観た映画 2021年11月 | BTJJ

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リハビリの為のタイピングブログ

■2021年11月に観た映画

21本(劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)

 

・回転 (原題:THE INNOCENTS) - 3.6/5.0 (DVD/2021.11.30)

監督:ジャック・クレイトン。脚本:ウィリアム・アーチボルド。トルーマン・カポーティ。ジョン・モーティマー。1961年。ジャパニーズホラーを掘っていくとたどりつく所謂"Jホラー的表現"の源泉の様な1作(らしい)。黒服や髪の長い女が何をするわけでもなく画面の隅からジトーっと眺めているのが視界に入ってしまう。これはやっぱり怖い。ある意味心霊写真的とも言える様な表現で、無言無動が故の"何をされるか(何を考えているのか)分からない怖さ"がじっとりと表現されている様に感じる。実際に自分が観てしまったらと考えたらひとたまりもない。また、"ひゅ~ドロドロ~おばけだゾ"的に無意味に現れるのではなく、お話上の理屈がある登場(今作では非常に切ないお話でしたが)で、"あぁ、この人たちも悲しいんだな、ツラいんだな"と思えるのはリアルというか。人間と人間ならざるもの(元人間という言い方でも良いか)の境目というか、目に見えない"(感情の)揺れ"の様なものが表現されていて良いなと感じる。怖いというより、不気味だし、悲しいなと思う。

 

・グッドフェローズ (原題:Goodfellas) - 再鑑賞 (ミッドランドスクエアシネマ名古屋空港/2021.11.29)

監督 脚本:マーティン・スコセッシ。脚本:ニコラス・ピレッジ。1990年。[午前十時の映画祭11]にてスクリーン鑑賞。以前観た時より1年2か月ほど経過しており、映画リテラシー()も上がったのかな?前よりもより理解度高く観られたと思う。結構駄話なイメージがあったのですが、わりと必要な会話しかしてないよなという印象に。画面のキレ味は良かったですね、やっぱりスクリーンだとじっくり観られるのが良い。

 

・ハロウィン (原題:HALLOWEEN) - 4.0/5.0 (U-NEXT/2021.11.25)

監督 脚本:ロブ・ゾンビ。2007年。「ハロウィンKILLS」の流れから宇多丸氏もオススメしていたロブゾンビ版を鑑賞。ていうか、79年のオリジナル版が配信も無し、レンタルも無しでどうやって見たらいいのかと詰んでいる。このリメイク版は前評判通り、前半1時間にマイケルの幼少期をしっかりと描いていてブギーマンの哀しい狂気みたいな部分に話の推進力を持ってきていた。終盤、ローリーに昔の家族写真を見せる辺りなんかは(行い自体はもはや人間とは言えない)マイケルの人間なのか、怪物なのか分からなくなる怖さみたいなものが更に強調されていて良かった。終始、殺しのシーンは多い今作ですが、終盤にかけての悲鳴合戦というかキャーキャーがすごくって最初はちょっとうるさくね?という感じで観ていましたが最終的にはこれはこれでかなり良いなと思える迫真のパニック演技だったんじゃないかと思った。ラストカットもまあ悲鳴なのですが、たぶん人間窮地に立たされてああいう状況になったらあれくらい動転してしまうよなと。めちゃくちゃ良かった、なんか。ラストカットが好きな映画上位に食い込むなあと。

 

・青天の霹靂- 3.6/5.0 (U-NEXT/2021.11.23)
監督 脚本 原作:劇団ひとり。脚本:橋部敦子。2014年。何かでオススメされているのを見聞きして鑑賞。初監督作という事でしたがとてもそうとは思えない出来栄えで驚いた。長回しを基調とした画作りがされていて、どのシーンも非常に丁寧に撮られている印象。どこまでプロの手が入っているかは分からないがきちんと自分で考えてやっているのだとしたら劇団ひとり、わりとちゃんと映画好きなのでは?と感じた。特にアバンまではとても良く出来ていた様に感じる。タイトル出る瞬間の落雷も"え!!"という様なビックリ感もあって良かった。様々なシーンが上記したように丁寧に作られ編集されていたのでとても好感を持ったのだが、肝心のお話や描写自体に段々とスタミナ切れが出てきてしまい、何だかノレない話になってしまったなあというのが最終的な感想タイムスリップした意味も得別に感じないし、お涙頂戴的な話運びにはゲンナリした。真摯に向き合っている姿勢は感じ取る事が出来た。劇団ひとりが映画撮っていることは驚かないが、これしか撮っていないのがどういう事なのかは若干気になる。まあ、そういう事なんだろうとは思いますが。ゴッドタンとかでたけしの服を着ていたりしていたのでたけし好きなんだろうなあと思っていましたが来年公開のNetflix映画「浅草キッド」の監督を満を持してメガホンをとるらしいのでこれまでやらなかった(という事はきちんと客観視して自分では力量不足だったのでやらなかった、でもこれはやる)(推測ですが)意味をしっかりとここで見せてくるんじゃないかなあとわりと期待しています。

 

・リトル ガール (原題:Petite fille) - 3.9/5.0 (伏見ミリオン座/2021.11.23)

監督:セバスチャン・リフシッツ。2020年。日本公開2021年。観客は25人ほど。9歳のトランスジェンダー少女の3ヶ月を85分のドキュメンタリーに収めた。カウンセラーとの最初の面談のシーンで、あんなに小さなサシャが見せる悲しみと怒り、そして親への気持ちがどう考えたってグサグサ刺さった。誰も不自由で良い訳がない。(大人はどうでもいいけど)自由を自ら選べない子供たちが不可抗力の不自由に晒されて良い訳がない。とても貴重なドキュメンタリーだと思う。ただ、劇中"見せ物じゃない"と言っていたのを観終わった後に思い出し、少し謎に感じたがきっとこうしたドキュメンタリーを公開する事に対してのリスクなんてものはしっかり分かった上での今作だし、誰もが"見せ物じゃない"と叫びたい部分をちゃんと見せたこの家族の勇気とパワーに感服するしかない。そういう事なんだと思う。劇中に何か所か抽象的な遊びの風景が出て来るが全てがルッキズムの事やセクシャリティーの事だったりと繋がる様な描き方をしていて唸った。

 

・アイス ロード (原題:The Ice Road) - 3.6/5.0 (イオンシネマワンダー/2021.11.22)

監督 脚本:ジョナサン・ヘンズリー。2021年。観客は9人。まあ、観ないっすよね。アトロクの課題作品になり鑑賞。"「モンタナの目撃者」級の傑作"という風にリスナーメールで紹介されており宇多丸氏も思わず突っ込んでましたけどw、どうみてもそのメールしてきた人以外は半笑いだよねという。リーアム・ニーソン主演!という銘打たれ方ですがまああんま観たことない俳優ですよね。個人的には。フィルモグラフィー観てもピンと来ないし。というわけでかなり萎えな気持ちで見に行きましたが、案の定というか何というか。映画としての魅せ方としては、作劇の教科書に載ってそうなベタな作りで驚きも感動も落胆も何もないままお話だけがきちんと進行して終わった。なんの感想もないかなと。プログラムピクチャーとしてきちんとハラハラは一応出来るので気軽に楽しむのにはいいと思うのですが、ランキングタイム109分とこれまた微妙な数字でもう少しソリッドにする必要はあったんじゃないかなと思う。敵役との肉弾戦が盛り上がらない上に長いのもどうかと思う。今時こんな描き方?と思う部分もあるけどまぁ。ねという感じで。"モンタナの目撃者級の傑作"にワロたけどこっちの方が全然アリだとは思います。

 

・MONOS 猿と呼ばれし者たち (原題:Monos) - 4.2/5.0 (今池シネマテーク/2021.11.19)

監督 脚本:アレハンドロ・ランデス。脚本:アレクシス・ドス・サントス。2019年。日本公開2021年。評判が高く早く観たかったのですが、名古屋ではなかなか公開が遅くようやく観る事が出来た。集中して観ていたはずでしたが中盤眠気が。。かなり後悔。。。セリフも多い訳ではなく、随所に挟まれる壮大な自然の中に浮かび上がる登場人物たちの画、不穏な劇伴、と一見するととっつきにくく硬くなってしまう様なキーワードが並んでおり、結構アート映画のつもりで観ていたのですが(実際そういう部分も多分にあるが)、途中で"あ、これ気楽に観ていいやつだ"と。気付くのが遅すぎた。もっと早く気付くべきだった。ちょっと肩に力入れ過ぎて観てしまった代償はデカかった。。そこからはかなり楽しめて、画面の構築美の匠さや、映画ならではの自然を捉えた(使った)ショット、終盤の濁流にのまれるシーンなんかはマジでどうやって撮ったのかと思うレベル。最後に救出されるのは誰なのか誰が死ぬのかなど、倫理というか理屈というかそういったものがあまり重視されていないような気もしますが、何かの結末を魅せる類の作品ではないと思うので気にならなかった。もう一度しっかりと観てみたいなと思う。

 

・プッシャー3 (原題:PUSHER 3) - 3.7/5.0 (U-NEXT/2021.11.18)

監督 脚本:ニコラス・ウィンディング・レフン。2005年。シリーズ3部作のラストを鑑賞。最後は過去2作にも登場した麻薬王ミロの晩年のとある1日を描いた。これまでにないミニマムなシチュエーション(娘の誕生日会場と経営するレストランのほぼ2か所のみ)で作劇も真っすぐに作られており、かなりシンプルな内容になっている。"いつ暴力が起きてしまうんだろう"というのがコラス・ウィンディング・レフン監督印だと思うのですが、今作ではクライマックスまでは我慢に我慢を重ねる造り。最後にビニール袋での拷問と、人間解体ショーの2つのショッキングシーンが出て来るのですがそれまで貯めた分、より強烈になって画面に表れた印象。まるで豚でも解体するかのように吊るされて臓物を掻き出されるシーンは何とも衝撃的。更に普段自分が調理をしているシンクで出した臓物をさばくなんてシーンも怖くて良かった(シンクでクルクル回る臓器に思わず噴き出してしまった)。全てを終えたミロが何事もなかったかの様に娘を会話をし、水の抜けたプールを見つめるラストカットは何とも空虚なこのシリーズを表現するかの様でとても良かった。2→3→1の順番で好き。

 

・ファニーゲーム (原題:Funny Games) - 3.6/5.0 (DVD/2021.11.17)

監督 脚本:ミヒャエル・ハネケ。1997年。「愛、アムール」に続き鑑賞。所謂"胸糞系"(僕は使いませんが)として有名ですが、まあ確かに胸糞。表面をなぞればそうなのですが。。劇中で何度かポイントで現れるメタ的な描写でこちらを思いっきり煽ってくる。クライマックスの巻き戻しシーンなんかも今でこそ"へ~"って感じですが、97年当時に観たらビックリもするし、こういうものに腹を立てる人もいるんだろうなあとは思う。ただ少し思ったのは、巻き戻しの手前のシーンで"劇場用映画の尺だと足りない"という超煽り且つ超メタなセリフが出てくるのですが、"劇場用映画"を作っているのに巻き戻しはしていいんだ、というのが少し気になったかなと。もちろんそれらを丸ごと飛び越えて煽っていると言われればそうなのかも知れないし、作っている過程で"あ、このシーン辞め、別のシーンにしよ"とかあるとは思うのでそれの再現と言えばそうかなともとれますが。やっている事自体は嫌いじゃない(むしろ好き)のでまあまあ楽しめました。アメリカ版があるっぽいので予告を見たらオチが違う?のかな観てみても良いかなと思った。ところで、観終わってから"なんか前に観たことあるよな~"と思いましたが記憶が定かではない。大学生の頃に観たような気も。。

 

・マリグナント 狂暴な悪夢 (原題:Malignant) 4.0/5.0 (ユナイテッドシネマ岡崎/2021.11.15)

監督 脚本:ジェームズ・ワン。脚本:アケラ・クーパー。イングリッド・ビス。2021年。平日レイトショー。さすが地元、客入りは2人。ジェームズ・ワンの新作だという事で評判も良く期待して鑑賞。結果から言えばとても楽しかった!所謂オカルトホラーな怖がらせ方から幕を開ける今作ですが、まずそのバケモノ描写がというか襲い掛かってくる様やそれを食らう登場人物たちの画があまり観たこと無いものになっていてまずはそこが非常に面白かった。そして、編集時点での話とは思いますがとても速いテンポでザクザクとハイテンションに画面を切り取りつなげていく様は転調をコロコロと繰り返し爆走するマスロックのバンドのようで刺激的だった。物語は徐々に"バケモノ"に対する謎が深まっていき、サスペンス要素が濃くなっていき最後はまさかのアクションへ。と、ジャンルをシームレスに爆走して横断していく感じを評価している人が多い印象ですが、個人的には最後アクションに着地したのでそのアクションシーンでどうしても眠たくなってしまった。これは自分のクセなので仕方ないのですが、アクションシーンになるとどうしてもそれまでの物語が停滞というか停まってしまう感じがして興味の持続が難しくなり眠くなってしまう。今回の作品に関しては"バケモノ"の正体が結局自分の"後半身"だったので(なんだそれ)(悪魔にしないのも面白い)、後退しながら(明らかに合成の)顔を後頭部にまとって警察官を殺しまくる様はむちゃくちゃで面白い画だった事は確か。クライマックス手前で若干間延びしたとは思いますが、全体的にとても面白かった。もう一回観たい。

 

・ミツバチのささやき (原題:El espíritu de la colmena) - 3.6/5.0 (DVD/2021.11.12)

監督 脚本:ビクトル・エリセ。脚本:アンヘル・フェルナンデス=サントス。1973年。日本公開1985年。非常に淡々と説明描写なく(そもそも要らないかも知れませんが)かなり静かに進んでいく。タイトルや冒頭のシーンにもある様に"ミツバチ"が作品全体に漂うテーマ。人体模型であるドン・ホセを使った授業が印象的だった。

 

・仁義なき戦い 頂上作戦 - 3.6/5.0 (U-NEXT/2021.11.10)

監督:深作欣二。脚本:笠原和夫。原作:飯干晃一。1974年。ミッドランドの35mmフィルム上映で観ていたシリーズなのですが今回見逃したのでU-NEXTにて鑑賞(ちなみに完結編も見逃した)。相変わらずのやんちゃっぷりでしたが、今作は主人公である広能が早々にお縄になってしまい後半は全然出てこなくて寂しかった。あくまで完結編がある上でのこの作品的な内容なのでそういった部分も成り立つのかなという感じだった。後半にやっとエンジンがかかって来た感じだったので全体的に物足りなくも感じた。

 

・ハロウィン KILLS (原題:Halloween Kills) - 4.0/5.0 (2021.11.9)

監督 脚本:デヴィッド・ゴードン・グリーン。脚本:ダニー・マクブライド。2021年。客入りは7人。前日に観た2018年版ハロウィンに多少がっかりしたので期待値を大きく下げての鑑賞になったのですがこれがそんなことどうでも良くなるくらいに素敵な出来で最高だった。2018年版で物足りなく感じていた描写や気合の様な部分を取り返すかの様なスピード感で暴れまくるブギーマンに歓喜。簡単に言ってしまえばスプラッタ!ゴア!スラッシャー!全部盛りでアガりましたと。ていうかこういうのが観たかったんだよ!と鼻息荒くなりますね。所謂ビジランテものな中盤の問題提起の部分は正直微妙というか、もっと良く出来たそういう作品はあるので何ともですが、そんなのまあご愛敬という事で。ね。宇多丸氏が評論で"精神病患者が危害を加える人ではない"ときちんと描いているのもちゃんとしていたという様な事を言っていた(超訳)が確かになと。ブギーマン自体が実は概念というかそういうものなのかな?とちょっとよく分からなかったの荒唐無稽が過ぎる結末も気にならなくはないが、話自体は矛盾していないのでオッケーです(Ⓒあいつ)。なんかめちゃくちゃ浅い感想になったな。
 

・ハロウィン (原題:Halloween) - 3.6/5.0 (2021.11.8)
監督 脚本:デヴィッド・ゴードン・グリーン。脚本:ダニー・マクブライド。2018年。「ハロウィンKILLS」を観るからみてみよう鑑賞。本当の1作目であるジョンカーペンターのハロウィン(1979年)も観たかったのですが配信も無し行ける所のレンタルにもなしという詰みゲーで見られず、リメイク版1作目の2018年版を鑑賞。全体的に薄味過ぎてあまり印象に残ってないのが正直な感想でしょうか。画面を観ても描写を観てもあまり気合を感じる様なバキッとした画面はなく、こういうジャンル映画でそういう部分が薄いのはかなり致命的なのではないでしょうか。。クライマックスの主人公の家にブギーマンを誘き寄せて3世代で撃破するという流れは熱気を感じたがまあそれまでという感じ。「セルフィッシュサマー」のデヴィッド・ゴードン・グリーンが作ったというのに驚き。どういう経緯で選ばれたんだろう。これはイマイチだなあと思っていたらこの後に観た「~KILLS」でばっちりバキバキでいろんなものをかっさらっていったので二重に驚き。

 

・アンテベラム (原題:Antebellum) - 3.5/5.0 (小牧コロナシネマワールド/2021.11.8)

監督 脚本:ジェラルド・ブッシュクリストファー・レンツ。2020年。日本公開2021年。客入りは7人。「ゲットアウト」「アス」のプロデューサーであるショーン・マッキトリックが製作として話題。予告を観てなんとなく観たいな~と思っていた作品。良く出来ているが都合良くも出来ていたというのが感想だろうか。大きく3部に分かれた作り自体や各設定は面白かったがそれ以上が無く(都合良過ぎな部分に引っ張られ)正直あまりノリ切れなかった。いつ悲惨な事になるんだろうとワクワクしながら観たがそのまま何も起こらずに終わってしまった。まずやっぱり今っぽい感じの題材を狙ったのかも知れませんがどうしても薄っぺらさが気になってしまった。クライマックスの"(黒人)女性の逆襲"のスローモーションの画をはじめやりたい画面があったんだろうなあと思う様な部分はいくつかありましたがどうしてもそれら先行で走り出している感じが隠し切れず(というかそれしかないからかも知れませんが)、話の軽薄さ、ポーズだけでやっている感があまり好きになれなかった。それこそ3部構成のつなぎ目自体だったり、いろいろと本編通して言いたいことはありますが、特にラストの解決に至るというかオチの部分があまりにもずさん過ぎてどうかなあという感じだった。ああいうヤバイ施設があるにしてもあんな町中にあるのは何故?と思うし、最後の最後でギリギリ張られていたフィクションラインの糸がプツリと切れてしまった感じがした。

 

・タンポポ - 3.8/5.0 (DVD/2021.11.7)

監督 脚本:伊丹十三。1985年。"元祖・飯テロ映画"とのこと、DVDにて鑑賞。冒頭から役所広司演じる男が第四の壁を飛び越えて話しかけてくるオープニングにマジでギョッとさせられる。そういう仕掛けのある映画はまああるのですけど何がすごいって、ただ話しかけてくるだけではなくてあたかもツレかの様なテンションで話しかけてくるその様に本当にビビる。"ラーメン・ウエスタン"と銘打っているそうですが、まさにその通りのお話。どのショットも非常に計算されていつつも敷居を上げない作りは、劇中の"うまい人気のラーメンを作る"という部分と呼応するかの様な作劇で見事だった。評判だけを聞いている状態で観たので正直ちょっとだけ拍子抜け感(お話的にもっと突飛なものなのかなと思っていた)はありましたが、それ位で、あとはしっかりとエンタメ作かつ面白い仕掛けも魅せてやろうという狙いがばっちり決まっている作品だと思った。終始謎の男の役所広司がお話のカルトさに拍車をかけていた。

 

・最強殺し屋伝説国岡 完全版 - 3.8/5.0 (シネマスコーレ/2021.11.6)

監督 脚本:阪元裕吾。2021年。オリジナル2018年。スコーレにて「ベイビーわるきゅーれ」に続いて鑑賞。こちらも更に多く55人ほどの観客。どちらも満席近く入っていて驚く。個人的にはやっぱりこちらの方が好み。モキュメンタリーのつもりで見ていたのですが途中からわりとその辺りどうでも良くなったのか、無理になったのか割と諦めて普通に撮ってしまっているのが面白かった。ホワイトベアーはじめ魅力的な敵がたくさん登場し、続編が作られるのもよく分かるし、阪元監督の本領はやはりこういう部分だよなあと思う。完成品としては「ベイビー~」とは正反対のものになってましたが、劇中貫かれる"殺し屋観(無い観)"はしっかりと強度を持って作家性として機能しており、心強かった。何度も書きますがこれからが非常に楽しみな監督です。満員の観客が爆笑する劇場体験も楽しかった。

 

・ベイビーわるきゅーれ - 3.7/5.0 (シネマスコーレ/2021.11.6)

監督 脚本:阪元裕吾。2021年。客入りは45人ほど。スコーレでこんなに入ってるのは個人的には初めて。長い「ベイビーわるきゅーれに備えて阪元裕吾作品を観ようキャンペーン」を乗り越えてようやく観られました、本作。まあちょっと寝かせすぎたというか、話題になっているのでどんなすごいものが飛び出すのかと楽しみにし過ぎましたね。ただ、きちんと"阪元裕吾"だし、"阪元裕吾らしくない"面もあって、ちゃんと"商業作品で撮るならば"という部分と闘った跡があって非常に良かったです。普段の監督のツイートとか見ててもそうだけどめちゃめちゃ"今"っぽい作品だなあと。そりゃ25歳なので当然なんですが。作劇上のもっさり感とか、これなんのためのアクションなの?みたいなこれまでの作品に蔓延していた部分は無くなっていたので、誰かの手が加わったのかなと思った(逆にすぐ後に観た「~国岡」の方はもっさりとダラダラしてましたね)。本編の内容には触れてないレビューになっちゃいましたけど感情の部分の感想はこんな感じ。映画的なルックで言えば断然ずば抜けて本作は映画らしく良い作品でした。(相変わらず脚本が弱い...早く誰か相棒を見つけてくれ....)これからに期待。

 

・ゴースト ドッグ (原題:GHOST DOG: THE WAY OF THE SAMURAI) - 3.9/5.0 (センチュリーシネマ/2021.11.4)

監督 脚本:ジム・ジャームッシュ。1999年。[JIM JARMUSCH RETROSPECTIVE2021]と題して全国の映画館で12作をリバイバル上映中。今回はこの作品と「ダウンバイロー」しか観られる事が出来ず、もう少し参加したかったのですがタイムテーブルとの折り合いがつかず、残念。客入りは13人。という事で、こちらの作品は、一言で言えば"変な映画!"いつものやつじゃねえかという感じですが、変なものは変。というか、段々とコントにしか見えなくなってくる。初期の北野武映画や松本人志のコントなどに通じる様な、静と動のメリハリから生まれる奇妙なリズム感と、緊張感、不思議さ、そのあたりの事柄がとても変なバランスで積み上げられていて、しかも大真面目な顔でそれをやっているもんだから笑えてくるという。えてして映画の中の笑いというものはそういうものだと思うのですが。[葉隠]に憧れる主人公が銃を使って侍の様に立ち振る舞ったり、ジジイのマフィア連中が役立たずで情けなかったり、きっかけであるボスの娘は恰好だけは一丁前だけど結局なんなのかよく分かんなかったし、登場人物全員が間の抜けたというか、チャームある連中でそれらを大真面目に描いていく様が何とも面白かった。ジムジャームッシュらしいといえばそうなのかも知れませんが、カット割りや編集テンポ、非常に面白いバランスの映画だった。こんな映画観たことないよ。音楽はアガる。

 

・愛、アムール (原題:Amour) -  4.0/5.0 (DVD/2021.11.1)

監督 脚本:ミヒャエル・ハネケ。2013年。何かでオススメを読み鑑賞。妻が脳梗塞を起こし、手術失敗からの右半身麻痺で介護状態となった老夫婦の終末期を描いた。冒頭の妻の死体発見現場からどうしてそうなったかを紐解いていく形での作劇。まず老人の介護の関しての描写は、私自身仕事柄でそういう現場に立ち会う事も多いのですが非常にリアルに描写されていると感じた。独特の画作りでひっぱっていく緊張感が物語の緊張感や寂しさといったものとリンクしてとてもクールな画面になっていた。鳩がとても印象的に2度登場。鑑賞後に考察レビューを観て鳩の解釈が凝ったものに感じ、すごいなあと素直に思った。結末としてはとても悲しい瞬間ではあるが、タイトルにもある通りそれは"愛"でもあるかも知れないし、長年連れ添った2人に分からない感情をきっちりと描いていた。染みた。今年公開の「ファーザー」と比べられる事が多い(「ファーザー」は認知症を発症した人側の主観視点でのアトラクション映画として傑作だと思う)とは思いますが個人的にはこちらの方が断然好き。数年後にまた観てみたい作品だった。

 

・血を吸うカメラ (原題:PEEPING TOM) - /5.0 (U-NEXT/2021.11.1)

監督:マイケル・パウエル。脚本:レオ・マークス。1961年。何のお勧めだったかは失念しましたがリストに入っていたので鑑賞(おそらく[奇想天外映画祭]のラインナップからかなと)。40年代よりも前から活躍するマイケル・パウエルの61年の作品(60年前!)。古さで言ったら自分が観てきた中でも古い方なのですが、全くそれを感じさせないカット割りや展開。"血を吸うカメラ"という仰々しいタイトルほどのパンチは無いのですが、きちんと異常者を描いており良かった。カラー作品でいて、きちんと色彩設計というか画面の色味がされており驚く。凶器がカメラではなく三脚なのが意外だった。