7月2日に東京海洋大学越中島キャンパスでランニングの世界友の会が企画した特別講演に出席してきました。
演者の伊藤静夫(日体協スポーツ科学研究所 主任研究員)氏が、ご講演された「ヒトもランナーも有酸素ランで進化した」は、とても興味深かい内容でした。
ヒトは走って進化したというのです。
しかも、速く走らないようにです
筋の成長過程では、成長因子と抑制因子が働いている。
IGF-1(成長因子)
↓
筋になる細胞⇒筋への成長⇒筋細胞
↑
ミオスタチン(抑制因子)
こういう機序から考えられるのは・・・
子供は走ったりして遊ぶ時に、楽しさを脳で感じ、それを適度に繰り返すことにより、筋は収縮を繰り返し器械的な刺激を受けることで、IGF-1という成長因子が分泌され成長していくのですが、一方、成長するだけでは余分に筋が成長してしまうため、それを回避するのにミオスタチンという抑制因子が働いていることがわかっていることです。
つまり、筋の成長と抑制のバランスは脳の発達に関与している訳ですね。
私たちのご先祖様は、筋肉をモリモリに発達させるタイプではなく、脳で興味を持ったことに刺激を受ける中で、動き回りながら筋肉を適度に発達させていくタイプだったわけです。
そこで、ご先祖様は持久的狩猟(Persistence Hunting)の戦略をとってきたのだそうです。
英国BBCが撮影したブッシュマンのク-ズ-という草食動物の狩猟時の映像は、それを裏付けるものでした。
彼らは気温が40℃と高くなった時に狩猟を始め、ク-ズ-を声で脅かしながら逃走させては、歩き走りでゆっくり足跡を追いかけて行くのです。
この映像では3時間50分経った25.1km地点で、とうとうク-ズ-が熱中症にかかり動けなくなったところで、槍でとどめをさしていました。
この狩猟方法は50%の成功率だそうで、肉食獣のチーターなどのハンティングの成功率と比べると格段に高いのだそうです。
ヒトは筋の組成からみても、他の動物と比較して遅筋繊維の割合が多く、このことからヒトは長距離を速く走らないように(言い方を変えるならば遅く走るように)進化していったと結論付けられていました。
さらに発汗機能を発達させていくことで、ご先祖様は暑い中でひたすら長距離を走る能力を養ってきたのだそうです。
苦しみを伴い記録やタイムで競う競技スポーツでの一定距離を如何に速く走るかという行為は、これは競技的持久力と言えます。
一方、ご先祖様が進化させてきた基本的な持久力は、一定距離を如何に速く走るかというものではなく、日常の遊びや活動を通じて明確なゴールがない距離をゆっくり長く走り、その過程を楽しむというものだったようだ。
と先生は話されていました。
これはマラニックのような場面に非常に類似していると私は思いました。