三宅監督の"バスケババア"が認知されたのでスピンオフ的に出て来るのですがこのビジュアルが何とも怖くないのだけが定期的に集中力を削ぎに来ている感じだった。映画としての豊かさがどうとかそういう事を話す様な作品では無いので画面に関しては特にいう事は無いのですが、とてもきちんと作られており、60分の作品としても無駄なく観られる事が出来て良かった。南明奈の演技はちょっとどうなんだろうという感じだった。(「黒い少女」の方はかなりダメっぽいのですが、出演者を見たら加護亜依の文字があり少し見たくなった)

 

・ダウン バイ ロー - 4.0/5.0 (センチュリーシネマ/2021.10.19)

監督 脚本:ジム・ジャームッシュ。1986年。何のタイミングなのかは分かりませんが[JIM JARMUSCH RETROSPECTIVE2021]と題して全国の映画館で12作をリバイバル上映中。友人にもファンがきちんと居る数少ない監督の1人なのでちゃんと観ないとなあとは思いつつも、個人的には「パーマネント・バケーション」(集中していないのもあったとは思うが正直全然分からなかった)、「パターソン」(こちらは結構楽しめた)の2作しか観ておらず、「パーマネント~」のせいで何なら若干の苦手意識も持っているので恐る恐るセンチュリーシネマへと足を運んだ。平日昼間に客入りは16人ほど。センチュリーは大小のスクリーンがあるのですがこの特集は(ほぼ)大きい方のスクリーンでやっているっぽくて気合を感じた。肝心の作品はというと、モノクロの映像で107分間、前半は2人の男が知人にダマされて逮捕されるまでを描き、後半でその2人がともう1人の外国人が同じ牢屋に入れられ脱獄を図るという、ただそれだけの話。内容だけ取ってみたら80分くらいで良さそうな気もしますが、監督特有の間の長いカットの連続でゆったりとした作劇をしていく。今作に関しては特に画面が整理されていたり、前半に画だけで見せていた場面が後半に生きてきたりと非常に練られた画面の美しさを観る事が出来る。また、終盤の沼?っぽい所のヌチャっとした感じだったりがモノクロ映像だととても映えていた。話は"なんだそれ!"と突っ込みたくなるような部分もまあまあありますが、何とも言えない3人のチャームなノリや空気がここだけにしかない特別なものを観ているという様な雰囲気になっていた。ラストカットも非常に印象的で、何か大きな事が起きるわけではないのですが、この3人は映画の中での時間の前と後では違う人間になっているんだろうなあとほっこりと感じて良い余韻を残す。良かった。

 

・DUNE/デューン 砂の惑星 (原題:Dune) - 3.5/5.0 (2021.10.18)

監督 脚本:ドゥニ・ヴィルヌーヴ。脚本:エリック・ロス。ジョン・スペイツ。2021年。未レビュー。このままにしとくと思います。

 

・尾道 - 未採点 (U-NEXT/2021.10.17)
監督:大林宣彦。1963年。中断していた[大林宣彦青春回顧録 DVD SPECIAL EDITION]を観てしまおうと思い鑑賞シリーズ。これは深夜のNHKで流れる旅行映像というか、なんというかインタビューで監督も語ってましたが"1950年代後半から1960年代前半の尾道の風景が収められています"というその言葉そのままの映像。それだけ。こないだ見返した今泉力哉「街の上で」で"文化は遺るけど街は変わっていってしまうからね"というセリフでも聴いた様に、もうこの世には無い風景、かつての尾道の姿が収められているという意味では大林監督の幼少期の育った街でもありますし、それこそ監督自身の記憶かの様なそういったノスタルジーとしても機能しているんだなと思う。

 

・最後の決闘裁判 (原題:The Last Duel) - 3.8/5.0 (ユナイテッドシネマ岡崎/2021.10.16)

監督:リドリー・スコット。脚本:ニコール・ホロフセナー。マット・デイモン。ベン・アフレック。原作:エリック・ジェイガ―。2021年。予告を観てまあこれはパスかなどうかなと迷っていましたがアトロクのアレで鑑賞。土曜日の昼の回でしたがお客は16人ほど。大手シネコンでかかっている作品でこれはちょっと寂しい気も。リドリー・スコット自体には好印象を持っているのですがなかなか作品を数観るには至っていない作家。中世が舞台で「決闘」で「裁判」と来ると個人的にはかなり苦手意識というか興味が沸かない言葉の並びなのでどうかなと思いましたが結構楽しめた。決闘の要素も裁判の要素も一応ありましたけど、こんな邦題にしなくても良いのではないかと。で、肝心の内容ですが、3章に章立てて群像劇システムで作劇される。主人公、その妻、主人公の親友の3人がそれぞれ同じ事を語っているのですが、微妙に解釈や表現が違い、人によっては嘘が混じってくるというまあよくあると言えばよくある感じ。最後の章である奥さんの章の時にだけ"the truth(真実)"と強調されていたのでそれが本当にあった事なんだろう(という素直に解釈をする)とクライマックスまで観客は身をゆだねる。何が正義で、何が悪なのか、決闘とは。結局のところ正義なんて個人のものなので、必要ないし意味がないものだよなあと強く感じた。最後の決闘はどちらも死ねばいいのにと思いながら観た。一応、主人公であるマット・デイモンが勝つのですが、最後のひと突きはアダムドライバーの喉奥に剣を突き刺すというとても痛そうな死に方がgood。お話自体は別に、という感じでしたがまあ楽しめた。

 

・木曜日 - 未採点 (U-NEXT/2021.10.15)

監督:大林宣彦。1960年。キネマ旬報が出版している「大林宣彦メモリーズ」を読み始めたので、中断していた[大林宣彦青春回顧録 DVD SPECIAL EDITION]を観てしまおうと思い鑑賞。大林監督の20分以内の短編はいくつかあって、それまで観た「だんだんこ」「形見」とどれほど違うものかと思いまいしたがまあ違いましたね。無声映画なので解釈も難しいのですが。この「木曜日」は編集のテンポというか編集自体が攻めており、細かいかなり早いカット割りの応酬でクライマックスを構成していたり、結構前衛的で大林宣彦初期からやってんなあ感はかなりありました。採点はせず。

 

・PITY ある不幸な男 (原題:Oiktos) - 3.6/5.0 (センチュリーシネマ/2021.10.14)

監督 脚本:バビス・マクリディス。脚本:エフティミス・フィリップ。2018年。日本公開2021年。「聖なる鹿殺し」のエフティミス・フィリップ脚本作品。全く観る予定に入れていなかったのですが何かの拍子に予告を観て鑑賞。公開1週目平日昼間観客は10人。"すごい変な映画だった!!"という感想を言いたくて期待して観たのですが、実際に観終わって思ったのは"ずいぶん待たされたのに出てきた料理が美味いとも不味いとも違う何とも言えないものだった時の様な感情"だった。もちろん変は変なのですが。"妻が事故をして意識が戻らない不幸な男に酔い切ってしまった男の顛末(とは一体。男は狂ってしまったのか?)"というプロット自体は面白いなと思ったし、そう思ったからこそ見に行ったのですが...たしかにお話はそのままなのですが作劇上の3パート目(催涙ガスを発動し(アクション的に一番大きくブレーキが利かない状態になってしった時点))の配置位置がもう15分ほど早く来たらもう少し集中力高く観られたのになと。99分しかない作品なので15分削るとなるとかなり削る羽目になるのでもはやそれは...という感じなのですが、要するに中弛みしたと。要所要所に挟まれる大音量のクラシックは結局のところ、主人公が不憫エクスタシー(人から可哀想ねと思ってもらえると感じて)をビンビンに感じている表現で、アホみたいで面白かった。し、天丼的に繰り返されるのには思わず笑ってしまった。ラストはまさかそこまで行ってしまうとは...という怖さがしっかりと演出されており、良かった(ラストカットの犬も良かったね)。というか、結構全体的に良かったのでは?と思うのですが、やはりどうしても全体的なテンポ感が許せずこの点数に着地。観終わって時間が経つにつれて面白かったなと感じる。filmarksのレビューなどには、代理ミュンヒハウゼン症候群の映画だというコメントも多いですが、半分分かるような、そうでもないような。という感じ。

 

・プッシャー2 (原題:PUSHER II) - 3.7/5.0 (U-NEXT/2021.10.13)

監督 脚本:ニコラス・ウィンディング・レフン。2004年。マッツ・ミケルセン演じるトニーが1に引き続いて登場。彼のアナザーストーリーとでも言いましょうか。基本的な質感や肌触りは前作と変わらない印象。ひたすらドライに冷たくそして突如として起こる暴力描写と、自らの選択が自らの人生を破壊していくという点はその後の作品群にも共通するニコラス・ウィンディング・レフン監督の作家性だと思う。ただ、今作は前作よりも暴力描写は控えめになっていて、どちらかというとトニーのキャラクターで引っ張っていく様な作劇に感じた。それだけマッツ・ミケルセンに可能性を感じていたのかも知れないが。特に印象的だったのは子供(赤ん坊)の存在。特に、全てが壊れもうどこにも希望が無いまさしく"どん底"に自ら落ち切ったトニーの視界に入った唯一の希望である赤ん坊を持ち去るラストシーンには少しだけ希望がある。し、どうしようもない登場人物だが子にとっては親だし、彼が必死に縋り付きたかった光なのかなとか考えると何とも言えない鑑賞後感がある。赤ん坊が目をつむって眠りにつくラストカットもじんわり良い。狂人監督が魅せる突然の人間味に驚く。「3」も楽しみだ。

 

・修羅ランド - 2.0/5.0 (U-NEXT/2021.10)

監督 脚本:阪元裕吾。2017年。いつものメンツによるいつもの感じのショートフィルム。12分。阪元監督の10分台の短編は「ぱん。」とコレしか存在していないと思うのですが、「ぱん。」のテンポの良さや、彼がこれまでチャレンジしていないような内容にチャレンジしたという部分で良かったのですが、この作品に関してはいつものメンツと特に内容も無くただただ手癖で作っただけの宿題?作品の様な感じで本当に響くものがなかった。インディ時代の自主映画にこういうものは別にあってもいいとは思うけれど、ここまで何もないものを作る必要があったのかな?というのも疑問。

 

・ソウルフル ワールド (原題:Soul) - 3.7/5.0 (Disney+/2021.10.10)

・夢追いウサギ (原題:Burrow/監督:マデリーン・シャラフィアン/2020年) 

・22番VS人間の世界 (原題:22 vs. Earth/監督:ケビン・ノルティング。脚本:ジョッシュ・クーリー/2021年)

監督 脚本:ピート・ドクター。2020年。Disney+が観られるようになったので気になっていたこちらを。ピクサーものは観てみようという気になりますね。まずはなんと言っても導入から観られる暗闇部分の画面の良さ(この表現でいいのだろうか)。これはテレビ画面ではいかんだろうなあと感じた。キャラクターの造形や、"魂"を具現化したビジュアルは過去作(インサイダーヘッドなど)にも観られるようなもので正直新鮮味はなかったけれど、こういうものだろうと納得は出来た。"死にたくなかった人"と"まだ産まれたくない人(魂)"が交流をし、互いが"死ぬこと"と"生きること"を理解し、受け入れていくという内容。特に観客は自分自身が今生きている以上、劇中で言うところの"きらめき(最後の1ピース)"を手に入れた側の存在としてどうしても見ていく事になるので、自分が固有に大切にすべきものや大切に捉えるものがあって、それは絶対に誰とも違うし君は君なんだよと背中を押してくれる様な力強いお話として機能しており、とても気持ちが良かった。大きな展開があるわけでは無いけれど非常に芯を食った骨太な作品に感じた。

 

・おらおらでひとりいぐも - 3.3/5.0 (WOWOW/2021.10.9)

監督 脚本:沖田修一。原作:若竹千佐子。2020年。なかなか食指が伸びず観ていなかった作品をようやく鑑賞。「横道世之介」「滝を見にいく」の沖田監督ですので、評判も良いし楽しみにして鑑賞。主人公の(イマジナリーフレンドとはまた違うかもしれないが)自分との会話を繰り広げていく魅せ方は、原作そのままらしいですが試みとしては非常に面白かった。特に、濱田岳、青木崇高、宮藤官九郎の3人が出て来る最初のカットは結構斜め上いく演出で面白かった。"過去の自分"が出てくる作品は無条件で弱い私ですが、それでもこれはちょっと距離のあるまま見切ってしまった感は否めない。作劇がどうも回りくどく、ダラダラやっている様な印象になってしまったのが原因の様に思う。最初の"地球誕生シーン"や終盤の"マンモスとの闘い"シーンなどちょっと理解が難しい部分も目立った(お話的にはもちろん分かりますよ、あくまで演出としてね。)。改めて「横道世之介」は奇跡の様な作品だったんだなあと思う。沖田監督は森田芳光監督に非常に影響を受けているそうですが、なんだか納得するような攻めっぷりだった。

 

・007/ノー タイム トゥ ダイ (原題:No Time to Die) - 3.6/5.0 (イオンシネマ岡崎/2021.10.8)

監督:キャリー・ジョージ・フクナガ。脚本:ニール・パーヴィス。ロバート・ウェイド。2019年。日本公開2021年。長尺でしっかりとたっぷりとアクション&人間模様を魅せてくれる。アバンタイトルがとにかくカッコ良かった。むしろそれだけで良いくらい。シリーズに思い入れないのでその程度の感想だった。アトロクのアレで鑑賞。というのがTwitterに書いた感想。まあそれくらいの感想しかないのですが。とにかく最初の30分は初めて007シリーズを観たからか予想していた以上にアクションシーンの連続で結構テンションが上がった。その後は、作劇的にはすごく真っすぐに進んでいくストーリーでしたので特に難しい部分も無くただ流れに身を任せて観て行けばそれなりに楽しめるのはさすがの娯楽作という感じでした。だんだんとノレない部分が増えてきて、まあ最後はそれなりの着地をしたかな(個人的に)と思う。アクションシーンも最初のうちはスピード感や迫力が新鮮だったものの、ゲームズボンドにとって都合のよい殺陣にしかなっておらず、楽しめる余白が少なくなって行ったように思う。ライダーショー的というか、敵はあくまで死ぬためだけに存在しているので窮地を乗り越えながら敵を倒してもまあ感動が無い。ラストのボス?との闘いも"え、もっとこうしたらいいじゃん"と思う部分がいくつもあり、自爆オチもふ~んとしか思えなかった。最初こそ、"シリーズ今からでも追ってみてもいいかな"と感じましたがまあ別にいいかという結論に至った。

 

・メイン テーマ - 3.7/5.0 (U-NEXT/2021.10.7)

監督 脚本:森田芳光。原作:片岡義男。1984年。[森田芳光全映画]を購入した事もあり、先日再鑑賞した「家族ゲーム」に続いて森田作品を。お話があるような無いような、ロードムービーの様なそうでも無いような、非常にふわふわした薬師丸ひろ子とふわふわした野村宏伸の2人が繰り広げる(言ってしまえば)ふわふわした"青春映画"。劇的な事が起こらない事が青春なのではないだろうか、そう、そうだったはずだ。と思い起こさせてくれる。全編に渡り森田監督の何とも言えないギャグが散りばめられている。画面の作り込みやそこに隠された可笑しみのようなものに目が行きだすとどうしても愛着がわいてしまう作品であることは間違いない。冒頭の、園児にセクハラをされた瞬間に園児を殴り倒すシークエンスで"名作に違いない!"とテンションが上がってしまった(その後の車で追い掛け回すシーンとかも強烈だったけど)。他にも言い出せばキリが無いので列挙することはしませんが、とにかく最初から最後まで気のふれた変なシーンが連発される。個人的に大好きなのは、終盤のしずくちゃんをモーテルに誘いOKを貰って興奮する大東島君がめちゃくちゃにチャーミングで面白いシーンだった。当時の角川映画で薬師丸ひろ子が主演となればそれだけで商業映画として担保がされている様な状態だったと思うのですが、(それを利用してなのか)それでもアバンギャルドな姿勢を貫く森田芳光という監督の作家性や精神性にまた一つ興味を持った結果となった。(感想。加筆するかも)

 

・フォードvsフェラーリ (原題:Ford v. Ferrari) - 4.1/5.0 (WOWOW/2021.10.7)

監督:ジェームズ・マンゴールド。脚本:ジェズ・バターワース。ジョン=ヘンリー・バターワース。ジェイソン・ケラー。2019年。日本公開2020年。観よう観ようと思いながらようやく鑑賞。ホームシアターが本格的に完成したら観るぞと思いながらだったのでようやくでした。爆音鑑賞。しかしながらこれは映画館で観たかった...。アツい展開に燃え、シブい終わりにシビれた。というのが真っ先な感想なのですが、ベタでありながらもマット・デイモンとクリスチャン・ベイルの男のやり取りにはこみ上げてくるのがあり、レースシーンというのは基本的にこぶしを握って応援せざるを得なかった。クリスチャン・ベイルが奥さんに車の中で脅迫されるシーン、自宅前で取っ組み合いの素人ケンカするシーン、フェード社長を(またもや)車内で脅迫するシーン、などなど今ぱっと思い出しただけでもチャーミング且つ印象的で泣けたり心が動く様なシーンをいくつも思い出せる。実話なので仕方ないのかも知れないが一筋縄ではいかないビターな幕引きに少々の苦い感情を持ったが映画としてやはり優れていて、こみ上げて来るものがある。作り手の武骨な心意気みたいなものをしっかりと提示してもらったような気がして非常に気持ちの良い映画だった。またいつか見返すんだろうなと思う。

 

・ディナー イン アメリカ (原題:Dinner in America) - 3.6/5.0 (伏見ミリオン座/2021.10.5)

監督 脚本:アダム・レーマイヤー。2020年。予告を観てふ~んと思っていた程度でしたが知人の絶賛により鑑賞。客入りは23人(数えた)。感想を言えば、最終的になんだかノリ切らなかったなあというのが本音。プロット自体もどこかで観たような感じだし、実際に内容を観てもベタだなあという様な感想以外ない感じでした。何なら差別的な発言だったり、セクシャリティの部分とかが結構蔑ろに作られているよなあと感じた。"パンク、パンク"というのであればそういう部分って真摯であるべきではないだろうか。本気でパンクロックを愛している人はそういう部分には敏感なはずじゃないかなと思う。ただ、全体的にパンクのムーブメントである90年代のノリというか露悪的な趣味みたいなものを内包している表現なのでと言われてしまえば、"お、おん。。。"と言うしかないのですが。。そして同時にリアリティの部分の整合性の無さというか、あまりにも都合良過ぎな展開&登場人物の配置には疑問が浮かぶ。ベタだからリアリティ必要ないのかも知れないけれど、リアリティとのバランスが不思議な作品だった。クライマックスにあるライブシーンで発される曲は良かったかなと。作劇上も良く機能していて、タイトルとも絡み効果的だったと思う。パティと作ったオリジナル曲が意外と良かった。

 

・トムボーイ (原題:TOMBOY) - 3.8/5.0 (センチュリーシネマ/2021.10.4)

監督 脚本:セリーヌ・シアマ。2011年。日本公開2021年。「燃ゆる女の肖像」のセリーヌ・シアマの過去の短編が10年の時を経て日本公開。トランスジェンダーについての作品。10年前の作品という事で、10年前がトランスジェンダーに対してどういう空気だったのかを覚えていないのでそういった部分での今日との比較はちょっとし辛いのが個人的には感触としてあるのですが、"子供の"トランスジェンダーを描いた作品というのはフレッシュな切り口の様に思えますし、トランスジェンダーは何も大人だけの問題ではなく、それこそ自分と他人との境界線や、自分と社会との関わりなんてもっと分からないであろうティーンを主人公に据えて物語を描いていくというのがセリーヌ・シアマという作家のより鋭い先見性が感じられる。音楽(ほぼ無し)やセリフ(作劇上ヒントとして置かれている様な"セリフ")はかなり少なく、登場人物も子供がほとんどなので途中からドキュメンタリーを観ているかの様な錯覚に陥るほど、画面や物語に寄り添って作られているように感じた。本編の内容的には苦しい表現が続くのでツラい事にはツラく、結末は賛否両論ある様ですが前向きに捉えるとそれまでの流れが回収そして昇華されるような救いの物語に感じるようです。個人的にはもう少し答え(言葉のチョイスが難しいが)に近しいものを提示する事が(あくまで劇映画としては)"救い"だったり"理解"に繋がっていくのになあと感じた。主人公ロールの妹がひたすらに健気で可愛かった。

 

・殺人鬼から逃げる夜 (原題:미드나이트) - 3.7/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ2/2021.10.1)

監督:クォン・オスン。2020年。予告を観たのかな?か何かで気になったので鑑賞。公開すぐ且つ1日だったからか結構お客さんは入っていた。60人ほどは居たかなという感じ。比較的に若い観客が多く、普段あまり遭遇しない"本編始まってから入ってくる奴"が何人かいたのが意外だった。こういうの観に来るのね。本編の感想は、分かり易く韓国産スリラーと言えばそれまでですが、今作で何よりも目立ったのは"とにかく走る!"という事。主人公と殺人鬼がとにもかくにも鬼ごっこを繰り広げまくる。"言葉によるコミュニケーションが出来ない"というハンデを作劇の肝としながらリアリティも保ち、上手く展開していて良かった。緊張感のある画面の連打に若干の胸焼けをしましたが最後までしっかりとスリリングで満足。音楽は壮言過ぎたか。
(正直これを書いているのが時間空いちゃっているのでフレッシュな感想が忘れてしまってます)

 

・スリザー (原題:SLITHER) - 3.9/5.0 (U-NEXT/2021.10.1)

監督 脚本:ジェームズ・ガン。2006年。ジェームズ・ガン作品をと思い、鑑賞。ベタと言えばベタなような"宇宙から堕ちた謎の生命体が人間を侵食し、パニックになる"映画。なのですが、容赦ない描写と、"異物感"を出すにしても癖が強すぎるだろと突っ込みたくなるような描写の連発で、基本アホらしい話なのですが、振り切っているものには乗らざるを得ないのが現状。しっかりと最後まで面白く観ました。何だか薄い感想になってしまった。

(正直これを書いているのが時間空いちゃっているのでフレッシュな感想が忘れてしまってます)