「この生命誰のもの」 自由劇場
【キャスト】
早田 健(患者) : 味方隆司
シスター朝田(病棟婦長) : 大橋伸予
里村恵子(看護学生) : 服部ゆう
田原洋介(看護助手) : 谷部央年
北原真弓(担当医 研修医) : 野村玲子
江間隆司(集中治療部長 主治医) : 志村 要
権堂令子(医療ケース・ワーカー) : 中野今日子
森山敬二(早田健の弁護士) : 斎藤 譲
土屋 弘(精神科医) : 吉谷昭雄
川路彰彦(早田健の弁護士) : 勅使瓦武志
馬場 晃(精神科医 院外) : 星野元信
安藤一郎(病院の弁護士) : 志村史人
三村判事(裁判長) : 山口嘉三
(敬称略)
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《ストーリー》
交通事故で脊髄を損傷し、首から下が麻痺して動かせなくなってしまった主人公。
回復の見込みはない。
彼が望んだのは、いわゆる「安楽死」。
弁護士を雇い、「病院からの解放」=死ぬ権利を請求する彼。
対する病院側は「治療する権利」があるという。
異例の病室での審判が行われる。下された判決はー?
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以下、ネタバレありの感想です。
彼を世話する婦長と看護学生、看護助手、研修医に主治医、
そして双方の弁護士、見ごたえ(というか、聞きごたえかも)ありの舞台です。
頭がはっきりしてるのに、指先さえ自分で動かすことはできず、排泄も何もかもすべて人の世話にならざるをえない状態は、彼にとっては「人間の尊厳」が壊されている状態とも言えるかもしれません。って、なんだか回りくどくしか言えない。
ズバッと言ってしまうことができないんですよね。
彼の望み通りに死なせて上げたい気持ちはある、でもそれは「見殺し」ではないかという葛藤が全員にあるような結末。
裁判でケリがついたはずなのに、勝った方の弁護士も、誰も彼もが辛い表情で。
ただ、救いようのない結末、というわけじゃないですね。最後の主治医の決断に救われた気がします。
おそらくは主人公もそうじゃないかなあ。という願望ですが。
決定には従う、だが最期まで患者の傍にいるという決意、あの場面は忘れられない。
まとまりない感想ですみません。
印象的だったのはやはり志村さん。
もともと好きな役者さんですが、この医者役、素晴らしい!
勅使河原さんの弁護士もまたまた深い役で、弁護士バッジも似合うし(違)。
野村さんの研修医は細いおみ足が美しくてね~(違)
彼を笑わせる谷部さん演じる看護助手と、看護見習いの服部ゆうちゃん。
谷部さんの猛烈アタック(古語(^_^;))で、最初は相手にしてなかったゆうちゃんがいつの間にか「洋介ったら~」ってラブラブになってるとこは思わず笑っちゃった。
ハッとした場面は、野村さんの研修医と志村さん主治医のやり取り。
研修医 「命は彼のものですわ」
主治医 「責任はこちらにある」
それから、
バカばっかり言ってる谷部さんが部屋のドアを見つめ、「・・・可哀そうなおっさんだ」と。
安楽死(というより、尊厳死でしょうか)、これは誰にも正しい答えが分からない重い問題です。
ところで、「死ぬ権利」とはまったく逆、命を奪う「死刑執行」について。
10年近く前ですが、南野(のうの)知恵子さんという看護師出身の方が法務大臣になり、死刑を執行したんです。
ご存じの通り、死刑が執行されるかどうかは、そのときの法務大臣が執行命令書に判を押すかどうかにかかってます。
南野さんは法務大臣としては全くの素人で、答弁もロクに出来ない、いわゆる「タダのオバちゃん」(当時のマスコミ記事の表現ですよー)で、官僚も持て余したのか、「一つくらいは汚れ仕事をやってもらう」と、判を押させたとかなんとか・・・。当時の新聞だかで読んだ記憶あります。
皮肉なものだな―と思いました、人の命を救うための仕事をしていた方が執行命令を出すのって。
と、話はズレてすいません。
深く考えさせられる作品でした。台本で読んでみたいです。法律論のとことか、難しそうだけど、どちらの考え方も一理あるんですよね、(セリフで聞いてもすぐ忘れちゃうし。(^_^;)
去年のJCS楽以来の自由劇場でした。