嗄らした声を浸した箱に

壁時計は2時を指した


 数秒おくれで届く『今』を

 先回りして 去った人


時の死骸を重ねた部屋に

逆さに刻む 針だけ残して



 ここはどこからも遠く在って

 干乾びた影をただ横たえた

 この孤独は復讐なんだろう

 甘んじて飲み干したグラスが笑うよ

 “ここにはもう 何もない”と




散らした雑誌と擱いたペン

かびた明かりは4時を射した

“途切れることは 嫌いなの” と

 タバコ代わりに 愛した人



手持ち無沙汰 紛らすそれを

愛なんて 呼んだりしたね・・・



 そこはどこからも遠くなって

 綻びた言葉だけが廻った

  壊れた振りは 飽きただろう?

  もう一度 ねぇ 噛んでみせてよ



心だけが 転がる部屋



 ここはどこからも遠くなった

 青褪めた舌を逃がした日から

 独り善がり 空振りばかり

 かろうじて 回る針は歌うよ

 “ここにはもう 何もない” と



壁時計は5時を指した

どこよりも遠い君を 懐いたまま・・・