観た映画 2022年1月 | BTJJ

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リハビリの為のタイピングブログ

■2022年1月に観た映画

25本(劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)

短編1本

 

・孤狼の血 - 3.7/5.0 (Netflix/2022.1.31)

監督:白石和彌。脚本:池上純哉。原作:柚月裕子。2018年。2が評判いいのでそれを観る為にも1をと思い鑑賞。白石監督の作品は他のものも観たいな〜と思ってチェックしているものはあるものの何となく後回しにしてきたので初鑑賞。始まって即「仁義なき戦い」シリーズのオマージュとまでは言わないにしても敢えてなぞって作られているのがよく分かる。その時点で"あ、これは別に真剣に観てもしょうがないやつだ"と悟る事が出来たので非常に軽く観る事が出来て良かった。大真面目にこんなものは作らないだろと思うので、きちんとこういう導入で観客の鑑賞態度をある程度導いてあげるのは作り手としては正解だと思う。話も結構熱い話で、終盤役所広司が死んでからはラストまで緊張感高く見る事が出来た。ゴア描写も臆する事なく臨んでいたし、肝心の土左衛門死体や生首などもかなり頑張って作りこんであったのでとても好感が持てた。良い仕上がりだったと思う。うんこから始まるファーストショットも度肝を抜かれた。うんこ、ゲロなんでもございでかなり清々しかった。見終わってから振り返ると物語のフィクション性が非常に高かったなあと観ている時よりも更に感じたのでこれは作劇の上手さなのかショットや編集の上手さなのか演出の上手さなのかわからないが良く出来ているという事なんだと思う。主演の松坂桃李は出てくるといつも思うのだが松坂桃李力(まつざかとおりぢから)が強すぎて何をしてもどんな役でも松坂桃李にしか見えずあまり得意では無い。もちろん今作もそれはそうで、何とも言えないなあとも思う。

 

・ウォーターボーイズ - 2.8/5.0 (WOWOW/2022.1.31)

監督 脚本:矢口史靖。2001年。どういうわけか鑑賞。当時は結構ヒットしていた様に記憶している。矢口史靖監督作品は初鑑賞。始まってわりとすぐの段階でこれはしょうもないなというのが丸わかりでどうやって楽しもうかなという感じ。最後のシンクロのシーンがきっと評判であるはずなのでそこを期待してなんとか最後まで見たという感じでしょうか。肝心のクライマックスに関してですが、確かにシンクロのシーンはすごい。というか熱くなるものがあるなあとは思うし、実際に夏に劇場のスクリーンと音響で観たらそういう物として面白いのだと思う。が、それはそれとして別にいいとしてもそこに至るまでのロジックの積み重ねだったり、描くべきものの欠如というか基本的であり非常に大切な部分がごそっと抜け落ちてしまっており全くもって説得力のない映画になっている。何故のけ者にされたはずのシンクロ軍団に人が集まりしかもシンクロにきちんと取り組んだのか(テレビが来たというだけではさすがに弱いのでは?)、なぜ完全素人の連中があれほどまで上達したのか(練習シーンもさすがに少なすぎる)、竹中直人のキャラクターのリアリティと行動原理の理屈のなさ、などきちんと描くからクライマックスに説得力と感動が生まれるはずのプロセスを描いてなさ過ぎる。これではクライマックスを迎えても都合の良いお話にしか思えない。(様々事情があったのかもしれませんが)映画自体のランニングタイムが90分と結構タイトな作品なので、こればっかりはもっと時間を使って(30分たっぷりとそれらの構築に使って)120分くらいの映画にしても良かったのではないだろうか。"長いんだよ!短くしろ!"と思う映画はあっても長くしてちゃんと描写してくれと思う映画も珍しいなと思う。最後やりっぱなしで終わる感じはソリッドではあるしジャンル映画の潔さは感じるが、もっときちんとしたものにする必要はあったはずだと思う。

 

・赤い影 (原題:DON'T LOOK NOW) - 3.8/5.0 (DVD/2022.1.30)

監督:ニコラス・ローグ。脚本:アラン・スコット。クリス・ブライアント。1973年。イギリス映画のオールタイムベストの上位にランキングされているこちらを。配信系にはなかったのでレンタルDVDにて鑑賞。先日観た「ラスト・ナイト・イン・ソーホー」でエドガー・ライトが影響を公言しているのも手伝って興味がわいた。人通りの少ないイギリスの街並みだったり路地裏での一連のシークエンスには「ラストナイト〜」に通ずるものを感じた。タイトルにもある通り、主人公は冒頭で失った娘(亡くなった日に赤いアウターを着ていた)への想いに取り憑かれ、時折現れる赤い影に翻弄されるが...という物語。徐々に狂って主人公の姿が印象的だった。中盤から"赤い(服を着た)影"が画面内にチラつくようになり、結末としては追い詰めたその赤い女は娘の亡霊ではなく異形の老女だったというオチなのですが、まあこれはそのもの自体が怖いというよりは主人公の無念や後悔でよって突き動かされ狂っていく様が怖いという感じだった。サブリミナル的に現れる数々のショットも当時的には怖かったのかもしれません。主人公は未来が見える能力を持っており、その力が物語を引っ張っていくのですが、結末がわかった上でこれまでの話を振り返るとぞっとする様な話だったなあとも思う。それらを知った上で2回目を見ても楽しめるかも。ラストの直前に見る葬列は実は自分の葬列だったという仕掛けは恐ろしかった。

 

・ミッチェル家とマシンの反乱 (原題:The Mitchells vs. the Machines) - 4.3/5.0 (Netflix/2022.1.29)

監督:マイケル・リアンダ。脚本:ジェフ・ロウ。2020年。以前より評判が高かったので観たいと思っていましたがNetflix作品の為なかなか見られずにいたこちら。課金期間がもうすぐ終わるって事で滑り込みで鑑賞。良いと聞いてはいるもののどちらかと言えば苦手ジャンルの"アニメ"なので正直不安ではありました(いざメインビジュアルを見てもあまり好みではなかった)が、見始めてみたらこれがもうすごいのなんのって。お話としてすごいわけでは決して無いのですが、まずは何よりもその画。背景にしてもメインの登場人物にしてもあくまで手書き風というか(なんと形容していいかアニメに対してのリテラシーが無いのでどういっていいのかわからないのですが)、完全なCGアニメとは違う、でも完全にデジタルっぽい不思議なこれまで見た事の無い質感のアニメーションで非常に冴え渡っていた。この画面を見るだけでも一観の価値はあるのではないでしょうか。めまぐるしいテンポで繰り出されるシークエンスはトランス映像っぽいというかはっきりとドラッグ描写の様な場面も。劇中のミッチェル家の活躍と呼応する様に超ハイテンションで繰り出されるギミックの連続にクラクラしっぱなしでした。話は平板なものですが、ものすごいテンションで積み上げてきた家族の物語が"再生"を迎えるクライマックスではやはりほろりと涙が。家族の活躍という部分ではどうしてもクレヨンしんちゃんの劇場版を思い浮かべました。作品について調べると、「LEGO ムービー」「21ジャンプストリート」のフィル・ロードとクリストファー・ミラーがプロデュースをしているのも納得の仕上がり。やっぱりすごいよこの人たち。

 

・前科者 - 2.2/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ/2022.1.28)

監督 脚本 編集:岸善幸。原作:香川まさひと。月島冬二。2022年。WOWOWのドラマシリーズとして放送されており、第1話は観ていましたがそれ以降は観ておらず、映画で初鑑賞(と思いましたがドラマ版の3年後という事らしいので話は被ってなさそう&ドラマの方が評判が良い)。始まって早々に演技演出のつけ方に"ん?"というザワザワしたものを感じ、嫌な予感はしましたがまあ見事に的中。これは酷い。早くも今年ワーストが出たという印象。何をどこから言っていいのか分かりませんが、こんなに雑な脚本は無いし、今時どうかと思うくらいに演出過多だし、けったいな音楽を仰々しく垂れ流すし、もう知ってる情報を何度もくどくどと回想(しかもセピア調(たしか))で見せてくるし。子供が虐待されている映像なんて言葉としての情報だけでももう十分にわかってるのに(説明台詞で〜というツッコミもありますがそこは百歩譲って許しますが)しょうもない映像で何度も見せてくるので本当に腹が立った。これ効果的だとか思ってんの?とマジで。作劇にしてもグダグダグダグダやってるし、こんなキャラクターいねえだろとツッコミたくなるキャラ造形しかないし、登場人物の着ている衣装や、部屋の美術、というか石橋なんとかと若葉竜也が被ってるカツラとかマジでなんなの?コントなの?とか。言い出したらマジでキリが無いですが、もう全てが低俗で安直で下品。こんなにはっきりと酷い新作映画をスクリーンで観る日がくるとは思わなかった。思い出しただけで腹が立ってくる。調べたら原作が漫画であるらしいので、別にこのお話自体は(どうでも)いいですけど、映画としてはどうなの。マジでなめんなよという感じ。どんな年寄りが作ってんだよと思って監督の年齢見たらお察し。しょうもないジジイに作らせるなよ。こんな映画に出た役者が可哀そう。だし、仕事は選んだ方がいいと思う。

 

・野いちご (原題:SMULTRON-STALLET) - 3.4/5.0 (DVD/2022.1.27)

監督 脚本:イングマール・ベルイマン。1957年。三大傑作選でデジタルリマスター再上映が過去にあったこちらの作品を鑑賞。ストーリーラインはシンプルなのですが、描写がなのか表現かなのかやはり少し難解な印象を受ける(同じく傑作選の「第七の封印」とかほどではないのですが)。モノクロ画面は非常に丁寧に構図され、見やすさも同居している。何度も夢に落ち、過去の自分の思念の様なものや(自分に対する)周りの人達と出会い、主人公自身が生きる意味や、生まれてきた意味、家族や周りとの関わり、死ぬことへの恐怖、などこれまでの人生を振り返るロードムービー。所々笑えるシーンがあるのも良かった。視聴環境が悪かったせいか、、いまいち没頭できなかった。「第七の封印」しかりまた見直さないとなと思う。

 

・そこにいた男 - 3.0/5.0 (U-NEXT/2022.1.25)

監督:片山慎三。脚本:岨手由貴子。2020年。「さがす」を観た流れでU-NEXTで"片山慎三"検索、脚本が「あの子は貴族」の岨手由貴子だったので即鑑賞。33分の短編作品。冒頭から血塗れ全裸局部モザイク男とそれを刺した女の超絶修羅場(というか殺人現場)から始まり、ただ事ではない感全開。その女と男の間に何があったかを事情聴取されながら振り返るというお話。まあアホな職業:自称俳優の男に貢がされた結果、本妻への嫉妬で刺し殺してしまうというただそれだけの話で岨手監督らしいかと言われればそういったものはあまり感じなかった。ラストに刑務所の面会で本妻がありがとうと言いに来たのはものすごく意地悪だし、これ以上ないくらいに堕ちるよなあと思うので短編のオチとしては有効なのかも知れない。結局夢オチでチャンチャンという感じなのですが、ラストカットが男が自販機のおつりを拾う惨めなケツで締められていて笑えるし、まあ唯一この30分の救いの様な気もした。ラストシークエンスは非常に片山監督らしいチャームがあって面白かった。

 

・さがす - 3.9/5.0 (伏見ミリオン座/2022.1.25)

監督 脚本:片山慎三。2022年。「岬の兄妹」の片山監督商業映画デビュー作。123分。驚くほどの丁寧さと重厚さに商業作品1作目にかける気合いをビンビンに感じる。冒頭から結末まで練って練って挑んだんだだろうなあというのが画面からも分かる。丁寧が故に少し冗長に感じる箇所も正直無くはないが、それでもおつりが来る程の多層さで全然面白いし、すごいクオリティのものを作ったなあという印象(「岬の兄妹」が個人的倫理観からあまりノレなかったので余計に)。まさかの展開の連続で進んでいく物語は、作劇の仕方次第ではちょっと破綻しかねないなと思いますのが今作は見事なバランスでそれらを成立させていた。大きく3つのパートに分かれているのも転換点になって良い(とも思うし、2章目の途中とが若干長いなと感じたので悪い部分もあるのだろう)が鈍重に感じる部分も画面の緊張感で引っ張っていけるのが凄いなと思う。今後の活躍が更に楽しみになった作家の1人だ。今作はある程度の予算が付いた映画なのだなというのもキャスティングからして分かるのだが、アトロクに出演した際に"スタッフの人数を減らして経費を抑え、その分撮影期間を長くする事に充てたい"という発言がとても印象的だった。

 

・ピンクカット 太く愛して深く愛して - 2.9/5.0 (Blu-ray/2022.1.24)

監督 脚本:森田芳光。1983年。『森田芳光全監督作品コンプリート(の・ようなもの)Blu-ray BOX』購入記念、森田監督作品を1作目から順番に見ていこうキャンペーン開幕中。ピンクゾーン2本目。今作もまたただのピンク映画では終わらない森田監督の矜持を感じる。なんなら1つ前の成人映画「(本)噂のストリッパー」よりも好き放題に無茶苦茶やっていると思う。言い出したらキリがない数々の森田的なシーンの連発にクラクラする。好き放題を優先した結果なのか、そもそものお話がそうだったからこうなったのかは分からないが話はもう全然面白くなくて作品全体としてどうにもならないものになってしまっているかなあと思う。"のの字かいてハッ"や"エッサッサ"など謎の名言もこの映画のチャームだ。低予算なのかなんなのか女性陣が全くもって可愛くないのが今作のダメな所だろう。この後に「家族ゲーム」に続いていくなんて信じられない(しかも同年製作)。

 

・エンター ザ ボイド (原題:ENTER THE VOID) - 3.3/5.0 (DVD/2022.1.23)

監督 脚本:ギャスパー・ノエ。2010年。何だかんだ好きなんですよね、ギャスパー・ノエ。どれを見ても"もうやめて!"となるのですが何だかんだ見てしまうし、どっちかと言うと楽しめている。というか、何よりもこんな映画撮る人ギャスパー・ノエ以外にいないでしょって作品を毎回更新してくるのがすごい。良くも悪くも。今回観たこの作品は基本ずっと俯瞰ショットというか天井ショット。もうこれだけで狂っているし、またそれが開始10分ほどで死ぬ主人公の魂が昇って彷徨っている視点的なものから作られている画面なので仰天。過去も現在も時制までも軽々飛び越えて、両親や妹、家族への想いと後悔が行き場を失くして彷徨う。これは心霊映画でもある。最後の最後には性交からの射精からの受精からの出産と、"輪廻(転生)"をアイコンに締めくくられる今作にギャスパー・ノエの基本的な人間愛のようなものを感じずにはいられなかった。

 

・クライ マッチョ (原題:Cry Macho) - 3.0/5.0 (ミッドランドスクエアシネマ2/2022.1.21)

監督:クリント・イーストウッド。脚本:N・リチャード・ナッシュ。ニック・シェンク。2022年。イーストウッド御大91歳にして監督業50周年、監督主演作品。さすがにイーストウッドパワーか平日昼間でもっとガラガラかなと思いきや、32人の客入り(ほぼ全てが白髪の老人という!)。正直、イーストウッド作品はほんの少ししか観た事が無いのですが評判も良いし(?)劇場で見てみる事に。約100分の作品なのですが、何だかこう、、途中で眠たくなってくるくらいには興味の持続が難しく。。まずもって話自体が全然面白くないし、イーストウッドもよぼよぼで何の説得力もないし、脚本もあれ?って感じでこれは一体どう楽しめばいいのだろうかとわりとちゃんと分からなかった。画面のクオリティはある程度担保されているし、きちんと観られる作品には出来上がっているのですが、これは誰が喜ぶの?という感じ。作劇的にはものすごくスタンダードなドラマ作品の手順をきちんと一個ずつ踏んだ古くっさい映画を見せられて困惑(というか苦笑い)した。まあ劇場にいた年寄りは喜ぶのかも知れないのですが。ここ数日「偶然と想像」「こんにちは、私のお母さん」「エッシャー通り通りの赤いポスト」と情念の強い作家性が燃え滾る作品を立て続けに浴びていたので、かなりしょぼく、そしてイーストウッドのジジイくささというか衰えだったりもう現役では到底無理でしょ感を強く感じてしまった。むしろこの作品こそこんなんで許されるのはイーストウッドが撮って出ているからであってこれも強烈な作家性が無いと成立しないものだとは思いますが、うーむ。といった感じでしょうか。。御年84歳で同じく老境で輝くリドリー・スコットが「最後の決闘裁判」や「ハウスオブグッチ」で現役監督とも張り合える作品を連発しているのを考えると。。余計に。

 

・エッシャー通りの赤いポスト - 3.5/5.0 (シネマテーク/2022.1.20)

監督 脚本:園子温。2021年。平日昼間観客は15人ほど。前週公開初日に監督と役者3名が登壇する舞台挨拶もあったようです。前作「プリズナーズ・オブ・ゴーストランド」はあまりにも評判が悪くて結局スルーしてしまったし、「愛なき森で叫べ」はNetflix未課金で観てないし、というか人気者になってからの園作品にウンザリしていてそもそも当分観てないしで、かなり久しぶりに園子温の映画を観た。しかも劇場で。そんな体験でしたが、まず結論から言いたいのは"これが園子温だよ!"と。"『俺は園子温だ!!』ってこういう事だよね"と。正直良かったです。園子温の映画が好きだったんだなと改めて自覚する事が出来た。映画としての出来は全然良くないし、約2時間半の冗長にも冗長、無駄や破綻も多いかなり荒い脚本や作劇ではあるのですがラスト10分のカタルシスに向けてのテンションの上がって行き方やラストカットへの勇気には"この園監督が観たかったんだよ!!"とこちらも思わず熱くならずにはいられなかった。ひっそりと落涙。エキストラが主人公でありながらその後ろにいるエキストラや、そもそも自分の人生の主人公は自分自身であり、誰のエキストラでもないし、誰もが誰かのエキストラでもあるという円環構造みたいなものをお芝居的なカタルシスに持っていく力技はあっぱれだった。<俺>の旗を持つ奴がいたり、監督も、助監督も、役者になりたい何者でもない奴らも全員、"登場人物(プロデューサー的な奴らは抜いて)が全員園子温じゃん"と気付いた時には思わず笑みがこぼれた。と同時に園監督も苦労したんだなあとサブカル的な重荷を思いっきり彼に背負わせた我々ファンの責任も何だか感じてしまった。2019年の「プリズナーズ・オブ・ゴーストランド」の撮影中に心筋梗塞で倒れ生死の境目を彷徨った監督が原点回帰をしてこういう作品を撮ろうとしたのはすごく納得がいく。大林監督然り、最後には自分自身のための映画を撮りたくなるのかなあと感じた。

 

・こんにちは、私のお母さん (原題:你好,李焕英 Hi, Mom) - 3.9/5.0 (2022.1.18/伏見ミリオン座)

監督 脚本:ジア・リン。2021年。日本公開2022年。昨年約900億円の興行収入世界第2位になったこちら。普段ならばスルーなのですが、例によってアトロクのアレで渋々とポスタービジュアルを見てみると"若き日の母に会えたら、あなたは何をしますか?"という文言。これは危ない予感がするぞ...(好きなタイプだろ)(もう戻れない時間と対峙するシーンに弱すぎる)、と感じながらもまあそれなりにナーメテーターな態度で劇場へ。いつも通り予告編などは観ずに臨みました。平日昼間で25人くらいの客入り。普段よりも更に年寄りが多い場内。開始早々赤ちゃんが出て来るだけでもうちょっと涙腺がやばかったのですが(なんなんだ一体)、それも束の間、開始5分から1時間40分ほどまでの約95分は本当につらく、ひどく、なんだこれはと。主演のデブブスオバサン、安っぽい画面、男尊女卑、つまならいギャグ、マジで2021年に作られた映画なのか?と叫びたくなるシーンや演出、描写の連続が拷問の様な時間だった。"うわ~これはハズしたな~"と思ったし、本当に途中退室したいくらいには早くも今年度ワーストが決まったなというテンションでした。が、が、が、ラストの30分でこれまでのふざけた時間を巻き返して通り過ぎていってしまう位の監督の情念(鑑賞後に監督が主演脚本、実話ベースという事を知る)(納得)が力ずくで風呂敷を畳み大団円。最後は大号泣。自分史上映画館で一番泣いた作品になってしまった。嗚咽を殺すのがつらかった。と、まあこれだけ読んだらまったく意味が分からないのですが本当にこの通りで、前半部分はもう本当に出来が悪いしわりと全てがしょうもないのに最後の最後には文句を言えない仕上がりなこういうモノに出会ってしまう事が映画を観る面白さだと痛感しました。前半のクソみたいな展開や出来事も全部最後のためにあったのだと思うとまた滝の様に泣けてきた。言語化はし難いのですが、監督はそもそも映画人じゃないし(超有名なコメディアンだそうです)、そもそも優れた映画を作るつもりで多分やってないし、母親への想いだけが執念の様に1本の2時間以上の映画を作らせたという事実にもうそれで良いよと、もうそこまでされたら文句ないです、すごいっす。と言わざるを得なかった。

 

・偶然と想像 - 4.2/5.0 (シネマスコーレ/2022.1.17)

監督 脚本:濱口竜介。2021年。「ドライブマイカー」が話題の濱口監督作品。去年暮れより公開されてまだまだこちらもヒット中という感じでしょうか。平日昼間で22人くらいの客入り。「ドライブ~」は何だか第一印象であまり乗り気になれずにスルーを続けていますが今作は元々観ようと思っていたし、アトロクの課題作品にも選ばれていたのでようやく鑑賞。終わってまずは、恥ずかしながら"濱口監督作品を観た事が無かったのでこんなふざけた態度だったんです!"と自分を戒める。とんでもない作品。脚本の出来が評価の的となっている濱口監督ですが、勿論この映画もとても良く出来た脚本なのですがなによりも、演出やカメラワーク、この短編3編に仕組まれた仕組みなど、かなり細かい部分の積み重ねが総合的に作品の価値をグググっと押し上げているという事に感心せざるを得なかった。いくら脚本が素晴らしいからと言っても普通はこうはならないでしょう。棒読みな演技、ロングショット、引きの画、トータルで非常に映画的で豊か。第2話の教授と女生徒の会話はコントの様なのにすごく人を救う(勿論私自身も)セリフがサラッと入っていて、染みた。第1話のホン・サンス風ズームで笑った直後に現れる時空が歪む演出が起きて驚いたし、それが起きる作品なんだということ自体にも驚いた。その瞬間にこの作品に対しての態度だったり、観方が分かった気がして肩の力が抜け残りの時間を存分にを楽しむ事が出来た。これが出来る監督はすごい。というかすごすぎる。3つの短編が無関係な様で根底では連なっているラストには落涙なしには見られなかったし、こういうものを誰か(人間)が考えて作ったんだという圧倒的な事実に泣けた。映画は話の内容よりもやはり作家性だなと改めて思わされた。パンフレットは1200円と少し高かったが内容は充実しており、読むのが楽しみだ。「ドライブマイカー」を始め他の作品も観なければ。そしてシネマスコーレでは濱口監督全作品上映が来月あるらしいので観られる限り観ようと思う。

 

・(本)噂のストリッパー - 3.2/5.0 (Blu-ray/2022.1.16)

監督 脚本:森田芳光。1982年。『森田芳光全監督作品コンプリート(の・ようなもの)Blu-ray BOX』購入記念、森田監督作品を1作目から順番に見ていこうキャンペーン開幕中。ピンクゾーン1本目。ストリッパーに片思いする童貞君(暫定)のお話。どこが森田監督らしいかと言われればそもそもこのストリップ小屋自体が森田監督らしいというか。こんなカラフルでふざけた小屋があるのかな?と。当時を知らないので何とも言えませんが。そして、片思いをする童貞君のストリッパー彼女への想いのアプローチの仕方(口調など)や、相手にしてもらえないフラストレーションをセフレ(こっちのが可愛くて巨乳!)で晴らそうとするノリなど、どうにも分かるというかなんというか。。若い、若すぎる男特有のダメさというか、(青春時代を過ぎた年齢の自分から見ると)可愛げというかそういったものを垣間見ている様な気がして彼の事は嫌いじゃないんです。それにしても"恋人が帰ってきたから"というセリフは怖すぎる。最高。

 

・仁義なき戦い 完結篇 - 3.7/5.0 (U-NEXT/2022.1.16)

監督:深作欣二。脚本:高田宏治。原作:飯干晃一。1974年。シリーズ5作ようやく完走。3作目までは劇場で35mmフィルム上映で間に合って観ていたが一度スルーしてしまうとなかなか食指が動かない。4作目に関しては主人公である広能が全然出てこなかったりして何ともという感じなのですが、それは完結編である今作も同じで、どうしても後日談的なオマケの様に感じてしまうのは無理は無いかなと思う。しかしながらバイオレンスシーンの頻度やタイミングはメリハリが効いていてとても良かった。何も起こってないところにもドラマがあり、このシリーズ自体の話の面白さや原作の力をより感じる結果となった。今更知ったのですが、これ初作から全部走り切るまでに3年かかってないというまさかのスピードで、すごいなと思う。

 

・ハウス オブ グッチ (原題:House of Gucci) - 3.6/5.0 (伏見ミリオン座/2022.1.14)

監督:リドリー・スコット。脚本:ベッキー・ジョンストン。ロベルト・ベンティヴェーニャ。原作:サラ・ゲイ・フォーデン。20221年。ようやく今年初の大作かなといった感じ。平日昼間で観客は30人ほど。お正月にTVCMをバンバンやっていた効果か、開演ギリギリに女子高生4人組が慌てて入ってきて着席。(自分は)普段あまり観ない光景だった。本編の方は、あくまで実話を元にした"フィクション"ということで実際はここまででは無かったようですが、有名ハイブランドの歴史あるお家騒動をエンタメに昇華したリドリースコットの手腕は安定そのもの。だが、良くも悪くも全編に渡りジトっとした雰囲気でまわりくどく人物描写をしていくのでどうしても冗長に感じてしまった。何よりも登場人物が全員(とまでは言わなくても主演のアダムドライバーとレディガガは)が馬鹿過ぎてあまりノレなかった。元々は一族経営していたが今はグッチ家の人間は誰もいないという様な内容のテロップが最後に出た辺りはノンフィクションの面白さを感じた。

 

・女優霊 - 3.3/5.0 (DVD/2021.1.11)

監督:中田秀夫。脚本:高橋洋。1996年。昔から名前は知っていたし、事あるごとに名前が挙がるこの作品。ようやく鑑賞。荒い画面や拙い演技が恐怖のイメージをじわじわと加算させる。"ぬぼ~っと幽霊が後ろに立っている(だけ)"という恐怖演出は結構新しかったようですが、2022年に観ればまあ、ね。リアルタイムで観られたらもっとハマれたのかも知れませんが。話自体も何だか集中力が保てず、70分くらいしかないのにやけに長く感じた。「リング」の2年前。ここから「リング」に突入していくのかと思うと、味わい深かった。し、「リング」の片鱗を魅せる様な場面は箇所箇所に存在した。

 

・ただ悪より救いたまえ (原題:다만 악에서 구하소서) - 3.7/5.0 (中川コロナシネマワールド/2022.1.10)

監督 脚本:ホン・ウォンチャン。2019年。日本公開2021年。観ようか迷っていましたがSNSでの評判高く、今年まだ映画館に行けてなかったので勇んで鑑賞。公開よりわりと経っている平日昼間で客入りは10人。「新しき世界」のイ・ジョンジェとファン・ジョンミンのコンビ。"韓国ノワールバイオレンスアクション"というと何となく温度感とか、雰囲気は分かるのですが、まあそんなイメージ通りの作品でした。前半が結構ちゃんとつまらなくて、"うわぁ、これマジかよ..."と思っていましたが主役の2人が出会って物語がようやく動き出す後半からはそれなりに楽しめた。ただ、アクションシーンでスローモーションからのドン!とか"今時そんなのやるか?"と思ったし、そもそもアクションシーンが小出し過ぎるし、残忍な殺し方をしているつもりなのですがそのシーンがどれも観た事あるやつだったり(吊るして腹を裂くのは「プッシャー3」で見てるよ)、肝心のところを映してなかったり、結構不満な部分は多かった。イ・ジョンジェが格子越しにキマった目をするシーンとか、クライマックスのオカマが子供を抱えて逃げる後ろで大爆発が起きるシーンとかは印象的だった。オカマのシーンは何なら泣きそうになった。多少良かったですが、まあ「新しき世界」が素晴らしいのでわりと普通な感じでしたね。

 

・シブがき隊 ボーイズ&ガールズ - 3.4/5.0 (Blu-ray/2022.1.9)

監督 脚本:森田芳光。1982年。『森田芳光全監督作品コンプリート(の・ようなもの)Blu-ray BOX』購入記念、森田監督作品を1作目から順番に見ていこうキャンペーン開幕しています。「の・ようなもの」を先週再鑑賞したので、今回はこちら。2作目はアイドル映画、2,3作目はピンク映画、4作目が「家族ゲーム」なので、正直この2,3,4作目はいきなり飛ばしたくなるゾーンな気もしなくはないのですが、もちろんきっちりと順番に見ていきます。まずはシブがき隊の若さが光る。相手役の女の子たちも可愛すぎないところがgood。70分ほどで終わるジャンル映画(しかもジャニーズアイドルもの)なのでそもそも期待はしていないのですが、きちんとタイトだし、ティーンが夏休みに観る分には楽しめる作品にはしっかりとなっていたのではないでしょうか。色んな制約がある中撮ったであろう事は安易に想像できますが、このまとめあげ力は森田監督の手腕というかセンスなさるものか。また、冒頭から廊下に立たされるシーン、坂道を大量のトイレットペーパーが転がっていくシーン、何よりも"畳のアミダ"(なんなんだそれは)、クライマックスのカラフルな照明と共に想像の世界(が現実に見える世界かもしれない)など、きっかりと森田監督らしいシーンも連発されており、良かった。鑑賞後に森田芳光全映画本で読みましたが、まだまだポッとでの新人である監督には周りのスタッフの風当たりが強かったという苦労話が印象的だった。

 

・浅草キッド - 3.7/5.0 (Netflix/2022.1.9)

監督 脚本:劇団ひとり。2021年。せっかくNetflixに課金しているのだから今月はNetflix月間だという事で新作のこちらも鑑賞。今は映画会社よりもNetflixの方が潤沢に製作費をかけられるのは本当の話で。劇団ひとりは「晴天の霹靂」ぶりの監督作品。ひどくはなかった前作ですが、色々批評された事も踏まえて手を出してなかったのか(賢いと思います)、久しぶりのメガホンとなった。今作に関しては7,8年前から是非とも映画化をしたいと構想を練り、様々な映画会社に自ら企画を持ち込んだ様ですが、ようやく作品化になったらしい。柳楽優弥と大泉洋のダブル主演が物語をグイグイと引っ張っていく。劇団ひとりの作劇や演出はとても丁寧で(丁寧すぎるくらい)、観客誰一人として置いてけぼりにしない親切設計。それでも嫌じゃないくらいにはいろいろなバランスも上手く撮りながら構築している様に思う。が、映画を沢山観ている人間からすればどうしても冗長に感じたり、大げさに感じたりする部分というのは沢山あるのですが。今回もしっかりと泣かせに来ているある意味安定の"劇団ひとり節"の様なものが炸裂していた。というか、<ゴッドタン>などで彼がアドリブ演技している時の濃い味描写がそのまま映画になった様な感じなんですけどね。ラストの結末後もダラダラとしていたり、それぞれの描写が長かったりと、かなり言いたい事もありますが、個人的には結構好きなので応援しています。特に、前作にも今作にもあった"過去の自分(または仲間)"と今の自分が遭遇したり、もう戻れない時間を浴びるシーンなどは好きな表現方法なので、実際監督のやりたい事はよく分かる。

 

・パワー オブ ザ ドッグ (原題:The Power of the Dog) - 3.9/5.0 (Netflix/2022.1.8)

監督 脚本:ジェーン・カンピオン。2021年。こちらも話題の作品。まずファーストカットからとても配信作品とは思えないクオリティで驚く。少しずつサスペンスが紐解かれていく感覚が非常に気持ちよく、128分と短くはない尺が全く気にならなかった。主人公のフィルはどうしても無茶苦茶な男なのだが、最終的には少し可哀想にも思えてきた。主人公兄弟、嫁、子供とどのキャラクターに対しても深いキャラ描写が豊かさに繋がっており、一度見ただけでは見逃している繋がりが多くある様に感じた。ジェーン・カンピオンという監督の作品は初めて見たが他のも是非とも見てみたいと思う。フィルとピーターのエピソードで、犬の影きっかけなのが可愛いなと。ちょい役で出ていたトーマシンマケンジータソに萌えた。西部劇ではないが100年前のモンタナが舞台という事で広大な自然は大画面が生える。これはせっかく素晴らしい画面を作ってもスマホやタブレットでは伝わらないであろう。ホームシアターを作って本当に良かった。し、Netflixの潤沢な資本力に驚く。こういった作品を連発していくのであればうちの環境であれば全然映画館行かなくても幸せになれちゃうなとも思った。下の「ドントルックアップ」も今作も劇場公開短い期間でされてもいたのですが、何となくスルーしてしまっていた。今後も期待をしている。

 

・ドント ルック アップ (原題:Don't Look Up) - 3.7/5.0 (Netflix/2022.1.3)

監督 脚本:アダム・マッケイ。2021年。オールスターキャストで話題のこちらを。映画館で観ようと思っていたが上映時間の長さと、1500円使ったら(1100円の鑑賞料を抜いたら+400円)1か月間他のNetflix作品も観られるのならば配信で良いなと思い鑑賞。スマホやテレビ画面ではちょっと見るに堪えない(間が)シーンもわりとあったがこういう時に自宅である程度の鑑賞環境が整っていることは素晴らしいなと思う。アメリカでも日本でも同じ事が起こっているんだなあとボケっと見てしまった。が、基本的には面白かったのでしっかりと集中して完走した。なんだかかなりシュールに感じた。もっとわざとらしく笑いを取りに行ったりとかできるはずなのにしない脚本とか、待ち時間みたいな物がわりと多い作劇とは結構不思議な映画だった。特にラスト付近、最後の晩餐をしに、元家族の元に向かうディカプリオ一行のシーン。その選択自体もグッとくるものがあるが、何よりも最後の晩餐シーンの描き方がとても印象的だった。ラストのCGを使った崩壊をしていく様はもっと映像的に笑わせても欲しかったなあと欲張りな事を想ったが、このクライマックスはかなり好きなシーンだなと思う。(とか書いてたらもっと点数上げてもいいかなと思ってきた)

 

・E.T. (原題:E.T. the Extra-Terrestrial) - 3.6/5.0 (WOWOW/2022.1.2)

監督:スティーヴン・スピルバーグ。脚本:メリッサ・マシスン。1982年。お口直しにと言ったらアレだが、新年にまだ見るぞという事でなんと見たことの無かったこちらを。あの指のシーンはもっとクライマックスに出てくるもんだと思っていたらかなり序盤で出てきて驚いた。有名な自転車のシーンはしっかりとクライマックスで出てきてくれて安心した。というか、あのシーンのアメイジングさは40年後の今観てもしっかりと輝いていて、のめり込みながら観たら泣いてしまうかもなあと思った。人ならざる者と共に、人間の力では出来えない飛行を行う。しかも月をバックに。こんなにも映画的でロマンティックで豊かな映像があるだろうか。また今でこそ映像で何でもやれるようになってしまったが、当時このシーンには相当のパワーがあっただろうなあというのは今観ても非常に良く分かった。なんだかとても良かった。E.T.とあんなにコミュニケーション取れるのは驚いたし、コインを入れて除く双眼鏡みたいなルックスがキモくて良かった。

 

・カリスマ - 3.4/5.0 (WOWOW/2022.1.2)

監督 脚本:黒沢清。1999年。新年一発目は何にしようかなと迷いながらもWOWOWで録画した黒沢清の作品群が溜まっていたので未観のこちらを鑑賞。"森の中の1本の木が森全体を支配するカリスマだ"というとてもシュールな設定の物語。森で起こっていることと、実際の人間世界でのことを同じなんだよと並べていることは分かったが個人的にそのテのお話にあまり興味が持てないせいか結局のところイマイチのめり込めなかった。黒沢監督らしい嫌な緊張感と独特のタッチを味わう事は出来た。とにかく役所広司の奇怪なキャラクターや不穏な画面、そういったとことはいかにも黒沢映画!といった趣で面白かった。