観た映画 2022年2月 | BTJJ

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リハビリの為のタイピングブログ

■2022年2月に観た映画

16本(劇場、配信、レンタル、見直した作品を含む)

 

・愛なのに - 3.7/5.0 (センチュリーシネマ/2022.2.28)

監督 脚本:城定秀夫。脚本:今泉力哉。2022年。城定秀夫と今泉力哉という今人気の作家をなんとスワップして映画を2本作ってしまおうというそれだけでも面白いこちらの企画、来月公開予定の「猫は逃げた」と2本セット。先行は城定監督の方から。主演に瀬戸康史と河合優実というこちらも今人気の若手を起用し、メインビジュアル、予告編ともにいかにも今泉作品っぽいオシャレ()風な感じかな、と思いきや。そこは城定監督、舐めて観に来たサブカル好きカップル()をぶち殺す様なセックス描写できちんとエロく全体的にきちんと城定作品に仕上がっておりました。古本屋でのシーンから始まる冒頭は画から面白く、今泉監督の前作「街の上で」を思わせる様なオープニングだった。序盤から中盤にかけて何とも今泉作品っぽい人間劇が繰り広げられていくのですが、終盤のセックス下手オチからのこれまでの話は一体何だったんだという程の元も子もなさというか、一気に脱力する感じが最高に面白かった。男にとってはある意味ホラーの様な事件だよなあと思った。結構面白かった。相棒である「猫は逃げた」もとても楽しみになった。

 

・こわれゆく女 (原題:A WOMAN UNDER THE INFLUENCE) - 3.8/5.0 (DVD/2022.2.27)

監督 脚本:ジョン・カサヴェテス。1974年。三宅監督のPodcastで紹介されておりレンタル鑑賞。どこから突っ込んでいいやらという感じですが、とにかく奇妙な演出、長回し、ショットの連続。そこには確実に狂った何かが宿っている。序盤のパスタを皆で食べるシーンなんかももう完全に意味不明だし、なんだこれは面食らった。ジョン・カサヴェテス監督の作品は初めて観たのですが思っていたよりも好きかもしれない感覚が残った。

 

・私たちのハァハァ - 3.7/5.0 (U-NEXT/2022.2.26)

監督 脚本:松居大悟。2015年。「ちょっと思い出しただけ」に続いて松居大悟xクリープハイプな今作を。昨年の「くれなずめ」で初めて松居大悟作品に触れ"これは好きな作家だぞ(おそらく)"と思い過去作品も観てみようと思っていたら先だって公開された「ちょっと~」も時間と共に自分内評価が上がっており、過去作品を鑑賞。メインビジュアル通り、女子高生が自転車でクリープハイプのライブを観に東京を目指すというお話。ツッコミどころはかなりあるのですが、松居監督は"嘘から出たマコト(大林宣彦Ⓒ)"を描き出すのが上手いなあというか観ていてさして気にならなくさせるどころか何だかちょっとリアルに思わせる事を出来ているのに驚く。物語的には自転車捨てるのが早すぎたり、さすがにキャバの体験バイトは無いわとか思ったり、大関なんとかちゃんがブス過ぎるとか、色々と徐々に言いたい事が増えていくのですが最終的には(というか鑑賞後感的には)なんとも言えない切なさとか、もう戻る事の出来ない過去の自分だったりとかをじんわりと思い出させて、何だか良い映画を観たよな~と呑気に思ってしまう、そんな気持ちにさせられる。

 

・少年の君 (原題:少年的你/Better Days) - 3.6/5.0 (DVD/2022.2.20)

監督:デレク・ツァン。脚本:ラム・ウィンサム。リー・ユアン。シュー・イーメン。2019年。日本公開2021年。雑誌、web等でも昨年の年間ランキングもので好評だったこちらをようやく鑑賞。アトロクの課題作品にも選ばれていたのですが当時は公開中盤で時間のタイミングがなかなか合わずで結局観られなかった作品。いじめに耐える受験少女とチンピラ兄ちゃんの純愛もの。とざっくり言えばそんな感じ。つい先日もいじめを苦に自殺、ではなく、いじめ被害者が加害者を刺し殺そうとしてしまった(しかも学校で)という事件が2件ほど日本でも続けて起こっていました。中国の虐め問題は相当酷いらしいのですが日本もこんな事件があるくらいなのでもちろん潜在的な部分では相当数もっと悲惨なことになっているだろうというのは想像が出来ます。本作でも最終的には主人公がいじめ加害者である女生徒を最終的には殺してしまい、その罪を償うという結末なのですが、やはり対岸の火事ではないなあと感じます。というか全然知らない所で知らない誰かがこんなにも苦しんでいるんだという事実を突きつけられたようでつらかった。クライマックスで2人が罪を白状する事を決心する面会のシーンではセリフなし、パーティションに映る相手の顔と重ね合わせるという美しくも破壊力のある演出が優れていた。個人的にはテンポが悪いし、全体的に長いし、であまり良い印象ではなかった。

 

・スラローム 少女の凍てつく心 (原題:Slalom) - 3.7/5.0 (WOWOW/2022.2.20)

監督 脚本:シャーリーン・ファビエ。2020年。アトロクにて三宅隆太監督の昨年の年間ベスト3に入っており、WOWOW初回放送時はスルーしていたのですがその話を聞いて慌ててリピート放送を録画、鑑賞。90分ほど。ある意味ジャンル映画的なコンパクトさと一つの題材でじっと進んでいくストーリーラインがフランス映画とはいえ見やすかった。15歳の女生徒とコーチの共依存の話なのですが、非常にリアルに感じられた。こうした声を上げられない被害者も多いのではないでしょうか。しかし既に共依存状態になってしまっているので当事者はそれ自体をマズい事だとは捉えられなくなっておりそこがややこしさを加速させているという事はよく描かれていたと思う。雪の演出というか、雪を画面に取り込んだり全体的に画作りがとても美しくて良かった。自体が最終的な結論に至ってしまうクライマックスではそれまで少しずつ出されていた不穏な"色"の描写も全開になり、メインビジュアルにもなっているオレンジの影に包まれた画面はとても厭な空気を演出していた。ラストカットからのエンドロールへ入っていく流れも良かった。話自体が特段面白い!という訳ではなかったので最終的な点数自体は伸びなかった。緊急避妊薬を無料でしかも簡単に入手できるというのが知れて良かった。

 

・南極料理人 - 3.8/5.0 (U-NEXT/2022.2.19)

監督 脚本:沖田修一。2009年。「横道世之介」「海を見に行く」「おらおらでひとりいぐも」の沖田監督の未観のこちらを。新幹線移動で時間もあったためタブレットで鑑賞した。ポスタービジュアルからあまり食指が進まなかったのですが、結構面白かったです。し、やっぱ沖田監督のセンスは絶妙な所を突いてくるよなあと思う。今作に関して一言で言えば"ウエス・アンダーソンみたい"というのがしっくりくるかもしれない。南極探査に送られた職人8人の南極での出来事を淡々と描写していく今作。とにかく画がアシンメトリー調で、オフビートなコメディ描写、基本ずっとふざけている、というどう見てもウエス作品の様な今回の内容にはここまでやられるとニヤリとさせられた。最後にはホロリとさせられるのも良かった点だ。堺雅人の映画は初めて観たが意外と良かった様に思う。

 

・ある用務員 - 2.0/5.0 (DVD/2022.2.15)

監督:阪元裕吾。脚本:松平章全。2021年。「ベイビーわるきゅーれ」などで知名度爆上がりの阪元裕吾監督昨年の作品。タイトルは映画雑誌などで観ていたので知っていましたがようやく観る事が出来た。監督の作品はこれで一応ほぼ全て観た事になります(初期のどうしても観る事が出来ないものは除く)。阪元裕吾という監督に対しては正直、応援は勿論しているのだが特段大好きだとか、素晴らしい作品を作っているとかそういった事はあまり思っていない。全ての作品を観たし好きなものはあるがどう見ても映画的に豊かだとは思えないし、テンポや撮影、特に脚本はあまり褒められたものではないと思う。ではなぜ全部観るほど時間を使っているのかと言われれば応援(期待)をしているからだというのが正しい答えかもしれない。彼の作品で観られる役者陣はおそらく大学のサークル時代の連中でとても素人臭いし、上記した様なアラだらけの作品群なのだが、そこには確かな熱意や勢い、得体の知れない自信、を感じるからだ。私自身も学生の頃にしていた活動と気持ち的に被る部分もあり、こういう人をきちんとフックアップしていく事が映画の未来を支えていく事になるし、阪元監督はいつか特大ホームランを打ってくれると信じている。たとえそれが一発屋的なものになるかもしれないがそれでもいいのだ。SNSやインタビューを観るとそんなに映画を知らない様にも感じるし、こんな私でも首をかしげる映画に対する発言(漫画みたいな映画を撮りたいとかはもう飽きれる発言だ)もみられる。でもそんな人が面白い映画を作り出してしまう事もあると思う。だからそれに期待しているし、応援している。真面目にはやっているっぽいしね。という事だ。あ、「ある用務員」はもう死ぬほどツマんなかったです。阪元作品で圧倒的にワーストかも。まあこういう仕事もしていかないといけないんでしょうね。

 

・ちょっと思い出しただけ - 3.7/5.0 (イオンシネマ名古屋茶屋/2022.2.14)

監督 脚本:松居大悟。2022年。昨年「くれなずめ」が個人的ヒットだった松居大悟監督最新作。着実に仕事を増やしているオズワルド妹・伊藤沙莉と松居組・池松壮亮主演による[過去の恋愛]をテーマにしたドラマ作品。タイトルの通り、本当に"ちょっと思い出しただけ"なお話で、何か起こるわけでもなく失われた二人の恋愛を一緒に振り返るというだけの内容。主人公演じる池松の誕生日を起点に6年分を遡る作劇は基本的に1年1エピソードくらいの尺で体感としてもわりとサクサクと進んでいくので、どうしても二人の恋愛模様を実体験と結び付けて入り込んでいく事が出来ずだった。がそもそもそういう共感の類を持たせる事に重きを置いている作品なのかなと終わってから気付いた。今作においては、とにかく構図の決まり方が非常に豊かで良かった。水族館での長回しによる二人のじゃれ合いシーンは特に冴えわたっており、演出というかこれはただカメラ置いてはいどーぞでは撮れるものではないよなあと感心しっぱなしだった。6年分を遡って最終的にはどうなるのかなと思いましたが、時制が現在に戻り2人の"今"を見つめながらまさに"ちょっと思い出しただけ"なのは何だか切ない様な、懐かしい様な、もう戻る必要もないでも確かにあった時間を感じる事が出来た。2人は今を生きているんだなというのをじんわりと感じる良い鑑賞後感だった。観終わった直後は普通かなと思っていたが時間の経過と共に何だかとても貴重な時間を味わう事が出来た作品だったのかもなあと思っている。
 

・それから - 3.5/5.0 (Blu-ray/2022.2.13)

監督:森田芳光。脚本:筒井ともみ。原作:夏目漱石。1985年。『森田芳光全監督作品コンプリート(の・ようなもの)Blu-ray BOX』購入記念、森田監督作品を1作目から順番に見ていこうキャンペーン開幕中。8本目。夏目漱石が原作で珍しく監督の脚本ではない作品。舞台は明治時代。何か劇的で大きな事があるわけではなく、主人公である松田優作が自身の拗らせによって好きな女を親友と結婚させてしまい、取り返しのつかない後悔と自責の念に駆られていくというそれだけのキモい話。これまでの作品で多く見られた森田描写の様な分かり易いものは極力排除されているが、今作の中では数少ないショットとして、且つひときわ印象的な森田描写がある。主人公の乗せた列車での心理描写がやはり図抜けており、これまでとは違い重要かつここぞ!というピンポイントでの森田表現になっているのでそれがより際立った印象。また、物語が終盤に進むにつれて長回しで緊張感のあるシーンが増えていくのも主人公の心情を表している様で面白かった。私の映画リテラシーの低さ故か若干乗り切れない部分もあり、鑑賞後に『森田芳光全映画』を読むとより合点がいき、ちょっとまた観ないとなあと思った。

 

・孤狼の血 LEVEL2 - 3.6/5.0 (Blu-ray/2022.2.12)

監督:白石和彌。脚本:池上純哉。原作:柚月裕子。2021年。今作を観るためだけに観た前作が予想外に良く俄然楽しみにして鑑賞。ですが、感想としてはう~ん。。という感じか。面白くなかったわけでは全然ないのですが、あれだけチャレンジングで面白かった1がある上で観ると今作はシリーズものとしては繋がりもちょっと希薄だし、前作までで積み上げてきた緊張感はどうでもいいのかなと少し残念だった。全く別ものに仕上がっていた。シリーズものを素直に続きっぽく作りたくなかったのかなあとも思うがどうなんでしょうか。軽く観る事が許されている(はず)この「孤狼の血」なので"2はアクション任侠ものだ!"と言われて素直に楽しめば良かったのかもしれませんが。お話自体もショットや描写の気合も前作の方がパワーを感じて好きだった。話題になっている鈴木亮平は別にそこまで、という感じ。もっと残虐に殺しまくる最強のキャラクターなのかと勝手に期待したのが間違いだった。ただひとつ、良かったところとしては、主演の松坂桃李。前作を観る限りではいつも通りの"松坂桃李力(まつざかとおりぢから)が強すぎて何をしてもどんな役でも松坂桃李にしか見えずあまり得意では無い"が出てしまっていたのですが、今作はあまり松坂桃李力(まつざかとおりぢから)を感じず、物語内の日岡にシッカリ見えていたのでその辺りは特に良かった。

 

・ふりむけば愛 - 3.4/5.0 (U-NEXT/2022.2.12)

監督:大林宣彦。脚本:ジェームス三木。1978年。自宅にて時間があったので久しぶりに大林作品を。昨年の5月にリメイク版の「転校生」を観て以来。大林監督の作品は円盤でわりと所持していたり、配信で観られるものでまだ未観のモノもあるのですが、全て観てしまったらもう見終わってしまう感が強すぎて嫌過ぎてなかなか観ない様にしていて今回約10か月ぶりに鑑賞。三浦友和と山口百恵のダブル主演の商業映画なのでもちろんそれなりの中身。鑑賞後に監督のインタビューなど資料を読み込んでみても今作における監督自身の"お話部分"への比重の少なさが良く分かる。(当時交際していた三浦友和と山口百恵の2人の姿をフィルム尻で撮りたいとの事)。なので全編に渡り所謂大林的な演出は抑えてあり、2人がより輝くように自然な方向性で撮られている。多少"らしい"演出は観られるが、森田監督とは違って大林監督の場合はより"遊び心"みたいなものが作家性(特に初期は)として立ち上がってきていると思う。森田監督はよりガチな危なさを感じるので。全体的にさっぱりとしているし、特に何も残らないけど見てよかったと思う(信者)。

 

・ザ ビートルズ Get Back:ルーフトップ コンサート - 採点なし (109シネマ名古屋/IMAX/2022.2.9)

監督:ピーター・ジャクソン。2022年。Disney+にて配信されているドキュメンタリー「ザ・ビートルズ:Get Back」のクライマックスであるアップル社の屋上にて行われたゲリラライブのパートをそのままIMAXシアターに持ち込み、爆音&高画質上映。映画としてどうかは正直あまり考えながら見てなかったのであまりコメントできません。映画としてどうだったかと聞かれれば、あんまり良くなかった様な気もします。配信のドキュメンタリーを全て観てから今作を観るのをお勧めします。ライブ映像としてはとても良かったです。IMAXの音響効果も相まってか、本当にすぐそこの屋上でライブをしているのかなと思う程だったし。4人がせーので音を鳴らす1音目の瞬間は泣きそうになった。ポールがめちゃくちゃかっこいい。

 

・ノイズ【noise】 - 3.1/5.0 (イオンシネマワンダー/2022.2.7)

監督:廣木隆一。脚本:片岡翔。原作:筒井哲也。2022年。日本テレビ製作、藤原竜也、松山ケンイチのW主演、神木隆之介助演とオールスターキャストで臨んだテレビ屋映画。全然観るつもりは無かったのですが何故かじんわりと悪くない評判を受けタイミングも合ったので劇場鑑賞。藤原竜也の映画ってほとんど観ないな。まず、ツッコミどころは満載なのですが、別にこれはこういうものだろうと思いながら観ているので特に気にならず。意外なほどにノワールなというかわりかしきちんとサスペンスを作ろうとしているのか結構集中して観る事が出来た。所々笑える演技も挟みながらも役者陣も良く多少なりとも楽しんで観られた。が、事件の顛末を描いた後。その後。何だか全てをぶち壊すかの様なしょうもない言い訳エピソードが15分ほど続いてからのエンドロール。なにそれ?そんなの必要だった?と。(先日観た「前科者」でも疲弊した描写が今作でも結局出てきて激萎え)またそのエピローグ的に付け足した全てのシーンが惰性にも蛇足にも程があるしこれまでギリギリのバランスで積み上げて来ながらも何とか立っていたそのツッコミどころ達を無神経にも全てぶち壊し何なら今までのシーンも全てバカらしく思える様な結論へとすり替えてしまっている。藤原竜也が逮捕されてからのエピソードは全て不誠実だし、全くもって必要なし。最低です。

 

・ときめきに死す - 3.8/5.0 (Blu-ray/2022.2.6)

監督 脚本:森田芳光。1984年。『森田芳光全監督作品コンプリート(の・ようなもの)Blu-ray BOX』購入記念、森田監督作品を1作目から順番に見ていこうキャンペーン開幕中。7本目。「家族ゲーム」後「メインテーマ」前。沢田研二が謎めいた暗殺者の主人公・工藤を演じる。工藤が暗殺を企てる理由などは一切明かされないので強烈な森田演出も手伝い序盤はこれは一体どこへ向かっていく話なんだろうとかなり不穏さを感じる。「タクシードライバー」の様な冷たさだったり悲しさや、「ソナチネ(93年)」の様な(調べたら北野監督は今作をフェイバリットに挙げており影響はかなりあるだろうと思われる)全編に渡る緊張感のある音楽によりここにしかない唯一無二な画面が続いていく。ただでさえ聞き取りにくいセリフの中で、更に小声で沢田研二がぼそっと呟く"殺すぞ"や、腕が抜けないビン(そうなるだろうと思ったよw)、岸部一徳がダル絡みする海のシーンなどなど、挙げればキリが無いですがどれも作品に不思議な浮遊感を持たせている。色味の少ない画面で続く物語は工藤が自決する真っ赤な鮮血で終わりを告げる。とにかく全てがネトっと絡みつきそれでいて不思議と乾いている様な言語化が難しい作品だった。すごい。

 

・フレンチ ディスパッチ  ザ リバティ、カンザス イヴニング サン別冊 (原題:The French Dispatch/THE FRENCH DISPATCH OF THE LIBERTY, KANSAS EVENING SUN) - 3.6/5.0 (ユナイテッドシネマ岡崎/2022.2.6)

監督 脚本:ウエス・アンダーソン。2022年。待ちに待ったウエス・アンダーソン新作。期待し過ぎたか個人的にはイマイチ乗り切れなかった。全編とまでは言わないもの全編モノクロームな画面がメインで物語は進んでいく。まず真っ先に言いたいのは別にモノクロが嫌だという訳ではないのですが、ウエス・アンダーソンの映画は絶対にカラーで観たい!!と。もうわりとそれだけに尽きる気がする。ウエスのカラフルな世界に没入するからこそ得られていた感覚というのが確実にあるのだなと改めて感じた。お話自体は小編を4つ並べた構成になっており、それぞれが繋がっていたり、意味を含んでいたりする訳ではなかった。時折、一瞬カラーになったりとかするのだがそのタイミングに脈絡や理屈が無く、そのせいでモノクロである理由も今一歩飲み込みづらかった。漫画などが挿入されるのは雑誌を模しているのでと思えばそうかも知れないし、カラーページになったりモノクロぺージになったりするのもそれと言われればそうかも知れないが、、うーむといった感じだった。ちょっと期待外れだった。

 

・コーダ あいのうた (原題:CODA) - 3.8/5.0 (イオンシネマ名古屋茶屋/2022.2.1)

監督 脚本:シアン・ヘダー。2021年。日本公開2022年。劇場でかかっている予告編の限りでは観る予定はなかったがれいによってアトロクのガチャで当たったので鑑賞。両親が聾者である子供(この状況の事をCodaというらしい)が主人公。極私的な話を非常に普遍的な話へと着地させる見事な作劇。また、手話を使った演技というか実際の聾者の役者さんが第一言語として扱う手話を織り交ぜながら劇中すすんでいく家族の温度感や雰囲気はとてもリアルで演技自体から作品全体に引き込まれていく感じがあり良かった。もちろん都合の良い場面や、え、これどうすんの?みたいな放置された問題点みたいなものはあるが、別にそこはそことして放置で良い作品だと思うので、これでいいのだと思う。家族は唯一な物であり同時に逃れられない呪いでもある事を丁寧に描いた。親子間や兄妹間、関係性が変えられない事が強さでもあると今回は家族モノの良い面が特に印象的だった。いわゆる家族という呪いものではあるのだが、とても爽やかで観ている最中も見終わったあともかなり感じの良い作品だった。同じく家族という呪いものを描いた「ヘレディタリー継承」とは大違いだ("青春の光と影"が大事な場面で使われているという意外な共通点)。